第249話 殲滅
トロールたちのところへ近づくにつれ、先ほどの【絶対零度】の魔法に無駄が多かったことがよく分かる。
威力を完全に間違えており、最前列にいるオークやトロールは全身を氷漬けにできているものの、二列目以降は氷漬けが甘くなってしまっている。
遠距離から行った弊害が如実に出てしまっており、相当量の魔力を消費したのに効果が薄い。
ウスマンを分からせるために見栄え重視にした弊害が出ており、重力魔法でもちゃんと分かってもらえたんじゃないかと今更ながら後悔しつつも……今更考えたところで仕方がない。
ここからは後方にいる魔物のために魔法を温存しつつ、氷漬けの甘いオークやトロールから確実に仕留めていこう。
引き抜いていた刀を構え、俺は魔物の群れへと単身で突っ込んでいく。
二列目のオーガとトロールは腰まで、三列目は膝までと、後方になるにつれて氷漬けが甘くなっており、今すぐに動いてきそうな四列目のオーガとトロールから仕留めることに決めた。
通り抜けていく際、俺への攻撃を行ってきたが、寒さで動きが鈍くなっているのに加え、下半身が氷漬けになっているため、まともな攻撃を行えていない。
オーガとトロールたちの間隔も近いこともあり、お互いに攻撃し合うような形になり、俺が何もせずとも大ダメージを負わせ合っていた。
そんなトロールたちを横目に、四列目の下に辿り着いた俺は、有無を言わせぬまま淡々と斬り飛ばしていく。
動きの鈍いトロールとオーガは基本的に相手にならないのだが、今回はくるぶし辺りまで氷漬けにされていることもあり、いつも以上に作業感が出てしまっている。
トロールだけは少し厄介で、驚異的な再生能力を保有しているため、しっかりと首を刎ねないといけないのは面倒なのだが……それでも相手にならないことには変わりない。
俺がオーガとトロールの歩兵部隊に突撃してから、ものの五分程度で殲滅に成功。
最前列にいるオーガとトロールには手をつけていないものの、氷の中で絶命しているはず。
思っていたよりも、歩兵部隊と後方部隊の距離があるため、一度ウスマンに報告をしに戻ってもいいのだが……このまま後方部隊を仕留めに行くか。
魔力は多少ではあるが温存してあるし、重力魔法を数発叩き込むことができる。
壁として使っているであろう歩兵部隊との距離の開きについては引っかかりはするものの、後方部隊からも大した気配は感じられない。
苦戦することもないと判断した俺は、このまま殲滅しに向かうことに決めた。
オーガとトロールを殲滅した場所から数分進んでいくと、ようやくのそのそと進んでいる後方部隊の姿を発見。
想像していた通り、飛行部隊と魔法を得意とするような遠距離部隊であり、真ん中にいる一体だけからはそれなりの気配の強さを感じる。
とはいえ、この間戦ったカースミステリーと比べても弱い気配。
苦戦することなく、潰すことができそうだ。
この目で敵の全体を捕捉したことで、魔力を温存する必要がないと判断した俺は、いきなり重力魔法をぶっ放すことに決めた。
戦闘の常識としては奥の手は隠すものなんだが……別に重力魔法は奥の手でもないしな。
魔力を使い切ることへの不安は若干あるものの、己が身があれば戦うことができるのが明確な強み。
ということで、俺は何も考えずに視界に捉えた魔物の部隊に向かって魔法を放った。
「【重力魔法・衝撃】」
まずは一番強い気配を感じた、ど真ん中にいる魔物を中心に放ち、次は真ん中から後方気味に。
最後は後方に異変を感じている様子の、前方に向けて放った。
急に圧死した仲間たちに、困惑している様子がこの位置からでも窺える。
次なる攻撃を警戒してか、隊列が乱れて散り散りになりかけている。
混乱も伝播していっているようだし、叩くならこのタイミング。
一番強い気配を感じた魔物を倒しきれなかったみたいだが、気配はかなり小さくなっていることから、大ダメージを負わせることには成功しているはずだ。
指揮も上手く執れないだろうし、楽に殲滅することができるはず。
一気に近づいていき、前列にいた潰れた飛行系の魔物の姿を発見。
まだ息のあるものもいるようだが、重力魔法を食らった魔物はひとまず無視し、まだダメージを負っていない魔物に狙いを定める。
遠距離攻撃ができる魔物を揃えられているだけあり、狙いが俺一人に向くとそれなりに厄介だからな。
適当に斬り飛ばしつつ、まずは魔物の後方部隊の中心まで進むことに成功。
大混乱のお陰で、俺のことに気づいている魔物は少数。
想定以上に重力魔法で削れており、このまま放置していても勝手に退いていきそうだが、潰しておくに越したことはない。
俺に気づいたものから、飛ばす斬撃を駆使して斬っていき、残っていた魔物の殲滅を開始。
戦うという感じにはならず、一方的に俺が魔物を仕留めている状態。
そうこうして魔物を倒している内に、俺が感じていた強い気配の魔物の姿が見えてきた。
軍の真ん中辺りで倒れていたのは、人のような姿の魔法使い。
ただ、明確に人ではなく、大きな要素は額から生えている角。
魔族の類だと思う。
俺はそんな魔族の下に駆け寄り、喉元に刀を当てながら声をかける。
「……お前がこの軍を引き連れてきたリーダーか?」
「……ひゅー、き、貴様。……な、何者じゃ」
「傭兵みたいなものだ。それで、リーダーなのか?」
「……こ、答えるわけないじゃろ」
重力魔法が直撃したようで、体はぐしゃぐしゃとなっていたが、目は死んでおらず、俺の質問には一切答えない魔族。
情報を引き出すためにここから尋問することも考えたが、情報は聞き出せないと悟った俺は、すぐに首を斬って絶命させた。
恐らく、こいつがリーダーで間違いがないだろうし、この軍に脅威となる魔物はもういない。
俺は絶命した魔族から視線を切り、再び残りの魔物を殲滅するべく動いたのだった。
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