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辺境の村の英雄、四十二歳にして初めて村を出る  作者: 岡本剛也
第3章

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第236話 お説教


 本来はもう少しだけ滞在する予定だったが、ルーカスのこともあるためビオダスダールに帰ることにした。

 【バッテンベルク】へは軽く挨拶だけ済まし、手配してくれた馬車に乗ってビオダスダールを目指す。


 馬車の中では、意外にもグリーが積極的にルーカスに話しかけており、冒険者について色々と質問していた。

 俺たちも一応冒険者ではあるんだが、グリーにとっては特別な存在のようだからな。


 ルーカスとは年齢も近い……とはいっても七、八歳は離れているんだが、境遇も相まって親近感を覚えているようだ。

 俺以外では初めての男性でもあるため、ここが仲良くなってくれるのはありがたい。


 そんなことを考えながら、馬車に揺られること丸一日。

 ようやくビオダスダールに帰ってくることができた。


 経由地を挟んだものの、馬車での長時間の移動はつらいものがある。

 走ったほうが楽なうえに速いんだが、アオイが全力で引き留めてきたため、仕方なく馬車移動に付き合う形となっている。


「ふぅー、やっと着いた! もう腰がバッキバキ!」

「俺は全然大丈夫。行きのほうが何倍も辛かったから」

「それはグリーさんが悪いですからね。ただ、確かに荷物に紛れての移動はつらそうではあります」


 胸を張りながら行きでの移動の辛さを語ったグリーに対し、俺は軽く頭を小突く。

 ジーニアが言った通り、グリーが悪いし自慢げに語ってはいけない内容。


「ルーカス、ここがビオダスダールだ。ちゃんとした街ではあるだろ?」

「僕は今日からここで暮らすことになるんですね。……改めてよろしくお願いします」

「こちらこそよろしく! 一番下っ端だし、ガンガン雑用をしてもらうからね!」

「ルーカスは俺よりも下なのか?」

「グリーよりは上かもな。まぁでも、同じようなものか」


 それでいうと、アオイとも同じ立場ではあるんだけど、アオイに引っ張ってもらったほうがルーカス的にもやりやすいはず。

 扱いは雑だけど、意外と面倒見はいいからな。


「じゃあ今日からライバルだ。冒険者としての経験値は俺より上だけど、絶対に負けない」

「グリー、よろしくお願いします」

「おう!」

「おう、じゃない。グリーはまずみんなへの謝罪からだからな。しおらしくしておかないと、トリシアとモードからこっぴどく叱られるぞ」

「あっ、そうだった……」


 楽しさから忘れていたようだけど、グリーはこれから叱られる。

 特にアンは本気で怒っているだろうし、ここからは反省モードに戻ってもらわないといけない。


「グリーって何かやらかしたんですか?」

「ちらっと話したと思うが、みんなに黙って勝手についてきたんだ。みんなに心配かけたから、これから叱られる」

「そうだったんですか。グリーはこれから大変ですね」


 ライバル風を吹かせていたが、一気にシュンとなったグリー。

 歩みも重くなっているようだが、俺は構わずに家へと向かっていく。


「ここが私たちの家! 意外といい家でしょ!」

「ほえー、こんなに大きな家に住んでいるんですか?」

「まぁ孤児院を営んでいるからな。シェアハウスでもあるし、特別って感じでもない」

「それでも大きいと思いますけど……」


 家の大きさに驚いているルーカスをよそに、俺は玄関の扉を開けると……。

 家の奥から走ってくる足音が聞こえてきた。


「グレアムさん、おかえりなさい! グリーはどうだった?」

「無事でしたか!?」


 リアもアンもグリーの心配をしているようで、すさまじい勢いで尋ねてきた。

 俺は二人の言葉には返答せず、背中に隠れているグリーを前へと出す。


「あっ、グリーだ!」

「お兄ちゃん……!」

「……勝手に抜け出してごめんなさい」

「ばかー! 本当に心配したんだから! お兄ちゃんがいなくなったら……私……」

「……アン、本当にごめん」


 怒られるでもなく、純粋に心配の言葉を投げかけられたグリー。

アンは泣いてしまっているし、こっぴどく叱られるよりも効いたかもしれない。


「謝るならもう二度としないで。兄妹なんだから、隠し事は嫌!」

「うん。もう二度と隠し事もしない」

「約束だから、ね」

「ああ、約束」


 アンとグリーは指切りをし、固い約束を交わした。

 リアもその様子を見て、何度もうなずいている。


「グリー、アンとリアが優しくてよかったじゃん!」

「ですね。私もほっこりしました」

「……うん。良かった」

「――ただ、私たちからはきっちりと叱らせて頂きます」


 兄妹愛にほっこりとしていた中、後ろからニュッと現れたのはトリシアとモード。

 腕を組んでグリーを睨んでおり、俺まで少し心臓がキュッとなった。


「うぇ……お、怒られるの?」

「当たり前です。トイレ掃除も一週間やってもらいますので、覚悟しておいてください」

「ご、ごめんなさい……」


 グリーはトリシアに連れられると、奥の部屋へと連れて行かれた。

 俺たちはそんな光景を見て笑いながら、グリーを見送った。


「ルーカス、ゴタゴタしていて悪いな」

「いえ。一連の流れを見て、いい場所だと思えました」

「あれ? その人だあれ?」

「新しく住むんですか?」


 ここでようやくルーカスにスポットが当たったため、自己紹介をするように促した。

 ルーカスは少し照れながら自己紹介をし、リアとアンは即座に歓迎。

 この場所が良い環境なのは間違いないし、ルーカスもここを気に入ってくれたら嬉しいな。



ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。

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