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辺境の村の英雄、四十二歳にして初めて村を出る  作者: 岡本剛也
第3章

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第234話 手ほどき


 黒いマントのような羽で身を包むようにしており、羽の隙間から覗く顔は深海魚のような感じ。

 カースミステリーの本体は分身体と似た容姿をしているが、明確に違うのはその邪悪さだ。


 人攫いは分身体にやらせ、仕事は捕まえてきた人間にやらせる。

 そして、自分は人間を食い荒らしているからか、ぶよぶよとした体には何とも言い知れぬ嫌悪感がある。


「すぐに殺してやるから安心しろ」

「ぐギぃやアアア!」


 言葉は発せないようで、断末魔のような金切り声を上げたあと、襲いかかってきたカースミステリー。

 魔法を使っているようで、体が何重にもブレて見えてはいるが……色々と雑すぎる。


 動き出しと同時に魔法を使用するのがまず駄目。

 魔法自体の練度も足りていなければ、そもそもの体捌きも並だ。


 分身体の方がまだいい動きをしていたことを考えると、長らく自分では戦っていなかったことが分かる。

 死ぬ前のレクチャーとして、こちらも魔法で翻弄することに決めた。


 デカい体を揺らしながら、本体が間合いに入ってきたところで魔法を発動。

 幻惑魔法などの小手先に頼る魔法は、ギリギリで使わないと強者には有効ではない。


 もっとも、カースミステリーは強者ではないため、俺が魔法で作った残像を攻撃したことにも未だ気づいていない様子。

 背後へと回り、勝ち名乗りを上げているカースミステリーを冷ややかな目で見つつ、背後から首を飛ばした。


 首を飛ばされてもなお、やられたことには気づいていないようで、刎ね飛ばされて回転する顔は俺と視線が合うと、困惑した表情を浮かべた。

 そしてすぐに怒りへと表情を変えると、体が動かないことで再び困惑の表情。


 そこで首はまた後ろを向いてしまい、再び俺の方に顔が向いた時には――絶望の表情へと変わっていた。

 その絶望の表情のまま、首が地面に落ちたところで、ゆっくりと体の方も力なく崩れる。


 生命力が高いことも考慮していたのだが、力量差もあったため、あっけない幕切れだったな。

 カースミステリーの息の根を止めたことを確認してから、俺はすぐに氷の壁を破壊する。


 囚われていた人たちは、寒さのせいでガタガタと震えていたが、俺の手によって助けられたことをすぐに察したのか、泣き崩れながら喜び始めた。

 「ありがとうございます」を連呼されているが、俺はお礼の返事をする前に炎の魔法で暖を取らせる。


「もう安全だ。あまりここにはいたくないだろうが、体が暖まるまでは待機してほしい」

「ありがとうございます! ……本当にありがとうございます!」

「お礼はいらない。生き残っているのは三人だけなのか?」

「……分かりませんが、三日前までは長いこと四人で働かされていました。その一人が先日食べられてしまったので……」

「三人しかいないのか。辛かっただろうし、大変だったな」


 色々と思い出させてしまったのか、泣き崩れるおじさん。

 そのおじさんに続くように、若い女性とまだ十代らしき青年も泣き崩れた。


 俺は火傷をしないように十分気をつけながら、暖を取らせて泣き止むのを静かに見守る。

 助かってもなお、心の傷は一生治らないだろうし、この先の人生にも多大な影響があると考えると、色々と考えてしまうな。


「三人には家族はいるのか?」


 涙が少し落ち着いたタイミングで話を振る。

 家族がいるのであれば、この先の支えになることは間違いないからな。


「私は妻と子供を残しています。……うぅ、また会うことができるとは思っていませんでした」

「私は両親と妹がいます。私も……もう二度と会えないと思っていました。本当にありがとうございます」

「何度も言うが、お礼は大丈夫だ。それで……君は家族がいるのか?」


 まだ若い青年に声をかけると、俯いて暗い顔へと変わった。

 この様子だと、家族はもういないのか。


「……僕は五年ほど前に両親を亡くしています。その後冒険者になり、家族とも言えるほどの仲間がいたんですが……カースミステリーに襲われた際に」


 そこからはボロボロと涙が溢れてしまい、言葉を紡ぐことができなかった青年。

 家族は既に亡くしており、仲間もカースミステリーに殺されてしまった。


 まだ敵のカースミステリーがいるのであれば、生きる活力にもなっただろうが……もう敵もいない。

 まだ若いし、これは保護したほうがいいかもしれない。


「辛かったな。本当に辛かったな。とりあえず二人は必ず家族の元に届ける。君は、しばらく俺と行動してほしい」

「……うぅ。……い、いえ。これ以上は迷惑をかけられません」

「駄目だ。助けられたと思うのなら、俺の言うことには従ってくれ。名前はなんていうんだ?」

「僕はルーカスと言います」

「ルーカスか。俺はグレアムだ」

「グレアムさん。色々とありがとうございます」


 自己紹介をしてから、暖が取れたことを確認し、すぐにカースミステリーの住処を後にすることにした。

 自力で歩く力もほとんど残っていなかったため、三人は俺が背負い、全力で走ることはせず、気を遣いながらダンジョン街を目指して帰ったのだった。




ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。

書籍版の第2巻が7/25に発売しております!!!

Web版をご愛読くださっている皆さまにも楽しんでいただけるよう、加筆修正を加えたうえでの刊行となっております。

ぜひお手に取っていただけますと幸いです!


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