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なぜかうちの店が異世界に転移したんですけど誰か説明お願いします  作者: 蒼井茜


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今後の方針

 うちの店に異常な防衛力があるという事が判明して1週間ほど経ちました。

 あれから判明したことは、禁則事項の作成が可能。

 違反した場合はそれに応じた結果が待っています。


 例えば窃盗禁止、これは商人のお客さんが備え付けの胡椒を盗もうとしたことが原因です。

 幸い近くで食事をしていた衛兵さんが取り押さえてくれたので、事なきを得ました。

 以後禁則事項として加えたところ、窃盗を働こうと考え行動に移した場合に盗んだ物だけが店の中に戻ってきます。


 一度味噌汁を皮袋に入れて持ち出そうとした人がいましたけど、床が味噌汁まみれになったので食材の持ち帰りは応相談という事にしました。


 他には暴力禁止、これはお酒に酔うと気が大きくなって喧嘩を始める人がいたので設けました。

 罰則は強制退店、ただし店の外でなら好きにやってくださいという方針です。

 喧嘩を止める理由はこちらにはありませんので。

 それに合わせて入口の封鎖禁止。

 これは前述の強制退店に加えたものです。

 お店の入り口でけんかを始めてしまって入るに入れず、出るに出れずとなったお客さんがいたので作りました。

 罰則は、吹っ飛びます。

 ひねりも何もなく50mほど吹っ飛びます。

 一度それで怪我をしたというクレームが入りましたが、謝罪の後に営業妨害というと口をつぐんで出て行ってしまいました。


 それ以外に罰則はありませんが今後増えるかもしれません。

 できればこういったものは暗黙の了解としておきたいのですけどね。


「亮君1番卓さんに芋焼酎、それとサバの味噌煮できたので持って行ってください」


「アイサー」


 亮君もお仕事に慣れててきぱきと働いてくれています。

 お客さんも増えてきました。

 中には亮君お目当ての貴族女性や平民の女性もいるようで、時々こっそりと亮君の好きな料理を教えてほしい、亮君のためにご飯を作ってあげたい、亮君と寝たいという相談を受けます。

 最後のような相談はともかく、普通の相談にはちゃんと答えています。

 亮君が好きな料理、それはずばりお肉です。

 やっぱり男の子ですね、焼いたお肉、それも塩だけで味付けしたシンプルなものとご飯の組み合わせが最強のようです。

 それを伝えるとみなさん、塩か……とつぶやいて何やら計算を始めます。

 こちらの世界の塩って結構高級品らしいですね、バンバン使ってました。


 お値段は普通の飲食店よりも高額に設定しています。

 ただし、お給料日の贅沢に月一回通えるくらいにはといったお値段です。

 値段設定も適切だったのか、衛兵さんが押し寄せるようなこともなくなり、逆に閑古鳥が鳴くようなこともなくお店の売り上げは上々です。

 備品や食料の追加受注も可能でした。


 洋服なんかが発注可能だったのは、女性としてはとてもありがたいのですがなんで下着まで発注可能なんでしょうね。

 それから時間制で飲み放題も作りました。

 1時間銀貨1枚で飲み放題。

 結構高額ですけど、お客さんからの評判は上々です。

 ちなみにお酒の一番人気はコークハイ、ジュースはレモンソーダでした。


 あとは、王様がちょこちょこ顔を出しに来ます。

 そして決まって焼き鳥と芋焼酎をのんで帰っていきます。


 国の最高責任者がこんな調子でいいんですかね。

 たぶんいいんでしょうね。


「蒼井さん、俺皿洗うわ。

ちょっと溜まってきた」


「お願いします、こっちはしばらく何とかしますから。

あ、あと終わったら裏から米袋持ってきてください。

まだ大丈夫ですけど炊飯器がもうすぐ空いてしまうので」


 うちには炊飯器が3つあります。

 一つはこちらの世界に来てから備品として購入した物です。

 電化製品も買える、便利です。


 今はちょうど注文もなく、お客さんは料理やお酒に夢中になっているので一息つけています。

 メニューは亮君に書いてもらいました。

 部屋に置いていたPC用のプリンターがコピー機能とスキャナー機能があったので、お品書きを一新しました。

 こちらの世界の言葉、私にはよくわからないんですけどなぜか読めるんですよ。

 書けないけど読める、不思議な感覚です。


「蒼井ちゃーん、お会計おねがい」


「はーい」


 お客さんもだいぶ慣れてくれたみたいです。

 最初からなれなれしい人もいましたが、今ではみなさん気さくに話しかけてくれるようになりました。


「銀貨1枚と銅貨5枚ですね」


「はい、銀貨2枚」


「銅貨5枚のお返しです、またどうぞー」


「蒼井ちゃん大ジョッキ生ちょうだい」


「はーい、大生いっちょー」


 キンキンに冷えたグラスとビールをお客さんの前に持っていきます。


「はい注ぎまーす」


 シュワシュワと音を立てて注がれる黄金色の液体に皆さん目を奪われています。

 こちらの世界って冷凍技術が未熟らしく、飲み物も水で冷やしたものが主流だそうです。

 また炭酸も天然水しかないそうなので、こちらでは非常に珍しい飲み物という扱いなんでしょう。

 何度か持ち帰らせてほしいという人や強奪した人がいます。


 窃盗強奪は一回目は衛兵さんにお任せで二回目は出禁です。

 とはいえ出禁になったのは最初のガマガエルだけですからね。


「はいどうぞ」


 そうしているうちに泡が溢れそうになったビールを渡して奥に下がります。

 亮君も洗い物を終えたらしく、米袋を運び込んでいました。


「亮君休憩入っていいですよ。

次のお客さん来たら戻ってくださいね。

えーと、どなたか亮君の休憩に席を貸してくれる人はいませんかー」


 うちのお店は広くないので厨房や倉庫に休める場所はありません。

 なので仕事中の休憩も必然的にお客さんの前にいる事になります。

 まあこうやって呼びかけたのは別の意図もあるんですけどね。


 亮君はうちのお店の一番人気です。

 二人しかいないのに一番も二番もないと思いますが、五年もこの国に住んでいてしかも市民に優しい騎士様の一員。

 腕っぷしも強いのに驕る事はなく、常に一所懸命。

 まあ人気が出ないわけがありませんね。

 なんでしょうこの完璧超人、正直妬ましいですがうらやましくはありませんね。


「ここあいてーるぜー」


 お客さんの一人が手を上げてくれます。

 カウンター席で、街で鍛冶屋を営んでいるおじさんの隣の席でした。


「亮君、ウーロン茶と枝豆です。

まだお酒は飲んじゃだめですよ」


「わかっていますよ、蒼井さん。

俺だって追い出されたくないからね」


「よろしい、じゃあごゆっくり」


 そう言って亮君が席に着いたのを確認してお米を研ぎます。

 力を入れず、指先でなでるようにちゃらちゃらと音を立ててかき混ぜて、水を一回だけ捨てて炊飯器にセット。

 これは明日の分ですね。


 他の食材もいい感じに少なくなってきましたし、時間も11時を回ってきました。

 そろそろラストオーダーの時間です。

 あと10分したらラストオーダーにしましょう。

 今いるお客さんが……7人ですね。

 これなら一人でも回せるでしょう。

 CDを切り替えて店内の曲をしんみりとしたクラシックに切り替えます。


「おっと、この曲が流れ始めたという事は」

「そろそろお開きですかね」

「もう少し飲んでいたいんだがなあ……」

「蒼井ちゃん、まだ大丈夫だよね。

お茶漬けくれんか、鮭茶漬け。

あと緑茶くれぃ」

「あ、俺梅で」

「儂塩ラーメン」


 みなさん思い思いに注文をしてきます。

 亮君が立ち上がろうとしていますけどジェスチャーで座ってていいと合図を出します。


「まだラストオーダーじゃないし座ってていいですよ。

運ぶ時は呼びますからお願いしますね」


 そう言って最後のご飯をよそって梅干し、焼鮭、昆布、のり、わさびとお茶漬けの用意をしていきます。

 それからインスタントラーメンを鍋に入れて茹でていきます。


「亮君、お茶漬け上がったんで運んでもらっていいですか」


「今行きまーす」


 返事の後すぐに亮君が来て、お茶漬けを運んでいきました。

 そうしているうちにインスタントラーメンが茹で上がったので盛り付けて運びました。


「次でラストオーダーです」


「俺はもういいや」

「俺も」

「私も」

「あ、ウーロン茶」


 結局注文はウーロン茶だけでした。

 お冷くださいという人もいたので、コップに氷と水を入れて運びます。

 ついでに私もお茶を持ってお客さんの隣に失礼しました。


「この店はうまいからいいなぁ」


「この箸ってやつ、使いこなせると便利だよな」


 みなさん思い思いに賛辞の言葉を口にしてくれます。

 本当にこういう声はありがたいですね。

 

「儂はリガンが食えたら最高なんじゃがなぁ」


 聞きなれない言葉です。

 リガンとはなんでしょうか。


「リガンっていうのは此処から北に行ったセリム皇国の名物だよ。

鳥の腹に豆や魚を詰め込んだ料理でおいしいんだ」


 亮君が教えてくれました。

 鳥の詰め物ですか……流石に簡単には作れそうにありませんね。

 お店で出すにも値段が高くなりそうです。


 でもいい話を聞きました。

 こちらの世界特有の料理をアレンジしてお店に出せるかもしれませんね。


 そうと決まれば今度お休みをもらっていろいろ調べてみるのもいいかもしれませんね。

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