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辺境の村の英雄、四十二歳にして初めて村を出る  作者: 岡本剛也
第3章

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第242話 警戒


 ルーカスとドロシーのパーティ結成を見届けてから、俺はすぐに冒険者ギルドへと向かった。

 ここからはギルド長と共に旧廃道へと向かい、ベインを紹介する予定。

 集合の時間よりも少し遅くなってしまったため、急いでギルド長室へと向かう。


「ギルド長、すまない。遅くなってしまった」

「別に気にしなくて大丈夫だ。実際に数分ぐらいしか遅れていないだろ? この部屋が集合場所だったから、仕事をしていられたしな」


 そう言うものの、俺が招いた面倒ごとで、俺の指定した時間に遅れるというのはよくない。

 ギルド長は優しいから、本当に気にしていないだろうけどな。


「ギルド長は気にしていないだろうが、しっかりと詫びさせてくれ。すまなかった」

「分かった、分かった。あとで飲み物でも奢ってもらう。それで、もうグレアムさんは出発できるのか?」

「いつでも大丈夫だ。ギルド長は大丈夫か?」

「ああ。もう書類確認も終わるからな」


 最後の一枚にハンコを押し、体を思い切り伸ばしたギルド長。

 確認作業が多そうだし、ギルド長としての仕事は想像している以上に大変そうだ。


「よし、終わった。俺もいつでも出発できる。案内をお願いしてもいいか?」

「もちろん。案内するからついてきてくれ」


 ギルド長を案内するように俺が先を進み、ビオダスダールを出発した俺たちは旧廃道へと向かった。

 ベインにも事前に行くことは伝えてあるため、上手いことやってくれるはず。

 そう思っていたんだが……。


「お、おい! グレアムさん、ありゃ一体なんだ!?」


 廃道に入ったところで、十体以上のゴーストウィザードが並んで立っていた。

 一応片膝をついているし、忠誠を示しているようにも見えるけど、ギルド長目線では警戒されているようにしか感じないだろう。


「ギルド長、剣は抜かなくて大丈夫だ。この間話したベインという魔物の部下だからな」

「あ、あれだけの数のゴーストウィザードを従えているだと!? 疑うわけじゃないんだが、グレアムさんが騙されている可能性はないのか?」

「本当に大丈夫だ。よく見たら、敵意がないことも分かると思う」


 興奮しているギルド長を落ち着かせ、一度様子を見ることを伝えた。

 ゴーストウィザードたちは一切動いておらず、何より片膝をついて頭を下げていることにも気がついたようで、ようやく敵意がないことに気づいてくれた様子。


「……本当に敵意がない。グレアムさんに頭を下げているってことだよな?」

「そういうことになるだろうな。迎えはよこさなくていいと言ったんだが」


 軽くベインに不満を漏らしつつ、とりあえずゴーストウィザードたちに声をかけることにした。


「ベインの命令で迎えに来たのか?」

「はい。グレアム様を出迎えてほしいと頼まれました。迷惑でしたでしょうか?」

「……いや、迎えに来てくれてありがとう。ベインのところまで案内してくれ」

「はっ! かしこまりました」


 ゴーストウィザードたちに囲まれながら、旧廃道のベインのところへと向かう。

 そもそも廃道や旧廃道では、大した魔物は出現しないし、したとしても大半がベインの傘下の者。


 護衛なんか確実にいらないのだが、ギルド長から俺が舐められてはいけないという考えからだろう。

 ゴーストウィザードに囲まれている方が落ち着かないし、せめて旧廃道に入ってから迎えを寄越してほしかったが、今更文句を言っても仕方がない。


「ギルド長、大丈夫か?」

「あ、ああ。過去にないくらい緊張はしているが、貴重な経験だと思って楽しませてもらう」


 そう言って笑顔を見せてくれたギルド長だが、完全に引き攣っているし、無理してくれていることが分かる。

 心の中で謝罪をしつつ、歩くこと約10分。

 ようやくベインの館へと辿り着いた。


「ここがベインのいる建物だ。意外と立派だろ?」

「凄いな。ビオダスダールの近くに、こんな立派な魔物の館があることを知らなかった」

「報告が遅れたのと、勝手に建設を許したのはすまない」

「いやまぁ……確かに良くはないんだが、スケールが大きすぎて何も言えないな」


 許容範囲を超えているのか、考えることを一時的に放棄している様子のギルド長。

 そんなギルド長と共に、ゴーストウィザードが開けてくれた扉を通って館の中に入ると、玄関の入口でベインが出迎えに来てくれていた。


「――つっヅァ! あ、悪魔!?」

「ギルド長、落ち着け。あれがベインだ」


 ゴーストウィザードで慣れたように見えたギルド長だったが、ベインを見た瞬間に再び剣を抜いてしまった。

 その瞬間、魔物たちからピリッとした空気が流れるものの、俺がベインを注意する。


「ベイン、俺の友人を試すような真似はするな。……本気でぶっ飛ばすぞ?」

「――! す、すみません! 少しだけ悪ふざけが過ぎました!」


 オーラを隠さず、怪しい風体で現れたベインを俺は本気で叱る。

 ベインもベインで警戒することは理解できるが、さすがにギルド長への失礼は許さない。


「ギルド長のことは、俺だと思って扱ってくれ。ベイン、頼むぞ」

「かしこまりました! え、えーっと、お名前はなんでしょうか?」

「ド、ドウェインだ。ベインさんと呼んでもいいのか?」

「ドウェイン様、大変申し訳ございませんでした。敬称なんていりません。私のことはベインと呼んでください!」

「いや、俺の方こそ驚いてすまなかった。……分かった。ベインと呼ばせてもらう」


 お互いに謝罪を始めたことで、空気はかなり緩やかなものになった。

 軽く叱ってしまったが、これでようやく落ち着いて話ができそうだし、ガツンと注意して正解だったな。



ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。

書籍版の第2巻が発売しております!!!

Web版をご愛読くださっている皆さまにも楽しんでいただけるよう、加筆修正を加えたうえでの刊行となっております。

ぜひお手に取っていただけますと幸いです!

引き続き、応援のほどよろしくお願いいたします!!


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