第237話 揉め事
ビオダスダールに戻ってきてから、約一週間が経過した。
最初はたどたどしい感じだったルーカスも、段々と馴染み始めている様子。
トレイシーたちもまだ来たばかりだし、ルーカスも一緒に馴染んでくれたら嬉しい。
とはいえ、ルーカスに関しては孤児院で働くというよりかは、冒険者として活動していくことがメインだからな。
まずは活動できるまでのメンタルケアが最優先ではあるが、少しずつ復帰するための手助けをしていきたい。
冒険者なら、パーティも組まないといけないしな。
「グレアムさん、おはようございます」
「ジーニア、おはよう。今日はアオイと一緒じゃないのか?」
「アオイちゃんは武器の手入れで夜更かししていたみたいで、まだ寝ています」
「そうだったのか。休日前に寝坊ってもったいないな。……いや、休日の使い方としては合っているか」
俺は休日も満喫したい人間なので、前日にどれだけ夜更かししていようが起きてしまう。
まぁ年齢の影響で、そこまで長時間眠れないというのもあるんだが。
「あ、そういえばなんですが……私たちがダンジョン街にいたタイミングで、ベインさんが訪ねてきていたみたいですよ。トリシアさんは本当に知り合いだとは思っていなかったみたいで、特に報告をしなかったみたいなんです」
「え? ベインが来ていたのか? 訪ねて来た理由は聞いているのか?」
「いえ、特に何も言わずに帰ってしまったみたいです。そのせいで、トリシアさんも変な勧誘の一人だと思っていたみたいですが、あまりにも怪しすぎたみたいで覚えていたみたいです」
まぁベインらしいといえばベインらしい。
ただ、何かトラブルがあったとしたら、わざわざやってくるってことは一大事の可能性もある。
今日はルーカスのことを中心に動こうと思っていたが、まずは旧廃道に行って、話を聞きに行こう。
一週間以上経ってしまっているし、何か問題が起こっていたとして、既に解決済みの可能性が高いけどな。
「様子を見に行った方がよさそうだな。ちょっと今から旧廃道に行ってくる」
「あっ、私も一緒に行きたいです」
「アオイと出かける約束をしているんだろ? まだ寝ているって言っても、いつ起きるかわからないし、起きてジーニアがいないと気づいたらとんでもなく面倒くさいぞ」
「……むむむ」
アオイのことを考えて、露骨に嫌な表情を見せたジーニア。
置いていく選択を取れば、確実に俺も面倒くさいことに巻き込まれるため、留守番するか叩き起こすかにしてほしいところ。
「ここは待っているのが無難だと思う。それか叩き起こすか」
「叩き起こしても起きないですからね……。ついて行きたいですが、ここはアオイちゃんを待つことにします」
「ああ。そうしてくれると俺もありがたい」
口ではそう言ったものの、ついていきたいオーラをビンビンに出している。
俺は後ろ髪引かれる思いでジーニアを家に残し、一人でベインの下へと向かった。
一人ということもあり、ビオダスダールを出発してから十分ほどで旧廃道に到着。
いつものようにゴーストウィザードが出迎えてくれ、案内されるがままベインの屋敷に入った。
屋敷に入るなり、激しい風切り音が聞こえ、音の行方を捜していると……。
暴れるように、レッドワイバーンの子供が飛んできた。
「うおっと、随分と大きくなったな」
「ガルゥ!」
嬉しそうな声を上げながら、俺の胸に頭を擦りつけてくるレッドワイバーン。
既に成人女性くらいのサイズになっており、飛んでくるのを受け止めるのも大変だった。
「グレアム様! お久しぶりでございます!」
「ベイン、すぐに来れなくてすまなかったな。大事な用事があったんだろ?」
「用事はございましたが、遅いなんてことはございません!」
一週間以上経過しているし、確実に遅いと思うんだけどな。
とりあえずベインは元気そうだし、問題の方は既に片付いたのかもしれない。
もしかしたら……レッドワイバーンについてかもな。
明らかに成長しているし、そろそろ室内で飼うのは厳しくなった――とかの相談の可能性はある。
というか、レッドワイバーンの子供なのに体が赤くないな。
子供だから体が黒いのかと思っていたが、成長した今でも真っ黒なまま。
「いや、自分で遅いと思っているからな。それで用事は片付いたのか?」
「いえ……今現在も対処している最中でございます」
「ということは、レッドワイバーンについてか? 見るからに大きくなっているもんな」
俺がそう話すと、胸に頭を擦りつけていたレッドワイバーンは首を傾げた。
自分のことを話していると分かっているのは凄いが、この反応的にあまり自覚はないのか?
「レッドワイバーンのことも悩みの一つではありますが、私が訪ねたのは別件でございます」
「違う要件だったのか。抱えている問題とはなんだ?」
「実は……隣国であるウィシュル王国と揉めているのです」
「え? 隣国と……揉めている? ベインが、か?」
「はい。着々と勢力を拡大していたところ、ウィシュル王国が抱えている冒険者と鉢合わせしてしまったのです。こちらから手出しはせず、逃げることには成功したのですが……」
「ウィシュル王国が兵をあげたということか?」
「流石はグレアム様! 何も言わずとも理解できるなんて凄いです!」
「ここで褒めの言葉はいらない」
目を輝かせているベインだが、本当にそれどころじゃない案件。
思っていた数倍、ちゃんとしたまずい状況だし、まさか魔王軍ではなく人間と争いが起こるとは思っていなかった。
これはすぐに対処をしないといけないし、魔王軍認定された暁には、この場所の特定までされかねない。
魔物を従えさせた時点で、ある程度の予測はしていたつもりだが……あまりに急で、揉めるまでがあまりに早すぎたな。
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