第242話 警戒
ルーカスとドロシーのパーティ結成を見届けてから、俺はすぐに冒険者ギルドへと向かった。
ここからはギルド長と共に旧廃道へと向かい、ベインを紹介する予定。
集合の時間よりも少し遅くなってしまったため、急いでギルド長室へと向かう。
「ギルド長、すまない。遅くなってしまった」
「別に気にしなくて大丈夫だ。実際に数分ぐらいしか遅れていないだろ? この部屋が集合場所だったから、仕事をしていられたしな」
そう言うものの、俺が招いた面倒ごとで、俺の指定した時間に遅れるというのはよくない。
ギルド長は優しいから、本当に気にしていないだろうけどな。
「ギルド長は気にしていないだろうが、しっかりと詫びさせてくれ。すまなかった」
「分かった、分かった。あとで飲み物でも奢ってもらう。それで、もうグレアムさんは出発できるのか?」
「いつでも大丈夫だ。ギルド長は大丈夫か?」
「ああ。もう書類確認も終わるからな」
最後の一枚にハンコを押し、体を思い切り伸ばしたギルド長。
確認作業が多そうだし、ギルド長としての仕事は想像している以上に大変そうだ。
「よし、終わった。俺もいつでも出発できる。案内をお願いしてもいいか?」
「もちろん。案内するからついてきてくれ」
ギルド長を案内するように俺が先を進み、ビオダスダールを出発した俺たちは旧廃道へと向かった。
ベインにも事前に行くことは伝えてあるため、上手いことやってくれるはず。
そう思っていたんだが……。
「お、おい! グレアムさん、ありゃ一体なんだ!?」
廃道に入ったところで、十体以上のゴーストウィザードが並んで立っていた。
一応片膝をついているし、忠誠を示しているようにも見えるけど、ギルド長目線では警戒されているようにしか感じないだろう。
「ギルド長、剣は抜かなくて大丈夫だ。この間話したベインという魔物の部下だからな」
「あ、あれだけの数のゴーストウィザードを従えているだと!? 疑うわけじゃないんだが、グレアムさんが騙されている可能性はないのか?」
「本当に大丈夫だ。よく見たら、敵意がないことも分かると思う」
興奮しているギルド長を落ち着かせ、一度様子を見ることを伝えた。
ゴーストウィザードたちは一切動いておらず、何より片膝をついて頭を下げていることにも気がついたようで、ようやく敵意がないことに気づいてくれた様子。
「……本当に敵意がない。グレアムさんに頭を下げているってことだよな?」
「そういうことになるだろうな。迎えはよこさなくていいと言ったんだが」
軽くベインに不満を漏らしつつ、とりあえずゴーストウィザードたちに声をかけることにした。
「ベインの命令で迎えに来たのか?」
「はい。グレアム様を出迎えてほしいと頼まれました。迷惑でしたでしょうか?」
「……いや、迎えに来てくれてありがとう。ベインのところまで案内してくれ」
「はっ! かしこまりました」
ゴーストウィザードたちに囲まれながら、旧廃道のベインのところへと向かう。
そもそも廃道や旧廃道では、大した魔物は出現しないし、したとしても大半がベインの傘下の者。
護衛なんか確実にいらないのだが、ギルド長から俺が舐められてはいけないという考えからだろう。
ゴーストウィザードに囲まれている方が落ち着かないし、せめて旧廃道に入ってから迎えを寄越してほしかったが、今更文句を言っても仕方がない。
「ギルド長、大丈夫か?」
「あ、ああ。過去にないくらい緊張はしているが、貴重な経験だと思って楽しませてもらう」
そう言って笑顔を見せてくれたギルド長だが、完全に引き攣っているし、無理してくれていることが分かる。
心の中で謝罪をしつつ、歩くこと約10分。
ようやくベインの館へと辿り着いた。
「ここがベインのいる建物だ。意外と立派だろ?」
「凄いな。ビオダスダールの近くに、こんな立派な魔物の館があることを知らなかった」
「報告が遅れたのと、勝手に建設を許したのはすまない」
「いやまぁ……確かに良くはないんだが、スケールが大きすぎて何も言えないな」
許容範囲を超えているのか、考えることを一時的に放棄している様子のギルド長。
そんなギルド長と共に、ゴーストウィザードが開けてくれた扉を通って館の中に入ると、玄関の入口でベインが出迎えに来てくれていた。
「――つっヅァ! あ、悪魔!?」
「ギルド長、落ち着け。あれがベインだ」
ゴーストウィザードで慣れたように見えたギルド長だったが、ベインを見た瞬間に再び剣を抜いてしまった。
その瞬間、魔物たちからピリッとした空気が流れるものの、俺がベインを注意する。
「ベイン、俺の友人を試すような真似はするな。……本気でぶっ飛ばすぞ?」
「――! す、すみません! 少しだけ悪ふざけが過ぎました!」
オーラを隠さず、怪しい風体で現れたベインを俺は本気で叱る。
ベインもベインで警戒することは理解できるが、さすがにギルド長への失礼は許さない。
「ギルド長のことは、俺だと思って扱ってくれ。ベイン、頼むぞ」
「かしこまりました! え、えーっと、お名前はなんでしょうか?」
「ド、ドウェインだ。ベインさんと呼んでもいいのか?」
「ドウェイン様、大変申し訳ございませんでした。敬称なんていりません。私のことはベインと呼んでください!」
「いや、俺の方こそ驚いてすまなかった。……分かった。ベインと呼ばせてもらう」
お互いに謝罪を始めたことで、空気はかなり緩やかなものになった。
軽く叱ってしまったが、これでようやく落ち着いて話ができそうだし、ガツンと注意して正解だったな。
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