怖がられる双子
学園生活2日目です!
私が寮の玄関を出ますと、
「おはよう」
「おはようございます!」
リバーとルークがいました!
「おはよう。どうしたの?」
と、私が駆け寄りながら、聞きますと、
「自分、専属騎士ですから、当然です!」
と、ルークが声を上げました。
もう少し、声のボリュームを下げてください。
リバーは微笑みながら、
「キャスとは離れちゃったからね。たまにはこうやって、キャスと過ごす時間を作らないとね」
「リバー・・・」
お姉ちゃん、感動です!
「だから、ルークは来なくていいよ」
と、リバーはルークに向かって、そっけなく言いましたが、
「自分、専属騎士ですから!」
と、ルークは繰り返します。
ですから、声が大きいですって!
私とリバーがおしゃべりしながら歩く前をルークがきょろきょろと辺りを見ながら、歩いています。疲れませんか?
「ルーク。そんなに警戒しなくても、大丈夫だよ」
と、リバーが堪らず声を掛けます。「そんなんじゃ、毎日、続かないよ」
「大丈夫!」
と、ルークは胸を張って、答えます。
・・・いや、見てるこっちが疲れますよ。
「まあ。いいや」
と、リバーは言っても無駄だと思ったのか、あっさりと引き下がると、ふと左右を見て、「何か僕たち見られてるね?ルークがうるさいから?」
違いますよ!女子生徒の皆さんがリバーをうっとりと見ているんですよ!
「リバーに見とれてるのよ」
「ふうん」
リバーは興味なさげに言ったくせに、一番多く女子生徒が集まっている辺りに向かって、にっこりと笑いました。
「きゃあああっ」
と、悲鳴が上がります。
「あれ?怖かったかな?黒い笑顔になったつもりはないんだけどな」
リバーは首を傾げました。
「・・・」
お姉ちゃんはある意味、怖いです。
リバーと別れて、ルークと教室に向かいますと、
「おはよう。キャス」
レオ様が声を掛けて来ました。
「おはようございます」
私はにっこり笑いましたが、「レオ様。ルークに何とか言ってあげて下さい」
「何を?」
「私の前を歩きながら、周りをきょろきょろと見てるんですよ。何も危険な事なんてないのに・・・私、落ち着かないんです。だから、止めるよう言ってくれませんか?」
レオ様が一言、言ってくれたら、ルークも止めてくれるはずですからね!
「・・・」
レオ様はちょっと考えて、「ルーク」
「はいっ!」
「前ではなく、後ろを歩けよ」
と、レオ様は言いますと、ルークの肩に手を置いて、「しっかりキャスを守るんだぞ」
「はい!」
ルークは満面の笑顔で言いました。
レオ様も満足そうに頷きました。
「・・・」
・・・ルークは更にやる気になってしまったようです。はぁ。
現在、学園内をスターリング先生が案内して下さってます。
「ここが攻撃魔法の訓練を行う施設です」
校舎と深い森の間にはドーム型の大きな建物が6棟並んでいます。
「うわー」
中に入った私とルークは天井を見上げました。とても高いです。ちょっとやそっとの魔法では天井まで届かないでしょうね。
「カーライル公爵様のあの魔法なら届きそうですね」
と、ルークが私にだけに聞こえるように言いました。
ああ!黄金のドラゴンさんですね!
「そうね。お父様なら・・・」
「カーライルが何だって?」
と、レオ様が言いました。
「えっと、お父様の魔法なら、天井まで届くかなーと」
危ない、危ない。父の魔法はレオ様と言うより、王族方には秘密ですからね。
お互い信頼関係が出来れば、秘密にする必要もないと思うのですが。
そう言えば、レオ様は国王陛下が私の父を嫌っていると言っていましたが、父の方も口には出しませんが、国王陛下を嫌ってるんですよね。人間には合う合わないがあるものですが・・・私とレオ様はお友達なのに、何だか悲しいですね。
もし、この先、レオ様と仲良くする事を反対されてしまったら、どうしたらいいんでしょう。
レオ様は肩をすくめて、
「どうだろうな。私は五大公爵がどんな力を持っているかほとんど知らないから」
「レオ様は見たいとかって思います?」
「そりゃな。あ、だが、カーライルが火柱の魔法を魔術師たちに教えていたんだが、あれは凄かったぞ」
と、レオ様は瞳を輝かせました。
「ああ・・・」
火柱を上げる魔法を教えると言ってましたもんね。
「魔術師たちは今とても難儀な思いをしながら、訓練をしているそうだ。習得したところで同じ威力を出せるとは限らないし、やっぱり才能なんだよな。それから、努力も必要だろう。カーライルは凄いよ」
父を褒めてくれたのだと思った私は、
「ありがとうございます。私の父を褒めてくださって」
と、お礼を言いましたが、レオ様は赤くなると、
「褒めてなんかいない」
と、言って、そっぽを向きました。
いや、今のが褒めていないなら、一体、何なんですかー?照れ屋さんですねー。なんてことを思いながら、私がにまにましていますと、
「そこの3人。行きますよ」
と、スターリング先生が私たちに鋭い視線を送りながら言いました。こ、こわっ!
「すみません」
と、私たちは謝りました。
スターリング先生は頷きますと、魔法ドーム(勝手に名付ける)から出て行きます。
「キャスのせいだぞ」
と、レオ様が文句を言って来ます。
「何ですか。目を輝かせながら、カーライルは凄いなんて言っておいて」
「かっ、輝いてなんかいない!」
レオ様はまた赤くなりながら、思いっきり否定しましたが、私は無視して、
「ルーク、どう思う?」
と、ルークに聞いてみますと、
「もうキラッキラでした!!」
と、ルークは満面の笑みで答えました。やっぱり!
「ルーク。裏切ったな」
と、レオ様がルークを睨みました。
「えっ?!自分、悪かったですか?!見たままを言っただけですよ?!」
「悪くないわよ。キラッキラだったもんねー」
「だからっ」
と、レオ様が言いかけて、
「レイバーン君!シャウスウッド君!ロクサーヌさん!早く歩きなさい!3人は私語禁止です!!」
スターリング先生が怒鳴りました。ひぃー。
・・・レオ様は生まれて初めて大人に怒鳴られたそうです。何故かまた私のせいにされました。
その後、私たちは一言も喋らず、学園内を黙々と歩きました。
放課後。
「レオ様。ルーク。頑張って来ます」
私は一礼して言いました。
レオ様とルークが頷きました。緊張の面持ちです。
私はくるりと回れ右をしますと、同じクラスの女の子二人に声を掛けようと、二人に近付きます。
私、色々と目標がありますが、その中の一つ、同じ年の女の子のお友達を作ると言う目標を何とか達成したいのです!いや、お友達は早いですね。まず、自分から声を掛ける事からです!
私はお喋りしているお二人の後ろに立つと、
「あ・・・」
と、声を発しましたが、お二人は気付きません。
やっぱり、無理っ!と、踵を返しましたが、
「・・・」
レオ様とルークが『戻って来るな。行け』と、目線だけで訴えています。
私は頷きますと、くるっと振り返った勢いで、
「あにょ、あのっ。すみませんっ」
良かった!ちゃんと声が出ましたよ!
「「はい?」」
と、お二人が振り返って、私に気付きました。
「ち」
ちょっとお話をしませんか?と、私は言おうとしたのですが、お二人は顔を真っ赤にさせると、
「「きゃあああっ!」」
と、つんざくような悲鳴を上げますと、「「カサンドラ様!ごきげんよう!」」
と、言って、深々と頭を下げますと、走って行ってしまいました。
リバーと違って、本気で怖がられているようです・・・。
私ががっくりと肩を落としていますと、
「良くやった。声を掛ただけでも、進歩じゃないか。キャスにしては良くやった」
と、レオ様が慰めて下さいます。
「・・・ありがとうございます」
お気持ちは嬉しいのですが、自分のレベルの低さを逆に痛感させられました。ううっ。
「自分は怖がってるようには見えないような・・・」
と、ルークが首を傾げつつ呟きました。いや、いや。でしたら、あの悲鳴は何だと言うのでしょう?
『学園で女の子のお友達を作る!』目標達成はかなり難しいようです。
目つきのせいなら、テープを貼って、たれ目にしましょうかね・・・はっ!この世界にあの透明のあの便利なテープはありません!




