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なぜかうちの店が異世界に転移したんですけど誰か説明お願いします  作者: 蒼井茜


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街の探索

 食事と研究を終えて街に繰り出した私たちはいろいろなお店を見て回りました。

 その結果わかったことは、こちらの世界の技術はちぐはぐだという事。


 例えば輸送技術、これは塩などからもわかりましたがあまり発展していません。

 必要最低限の技術で行っているようです。

 そのため冷凍技術も未熟ですが、代わりに乾物などの保存食の技術はなかなかの物。

 おそらく現代でも通用するレベルでしょう。

 合わせて彫金技術や工作系の技術も優れています。

 特にこの国はガラス細工が強いようですね。

 おそらく腐食に強い瓶詰の為でしょう。


 おかげで瓶詰にかかわる産業もなかなか盛んのようです。

 いくつかの商人はお抱えの瓶詰業者を持っていて他国、それも沿岸沿いの国でその技術を惜しみなく披露しているようです。


 塩が足りなくてどうするのかと思いましたが、この瓶詰を使った料理が家庭的な物のようです。

 ただ塩漬けは塩分を多く含んでいるので、ある程度薄めているそうです。

 そのため味は質素なんですね。

 逆に貴族の方々にとっては新鮮な食べ物こそ素晴らしい、という考えが根強いようですね。

 それが原因で味気ない、見た目だけ豪華に仕立てた料理がもてはやされる傾向にあるそうです。


 けれどやはり人間であることに変わりはないので、おいしい物が食べたい、味の濃い物の方が好き、といった好みがあるのでしょう。

 お店に来てくれる貴族の皆さんも味の濃い物薄い物と食べています。


 また彫金技術という事でアクセサリーなども有名のようです。

 ガラスと宝石をちりばめたネックレスなんかは御婦人方に人気のようです。

 着飾る機会の無い私には無用の長物ですが。


 他にも鍛冶の技術も目を見張るものがあります。

 包丁を見せてもらいましたが素晴らしい出来栄えでした。

 値段を見ると銀貨30枚、90万円でした。

 冗談のような金額ですが国お抱えの料理人だったり貴族に仕える料理人なんかが購入する事もあるそうです。

 べ、べつにステンレスの包丁でいいですから。

 

 山間部ということで、領土の中には鉱山もあるそうなのでその辺りは恵まれているのでしょう。


 貨幣の形がいびつなのは世界共通だからだそうです。

 


 軍事の方はどうなんでしょうね。

 亮君がいますが、戦っているところを見たことはありませんしたぶん参考にはならないでしょう。

 ふらふらとそんなことを考えながら歩いていた時でした。

 物凄い物を見つけてしまいました。

 

「亮君亮君亮君」


「なんですか、そんなにはしゃいで」


「これ見てくださいよこれ、すごいですよ」


「これって……なに? 」


「何ってフライパンですよ!

だし巻き卵とか作るための専用の!

こっちの世界でもあるんですね!

感動です! 」


「あ……はい」


 なんなんですか、亮君テンション低いですよ。

 こういった物は手に入らないかなーと思っていたところだったんですよ。

 うちにも玉子焼き用のフライパンはあるんですけど、表面加工もはがれてきてて買い替え時かなって思っていたところなんですよ。

 備品として入手することはできるかもしれませんが調理器具というのは自分の手と目で選んでこそなんです。


「……珍しく蒼井さんが生き生きしていると思ったんだけどね。

普通女性ってこういうばあいはアクセサリーとか髪飾りとかじゃない? 」


 むっ、つまり私は普通ではないと亮君は言いたいんですね。

 これでも純粋な乙女なんですからその辺りの誤解は解かないといけませんね。


「亮君、私は普通の女性ですよ。

そりゃ世界を股にかける迷子ですし、物騒な防衛能力のあるお店持ってますし、仕事が趣味で恋人なアラサーですけど……」


「それを普通っていうならドラゴンだって普通扱いだよ」


「ドラゴン……いるんですか? 」


「この辺りにはいない。

ただ一匹で国を滅ぼせるような奴から、一個大隊がいればどうにか倒せるようなのまでピンキリだけどね」


「へぇ……ドラゴンですか。

一応爬虫類って扱いでいいんでしょうか」


「まあ鱗もあるし見かたを変えればトカゲに見えなくもないよね」


「だったら食べられるんでしょうか」


「…………うん、普通の発想じゃないからねそれ」


「でもドラゴンテールとかゲームじゃよく出る食材ですよね。

爬虫類なら鳥に近い味ですし食べられるんじゃないですか?

もしかしたら他にも食べられる魔物とかいるんじゃないですか? 」


 ゲームとかを基準にするならコカトリスとかバジリスクは鶏ですよね。

 バジリスクは尻尾は蛇ですけどおいしそうですね。

 猪の魔物と書いたら絶対食べられますよね。

 あと熊もいけそうです、右手がおいしいんですよね。

 変わり種だとカエルでしょうか。


「蒼井さん、何を考えているのか手に取るようにわかるんだけどさ。

普通の人は魔物食べようとか絶対に考えないからね」


「そうなんですか?

みなさん頭が固いんですね」


「いや、あいつら人間も食べ物としか見てないから」


「人間を食べるんですか。

栄養をしっかり取っていそうですね」


「……あ、もういいですはい」


 なんでしょう、さっきから亮君の態度が良くないです。

 私変なこと言っていますか。

 食べられるなら何でも食べる、これは重要だと思います。

 日本人なら食事に対してはとことん追求するべき、私のお父さんの教えです。

 今は南米辺りを旅しているんじゃないですかね。


「そういえば亮君、さっき話してくれた酢豚みたいな料理。

あれも食べてみたいです」


「ガレヴォ?

わかったいいお店があるから案内するよ」


 そう言って亮君はまた私の手を取って、そして人気のない道に入っていきました。

 なんかこういうシチュエーションって実際に経験すると微妙な気持ちになりますね。

 男の子に手を引かれて裏路地へ、ドキドキしないです。

 むしろ下心を疑ってしまいますね。


「このお店がいいよ」


 そう言って案内してくれたのは看板が傾いたお店。

 なるほど穴場というやつですね。

 もしくは知る人ぞ知る名店というやつですか。


「俺が貧乏だったころに何度かお世話になったお店でさ。

いろいろ食ったけどこれが不味いのなんの」


「美味しくないんですか? 」


「基本的にね。

でもガレヴォだけは絶品なんだ」


「それは楽しみです」


 そういって亮君を引っ張るようにお店に入りました。

 そこそこの広さですが、お客さんがいっぱいです。

 外観に反してにぎわっているようですね。


 まあみなさん強面ですけど。


「よう! 亮平!

女連れとはいい御身分だな! 」

「お、いい女じゃん!

俺にも食わせろよ! 」

「ひゅう、胸がちと足りねえがいい女だぜ! 」


「亮君、随分物騒で失礼な人たちとお知り合いなんですね」


「まぁ……後でひとこと言っておくからおさえてね」


「いいですよ、おいしいご飯を御馳走してくれるなら」


「……仰せのままに」


 うなだれた様子の亮君ですが、周りの人たちはその様子を見て笑っています。

 品がない、と言ってしまえばそれまでですが皆さんたのしそうに笑っています。


「おやっさん、ガレヴォ二つ」


「座って待ってろ」


 店主さんは無愛想なおじいさんです。

 けれどカウンターから見える厨房では見事な手さばきで料理を仕上げていきます。

 プロの技、というやつですね。


 しばらくすると角切りにされたお肉と、皮ごとに込まれた果実らしきものが入ったお皿が出てきました。

 早速いただきます。


「あつっ」


 口に入れた瞬間肉汁がどばっと溢れてきました。

 舌を火傷してしまいましたけど、これは確かにおいしいです。

 酢豚と聞いていましたけど甘味酸味は後味に少し残る程度。

 少し磯の香りがするので塩……いえ魚の瓶詰を使っているのでしょうか。

 お肉は一度表面を軽く焼いてから餡となる液体を入れて煮詰めたのでしょう。

 弾力があって歯ごたえが楽しいです。


 果実の方は……これは甘みがない、酸味が少し強めです。

 もしかしてジョネルでしたっけ、あの野菜炒めみたいに弱火で焼いたのでしょうか。

 うまみは抜けていますが、それを餡で補っていますね。


 これはすごいです、私程度じゃ改良はもちろん再現すら難しそうですね。


「どう、美味いでしょ」


「はい美味しいです。

すごいですね、この料理1つにたくさんの技術が使われています。

火の使い方、包丁の入れ方、全てが計算されています」


「……お嬢ちゃん、こいつはサービスだ」


 そう言って店主さんが1つの御皿を出してくれました。

 白いマッシュしたなにか、一口食べてみるとお芋のようですね。

 いえ、これはよく見ると他にも何かあります。

 四種類のマッシュです。

 すべて食べてみるとお芋とお豆が二種類ずつ使われているようですね。

 それぞれ甘みのあるものとない物です。


 けれどこれ単体でおいしいとは言えませんね。


「餡をかけてみろ」


 店主さんに言われたとおり餡をかけてみます。

 あぁなるほど、これはご飯の代わりですか。

 それもお米と違って味の変化をつけられる。

 本当に計算されつくしています。

 お豆はあえて粗くつぶす事で触感の変化を出して甘みのある方は餡の味との調和、無味の方は餡をしっかり味わえるようになっています。

 お芋は舌触りが滑らかですね、お豆のときよりも癖が少ないのでより鮮明な味になりますね。


「亮君、おいしいですねこれ」


「言ったでしょ、一押しだって」


「ちなみに何のお肉ですか、これ」


 完全な再現は無理でも模倣くらいはしたいです。

 そのためには食材くらいは把握しておきたいですね。


「ん」


 私の言葉に反応して店主さんが差し出したのは意外な物でした。

 ひょろりとした尻尾、茶色い体毛、でっぷりとした胴体、それでいて片手で摘まめる大きさの、ネズミでした。


「へぇ、ネズミなんですか」


「うそだろ……」


 隣で亮君が口を押えながら青い顔をしています。

 先ほどまでおいしいと食べていたのになんでしょうこの反応。


「安心しろ、衛生に気を使ってしっかり育てたネズミだ」


「料理人として衛生管理は大切ですもんね」


「俺……料理人って一生理解できないと思うわ」


 隣で亮君がぼやいていましたけど酷い言いぐさです。

 ネズミ肉、今度注文できないか調べてみましょう。

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