第236話 お説教
本来はもう少しだけ滞在する予定だったが、ルーカスのこともあるためビオダスダールに帰ることにした。
【バッテンベルク】へは軽く挨拶だけ済まし、手配してくれた馬車に乗ってビオダスダールを目指す。
馬車の中では、意外にもグリーが積極的にルーカスに話しかけており、冒険者について色々と質問していた。
俺たちも一応冒険者ではあるんだが、グリーにとっては特別な存在のようだからな。
ルーカスとは年齢も近い……とはいっても七、八歳は離れているんだが、境遇も相まって親近感を覚えているようだ。
俺以外では初めての男性でもあるため、ここが仲良くなってくれるのはありがたい。
そんなことを考えながら、馬車に揺られること丸一日。
ようやくビオダスダールに帰ってくることができた。
経由地を挟んだものの、馬車での長時間の移動はつらいものがある。
走ったほうが楽なうえに速いんだが、アオイが全力で引き留めてきたため、仕方なく馬車移動に付き合う形となっている。
「ふぅー、やっと着いた! もう腰がバッキバキ!」
「俺は全然大丈夫。行きのほうが何倍も辛かったから」
「それはグリーさんが悪いですからね。ただ、確かに荷物に紛れての移動はつらそうではあります」
胸を張りながら行きでの移動の辛さを語ったグリーに対し、俺は軽く頭を小突く。
ジーニアが言った通り、グリーが悪いし自慢げに語ってはいけない内容。
「ルーカス、ここがビオダスダールだ。ちゃんとした街ではあるだろ?」
「僕は今日からここで暮らすことになるんですね。……改めてよろしくお願いします」
「こちらこそよろしく! 一番下っ端だし、ガンガン雑用をしてもらうからね!」
「ルーカスは俺よりも下なのか?」
「グリーよりは上かもな。まぁでも、同じようなものか」
それでいうと、アオイとも同じ立場ではあるんだけど、アオイに引っ張ってもらったほうがルーカス的にもやりやすいはず。
扱いは雑だけど、意外と面倒見はいいからな。
「じゃあ今日からライバルだ。冒険者としての経験値は俺より上だけど、絶対に負けない」
「グリー、よろしくお願いします」
「おう!」
「おう、じゃない。グリーはまずみんなへの謝罪からだからな。しおらしくしておかないと、トリシアとモードからこっぴどく叱られるぞ」
「あっ、そうだった……」
楽しさから忘れていたようだけど、グリーはこれから叱られる。
特にアンは本気で怒っているだろうし、ここからは反省モードに戻ってもらわないといけない。
「グリーって何かやらかしたんですか?」
「ちらっと話したと思うが、みんなに黙って勝手についてきたんだ。みんなに心配かけたから、これから叱られる」
「そうだったんですか。グリーはこれから大変ですね」
ライバル風を吹かせていたが、一気にシュンとなったグリー。
歩みも重くなっているようだが、俺は構わずに家へと向かっていく。
「ここが私たちの家! 意外といい家でしょ!」
「ほえー、こんなに大きな家に住んでいるんですか?」
「まぁ孤児院を営んでいるからな。シェアハウスでもあるし、特別って感じでもない」
「それでも大きいと思いますけど……」
家の大きさに驚いているルーカスをよそに、俺は玄関の扉を開けると……。
家の奥から走ってくる足音が聞こえてきた。
「グレアムさん、おかえりなさい! グリーはどうだった?」
「無事でしたか!?」
リアもアンもグリーの心配をしているようで、すさまじい勢いで尋ねてきた。
俺は二人の言葉には返答せず、背中に隠れているグリーを前へと出す。
「あっ、グリーだ!」
「お兄ちゃん……!」
「……勝手に抜け出してごめんなさい」
「ばかー! 本当に心配したんだから! お兄ちゃんがいなくなったら……私……」
「……アン、本当にごめん」
怒られるでもなく、純粋に心配の言葉を投げかけられたグリー。
アンは泣いてしまっているし、こっぴどく叱られるよりも効いたかもしれない。
「謝るならもう二度としないで。兄妹なんだから、隠し事は嫌!」
「うん。もう二度と隠し事もしない」
「約束だから、ね」
「ああ、約束」
アンとグリーは指切りをし、固い約束を交わした。
リアもその様子を見て、何度もうなずいている。
「グリー、アンとリアが優しくてよかったじゃん!」
「ですね。私もほっこりしました」
「……うん。良かった」
「――ただ、私たちからはきっちりと叱らせて頂きます」
兄妹愛にほっこりとしていた中、後ろからニュッと現れたのはトリシアとモード。
腕を組んでグリーを睨んでおり、俺まで少し心臓がキュッとなった。
「うぇ……お、怒られるの?」
「当たり前です。トイレ掃除も一週間やってもらいますので、覚悟しておいてください」
「ご、ごめんなさい……」
グリーはトリシアに連れられると、奥の部屋へと連れて行かれた。
俺たちはそんな光景を見て笑いながら、グリーを見送った。
「ルーカス、ゴタゴタしていて悪いな」
「いえ。一連の流れを見て、いい場所だと思えました」
「あれ? その人だあれ?」
「新しく住むんですか?」
ここでようやくルーカスにスポットが当たったため、自己紹介をするように促した。
ルーカスは少し照れながら自己紹介をし、リアとアンは即座に歓迎。
この場所が良い環境なのは間違いないし、ルーカスもここを気に入ってくれたら嬉しいな。
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