マーガレット様と落ち武者
「あー。疲れました」
皆さんとお茶を終えた私は、寮の自室に帰って来ました。
一日、長かったですね。本当に疲れました。今日は寂しくても、良く眠れそうです。
疲れましたが、お部屋の紹介をしましょう!
お部屋は広いです。カーライル家の私の部屋より一回り広いです。
ですが、男子寮がどうなっているのか分かりませんが、レオ様の王城の部屋と比べますと、狭いですね。レオ様の部屋は無駄に広かったのですが。
レオ様は王子様ですので、特別な部屋が用意されてるのかな?と、思った私がレオ様の部屋に行ってみたいと言ってみましたところ、『レディがはしたない事を言うな!』と、レオ様は真っ赤になりながら怒りました。
男子寮に入れるわけがないんですから、私だって、本気で言ったわけじゃないんです。なので、そんなに怒らなくてもいいと思うのですが・・・。
部屋の間取りは1LDKと言った方が分かりやすいですかね。お風呂もトイレもついてます。
キッチンは簡単なお料理なら出来そうです。オーブンもあります。お菓子が作れますね。まあ、私は何があっても使いませんよ。爆発したら大変ですからね。
そう言えば、ローズマリー様はお菓子作りが得意なんですよねー。レオ様の為に作っちゃったりするんでしょうね。レオ様が羨ましいです。私にも、私が作ったお菓子です!良かったら、食べて下さい!なんてことはないでしょうかねー。
夕食まで時間がありますので、途中になっていたサラ姉様へのお手紙を書くことにしましょう。
先月、ジャスティン殿下が当主のダンズレイ公爵家が誕生しました。
『ダンズレイ』はダンレストン公爵家とジャスティン殿下自身の名前であるレイバーンを合わせて、名付けられました。
色んな候補があったそうですが、ついには面倒臭くなったそうで、最終的には『もー、これでいいよー』なんて、やや投げやりな感じで決まったそうです。でも、とてもいい家名ですよね。
現在、ジャスティン殿下、いえ、ダンズレイ公爵様は他の五大公爵様方に教わりながら、一人前の五大公爵になるべく、毎日、頑張っているそうです。
そんなダンズレイ公爵様ですが、異例と言えば、異例なのですが、今も王城で暮らしています。
何故なら、正式に結婚式を挙げた後、サラ姉様と暮らそうと思っているからです。
いくら結婚が決まっているとは言え、正式に婚姻関係を結んでいない男女が一緒に暮らすなんて事は有り得ませんので、さすがにダンズレイ公爵様も一人で暮らそうとは思いませんよね。
サラ姉様の方はどうされているかと言いますと、事件解決後は、ご家族の皆様で、あの魔術師の犠牲となった方々の家を一軒、一軒、訪問し、お詫びと補償についてのお話をされていました。それが終わった現在は、慈善活動に力を入れられていて、忙しい毎日を送っているそうです。
そして、結婚式の日取りが決まりました!来年のサラ姉様の誕生日です!まだ1年以上あります!
でも、とっても楽しみです。1年なんて、あっという間ですよ。
私はうんうんと頷きながら、手紙を書こうと、筆を取り・・・。
「はっ!」
私は目を覚ましました。
おなかがぐーぐー鳴っています。
「今、何時・・・?」
私は時計を見て、ギョッとしました。「えっ?!」
もう朝でした!筆を持ったまま寝てました!ぎゃあっ!
まだ始業時間まで時間はありますが、お風呂に入らなくてはならないので、ギリギリです!
私は慌てて、お風呂に入りますと、身支度を整えて、朝食を食べるために食堂に向かいます。もう腹ぺこです!
「ちょっと待ちなさい!」
もうすぐ食堂と言うところでそんな声が私の耳に入って来ましたが、私ではないと思っていましたので、そのまま先を急いでいましたが、
「貴女です!カサンドラ・ロクサーヌ!」
えっ?!私?!
私が振り返りますと、マーガレット様が目を吊り上げながら、仁王立ちしていました。
な、何ですか?!
マーガレット様はつかつかと歩いて来て、
「何ですか?!その髪は?!」
と、私を指差して言いました。
「え」
「え、ではありません!ぼっさぼさですよ?!」
「あ、あの、うっかり、朝まで寝てしまって、さっきお風呂に入ったばかりで・・・それで、おなかが空いたので・・・もうこれでいいかなーと」
お母様と侍女さんに私でも出来る簡単な髪の結い方を教えてもらっていたのですが、急ぐあまり上手く結えず、そのままにして出て来ました。
ちなみに絶対に髪を結わなければならない訳ではないのですが、私、髪の毛の量が多いし、やや癖があるので、たらしたままだと見苦しいんです。落ち武者みたいになるんです。
そして、今、まさに落ち武者状態なんです。
でも、朝食を食べた後に何とかしようと思ってたんですよ?あー、許されるものなら、ショートカットにしたいです!
「・・・」
マーガレット様はこれでもかと眉をしかめますと、「来て下さい」
むんずと腕を掴まれました。えっ?!
私はマーガレット様に引っ張られ、逆戻りして行きます。
おなかが空いてるんですー!
その後、私の部屋でマーガレット様が髪を綺麗に結い上げてくれました!神業並に早かったです!素晴らしいです!
それから、朝食を取る為に食堂へ向かい、流れでマーガレット様と向かい合って座っています。
「あの、本当にありがとうございます」
私がぺこんと頭を下げますと、上品にパンをちぎりながら食べていたマーガレット様は手を止めてから、口の中の物を飲み込みますと、
「私、だらしのない人が大っ嫌いなんです」
「はあ・・・」
私の事が大っ嫌いと言ってるようにしか聞こえません。
「それだけです」
と、マーガレット様は言いますと、また黙々と食事を進めていきますので、私も食べる事に集中することにしました。
マーガレット様はティーカップを置きますと、
「ところで」
と、切り出しました。
「はい?」
私がマーガレット様の顔を見ますと、
「・・・ちょっと聞きたいのだけど、ご両親って、今でも夫婦仲はいいのかしら」
「はい?」
私はきょとんとしました。
「だ、だから、聞いた事に答えて下さればいいのです」
と、マーガレット様が赤くなりつつ言いましたので、
「はい・・・とても、仲が良い方だと思いますが・・・」
と、私が答えますと、マーガレット様は何故かホッとしたように、
「そうですか」
と、言いますと、立ち上がり、「では、お先に」
さっさと行ってしまいました。
「・・・?」
私は首を傾げました。
何故、マーガレット様が私の両親の夫婦仲を気にするんでしょう・・・。




