お茶会作戦
「と、言う訳で、ローズマリー様をレオ様のご兄妹に会わせるために、お茶会を行うことになりましたー!パチパチパチー!」
私、拍手しましたー!
「よっ!」
ルークも拍手しましたー!
本日、お休みですが、図書室に来ています。毎日、解放しています。相変わらず、誰もいません。
「何故、お休みの日にわざわざ?」
と、メグが聞きました。
私たちの拍手に苛立ったようですが、何も言いませんでした。
「普通の日はダンスの練習をしていますからね。ゆっくり話せないでしょう」
と、ルークが言いましたので、私は頷きますと、
「ちなみに、お茶会についてですが・・・」
『場所がね。困るんだよね』
と、リバーが言いました。
何故なら、ダンズレイ公爵様の新居は建築中なのです!だからと言って、王城にローズマリー様が行くわけにはいきません!こちらの動きを国王陛下に知られたくありませんからね!
「そこで、私、ぴーんと来たのです!王都にあるカーライル公爵家の別宅をお茶会の会場として使えばいいと!」
お父様は自由に出入りしていいと言ってましたからね!
「王都の中心からやや外れたところにありますからね。目立たないと思いますよ」
ルークが補足してくれます。
「それに、公爵家のお屋敷にしてはこじんまりとしているのです。ローズマリー様も気後れしなくていいと思ったのです!いい加減、レオ様のご兄妹にお会いするので、緊張するでしょうからね!」
「なるほど」
メグは頷いて、「キャスにしては考えたじゃない」
「ありがとうございます」
「いえいえ。それほど褒めておりませんわ」
「ええ。分かっております。それから、お茶会と言えば、シュナイダー様です!」
「はあ?」
「シュナイダーはお茶を淹れることが得意なんですよ。極秘なので、自分たちでやろうと言うことになりました」
と、ルークがまたまた補足します。
「リバーとシュナイダー様の卒業試験として、当日使う食器やお菓子、飾るお花選びなどをローズマリー様にお任せしようと言うことになりました!あ、お茶会が行われる部屋のテーブルや椅子の配置等も全てローズマリー様の担当になります!」
「まあ、大変ね。でも、上手く皆様をおもてなし出来たら、自信になるでしょうね」
「そうでしょう?自信がつけば、レオ様を諦めないかもしれませんからね!私、シーア様から聞いたことがあるのですが、王妃様は良くお茶会を開くそうで、王妃様も茶葉から、テーブルクロスまでご自分で選ぶそうなんです。ですから、ローズマリー様も王妃様と同じ様にしていただきたいと思った次第です!」
「あら。それもキャスの考えなの?」
「はい!レオ様は幼い頃、そんな王妃様のご様子を良く見ていたそうなんですよね。同じ様にお茶会の準備をするローズマリー様を見て、王妃様の姿を思い浮かべるのではないかなと。基本、殿方は母親が好きですからね!と言うわけで、『レオ様に惚れ直してもらおう作戦inお茶会』です!」
作戦名発表しました!そのまんまです!
「カサンドラ様・・・」
ルークが呆れた様子で、「ローズマリー様にダンズレイ公爵様たちを会わせることと、お茶会を成功させ、自信をつけさせることが目的なのでは?」
「も、目的はいくつあってもいいでしょう」
「うーん」
メグは唸ると、「そこまで母親好きそうには見えないけど・・・」
「え、そうですか・・・?」
「つまり、そんなに単純な方には思えないわね」
「た、確かに・・・」
レオ様は基本ご家族の話はしませんし、母親好きなんて聞いたことありませんでした!「じゃあ、『レオ様に惚れ直してもらおう作戦inお茶会』は諦めます」
「いや、諦めなくても、お茶会が普通に成功したら、普通に惚れ直すでしょう」
「あ、そうですね!じゃあ、作戦はそのまま続行です!」
うん!と、私が大きく頷きますと、
「貴女、お願いだから、ローズマリーさんの邪魔しないでね」
メグは非常に不安そうです。
「はい!何もしません!食べて、飲むだけです!そして、レオ様に『こんな何もしない女に比べて、ローズマリーは何て働き者なのだろう。私が選んだだけあるな』と、思ってもらうのです!『カサンドラ、怠け者になって、ローズマリー様を引き立てましょう作戦inお茶会』です!」
またまたそのまんまです!
「「・・・」」
メグとルークは呆れたのか、何も言いませんでしたが、それを良しとして、
「それでメグにお願いがあるのです」
「何かしら?」
「知っている女性が私だけだとローズマリー様も心許ないと思いまして、最近、ローズマリー様を恋愛小説好きに引きずり込んだメグにも来てもらいます!」
たまに二人で恋愛小説談議をしちゃってますからね!レオ様は胡散臭げに見てたりします!殿方には恋愛小説にはまるレディの気持ちが分からないようです!
「?!」
メグがギョッとして、「そ、そんな面倒なお茶会なんて、私、嫌よ」
「シーア様に会えますよ?普段あまり会えないでしょう?」
「そ、そうだけど・・・」
「おまけに困難を乗り越えて、一緒になるダンズレイ公爵様とサラ姉様に会えますよ?美しいお二人を見てみたくないですか?」
「そ、それは・・・み、見たくないと言うと、嘘になるけど・・・」
メグは揺れているようです!もう一押しです!
「更にカーライル公爵家の別宅には肖像画がたくさん飾ってるんですよ。私の祖父は父よりハンサムで、そんな祖父の肖像画ももちろんあります」
「まあ、カーライル公爵様よりハンサム?き、興味深いわね・・・」
「更に、更に!私の両親の花婿花嫁姿の絵も・・・」
メグはがたーん!と、立ち上がりますと、
「け、花婿花嫁姿ですって?!」
「とーっても美しくて、とーっても麗しいですよー」
「私、行きます!」
やったー!
「シュナイダー様がお茶を淹れ、給仕はリバーとルークがやります。メグは何もしなくていいですからね。サラ様やシーア様と交流しつつ、ローズマリー様の緊張を解していただけたらいいですからね。メグはあくまでお客様ですから」
と、私が言いますと、メグがルークを見て、
「ルークが給仕ですって?大丈夫なの?」
「だ、大丈夫ですよ。自分一人だけでやるわけじゃないですし」
「リバーがいるから大丈夫ですよ。リバーの給仕する姿、素敵でしょうね。お姉ちゃん、楽しみです」
私がにこにこしながら言いますと、メグはジロッと私を見て、
「脳内花畑は黙ってなさい」
「・・・」
・・・私、けして、脳内花畑ではありませんが、メグが怖いので、黙ります。はい。
すると、
「ルーク。給仕の特訓をしておきましょうか?」
と、メグがにっこり笑って言いました。
「ひっ」
ルークが震え上がって、「じ、自分、用を思い出しましたので!」
と、言いますと、逃げようとしましたが、
「待ちなさい!レオンハルト殿下やそのご兄妹の方々の前で恥をかいてもいいの?!貴方のせいで、お茶会がぶち壊しになっても知らないわよ?!」
と、メグが言い放ちます。
「うっ」
ルークは足を止めました。
「ちゃんと勉強しましょうね。ルーク」
「・・・はい」
ルークは力無く頷きました。
「よろしい」
メグも頷きますと、「まずはマナーに関する本を探して来て下さいね」
「・・・はい・・・」
ルークは素直に本を探しに行きました。
「メグって、ただの特訓好きじゃないですか?」
と、私がルークを見送りながら言いますと、
「確かに・・・私、目覚めたかもしれないわね」
と、メグはにやりと笑いましたが、ハッとすると、「ルーク!その棚じゃないわよ!」
「えっ?!どうして分かるんですか?!メグさんは恋愛小説の棚しか見てないんじゃないですか?!」
ルークの声が返って来ます。
「そんなわけないでしょう!私を何だと思ってるの!」
と、メグは言い返しました。
ルークはダンスの特訓に加えて、給仕の特訓までやることになりました。
またやつれてしまうのではないでしょうか・・・。
ですが、レオ様のためだと思って、頑張って下さいね!ルーク!




