第212話 受け入れ先
ここの孤児院について話し合った後、今後についても尋ねることにした。
今回、俺たちが訪ねてきた目的は、実はそちらが本命だ。
既に受け入れられている子供たちの移動は難しいだろうが、もし受け入れられなかった子がいるのであれば、ぜひ引き取りたいと考えている。
この人の多さからして、泣く泣く受け入れを断念した子がいてもおかしくない。
「諸々教えてくれてありがとう。色々と経験として活かせそうだ」
「お礼なんていいさ。身寄りのない子供たちの受け皿になってくれるというだけで嬉しいよ。私にできることなら何でも教えるから、いつでも頼ってきてほしいね」
「そう言ってもらえると心強い。さっそく一つ聞きたいんだが、ここで受け入れきれていない子供はいるのか? 俺が営業している場所には余裕があるから、今日は受け入れることも視野に入れて来たんだ」
「そうだったのかい! もちろんいるよ。ここの受け入れはもう限界でね。泣く泣く断らざるを得なかった子がいるんだ。案内するから、ついてきてくれるかい?」
ドローレスは嬉しそうにそう言うと、孤児院の外へと出ていった。
俺たちもドローレスに続き、孤児院の外へと出る。
案内されるままに進んでいくと、たどり着いたのは石造りの縦長の建物。
ここに、受け入れきれなかった子供たちがいるのだろうか。
「ドローレスさん、こんにちは。今日も子供たちを見に来てくれたんですか?」
「いいや、今日は紹介したい人を連れてきたんだ。通してくれるかい?」
建物の入口に立っていた兵士とそんなやり取りを交わし、俺たちも中に入れてもらった。
身寄りがなく、受け入れ先もない子供たちの収容所のような場所かと勝手に想像していたが、どうやらそうではないようだ。
中は兵士だらけであり、ここは詰所らしい。
収容所でなかったのは安心だが、受け入れ先が詰所しかないのもそれはそれで問題だ。
とはいえ、安全な場所であることは間違いないだろう。
「兵士の詰所に子供たちがいるのか」
「保護するのは基本的に兵士だからね。名目上は一時的な待機場所だけど、受け入れ先がなくて長く預かっている状態なんだよ」
「そうなのか。それは子供たちにとっても、兵士たちにとっても良くないな」
今はまだ保護されているから良いものの、詰所も満員になれば、保護すらされない子供が出てくるかもしれない。
できる限り、そんな事態は避けたい。
ドローレスから詰所の現状を聞きつつ階段を登っていくと、石造りの建物とは思えない温かみのある部屋にたどり着いた。
この一室が預かり部屋のようで、子供たちが中で遊んでいる。
広い部屋に対し、中にいる子供は計四人。
ドローレスが「まだ心配はいらない」と言っていた通り、受け入れ先が見つかっていない子供は少なく、年齢も比較的高めの子たちだ。
「あっ、ドローレスさんだ! 今日もおやつを持ってきてくれたの?」
「ああ、そうだよ。少ないから仲良く分けるんだよ」
「わーい! ありがとう!」
一番年上と思しき女の子がドローレスからふかし芋を受け取ると、奥にいた他の子供たちと分け始めた。
ここでの生活を受け入れているようにも見えるし、この光景を見る限り、ちゃんとした生活が送れているようだ。
「グレアムさん、どうだい? 小さい子から引き受けるようにしているから、比較的大きな子しかいないんだけど、受け入れてくれるかい?」
「ああ、もちろんだ。聞き分けも良さそうな子供ばかりだし、全員まとめて連れて帰らせてもらうよ」
「本当かい! 全員とはありがたいねぇ!」
一番小さな子で、リアと同い年くらいの男の子だった。
乳児も受け入れる覚悟で来たのだから、どんな子であれ、責任を持って引き受けるつもりだ。
「何か手続きは必要なのか? さすがに他の街に連れて行くとなれば、人身売買を疑われかねないだろ?」
「いいや、手続きは特にいらないよ。本来は必要だけど、ミリアとナタリーの紹介だからね。それに、まだ付き合いは短いけど、グレアムさんが悪い人じゃないことは分かる。私が保証人になるから、安心して引き受けてくれたら嬉しいね」
「ドローレス任せでいいのか?」
「もちろんさ。この子たちをちゃんとした場所で育ててくれるなら、私にできることは何でもやるよ」
胸をトンと叩くドローレス。
ドローレスの言葉に返すような形ではないが……まだ付き合いは短くとも、彼女が本当に良い人だということは、俺にもよく分かった。
「ありがとう。それじゃあ、クリンガルクから帰る際に、この四人はビオダスダールに連れて行かせてもらうよ」
「ああ。くれぐれもよろしく頼むね」
「おお! 新しい仲間が決まったんだ! 楽しみだね!」
「リアさんたちと仲良くできるかは心配ですが、一緒に暮らせるのは楽しみです」
命を預かる以上、軽く考えているわけではないが……
アオイとジーニアも前向きな言葉をかけてくれたおかげで、俺も気持ちを楽にして子供たちを引き受けることができる。
「それじゃあ戻ろうかね。グレアムさんの件は、明日改めて私から子供たちに伝えておくよ。心の準備もしやすいだろうからね」
「ああ。何から何まで、本当にありがとう」
「感謝はお互い様さ。同じ志を持つ者同士、今後ともよろしく頼むよ」
手を差し出してきたドローレスと固い握手を交わし、俺たちは詰所を後にした。
子供たちへの報告はドローレスに任せ、ここから俺たちはキングガリル討伐に気持ちを切り替える。
そしてキングガリルを無事に討伐した後、子供たちと共にビオダスダールへと戻ろう。
不安はありつつも、今はただ、キングガリルのことだけを考えて動く。
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。
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