第207話 復帰
ダンジョン街から帰ってきてから、約一ヶ月が経過した。
この間は基本的にジーニアと二人で依頼をこなしつつ、たまに一人で手配書の魔物を討伐しに行っていた。
手配書の魔物は合計で五体討伐しており、そのおかげでかなりの金額を稼がせてもらっている。
依頼料も高く、手に入れた素材も高値で売却できる。
ピックアップしてくれたギルド長には感謝しかない。
残る手配書の魔物は十五体。比較的近場のものはすでに倒してしまったため、今後は遠出して一気に狩ることになるだろう。
ギルド長曰く、俺が各地の強い魔物を倒して回っているという噂が広まりつつあり、現状では把握されていない強力な魔物の情報も集まってくるかもしれないとのこと。
全て狩り尽くしてしまうことを危惧していたが、この分ならその心配もなさそうだ。
遠慮なく、危険とされている魔物を狩っていこうと思う。
それから……この一ヶ月の間、戦線を離れていたアオイも、ようやく戻ってくる。
帰ってきてから数日で完治すると思っていたのだが、靭帯に傷がついてしまったことで、復帰が遅れていた。
逆に言えば、靭帯を負傷して一ヶ月で戦線復帰できるのは異常な回復力であり、サリースからもらった【ヒール】が使える杖も大活躍だった。
一回単位では微々たる回復量だったが、塵も積もれば山となる――を体現した結果だ。
アオイにとってはモヤモヤする期間だったと思うが、リアたちにとっては大きな成長の期間でもあった。
付きっきりで指導をしてもらったおかげで、リア、アン、グリーの三人は順調に力をつけている。
グリーに関しては、そろそろ実戦を行ってもいいくらいの強さだし、近いうちにチビたちを連れてゴブリン狩りをしてもいいかもしれない。
そんなことを考えながら、久しぶりに復帰するアオイを待っていると、彼女が二階から勢いよく降りてきた。
「よーし! 完全復活! 今日から参加するからね!」
「無理はするなよ。また怪我をしたら、癖になる可能性もあるからな」
「大丈夫! 【制限解除】を使わなければ、怪我を負うことはないからさ!」
「私もサポートしますので、最初は慣らしながら依頼をこなしていきましょうね」
「うん! 飛ばしたいけど我慢! だって、来週はクリンガルクの街に行くんだよね? 置いてけぼりは絶対に嫌だし!」
そう。
来週から、俺たちはクリンガルクの街に行くことになっている。
以前から話に出ていたが、【紅の薔薇】のミリアが孤児院に案内してくれる予定だ。
ついでに、一緒に依頼をこなす約束もしているため、アオイはぜひとも参加したいと思っているはずだ。
「ああ。怪我したらリアたちと留守番だから、自分のためにも無茶はするなよ」
「分かってる! それで、今日は何の依頼を受けるの?」
「昨日から既に受注しています。南の街道に現れたオークの群れの討伐依頼です」
「オークかぁ……。カオナシと戦っちゃったから、相手としては物足りないけど、復帰戦としてはちょうどいい相手かな!」
「一ヶ月ぶりの戦闘なんだから、オーク相手でも気を抜くなよ」
アオイにそう忠告しつつ、俺たちはオークの群れの目撃情報があった南の街道へと向かった。
あまり使われない街道ではあるが、それでも利用者がいるため、早めの討伐を依頼されている。
規模がどの程度か把握できていないため、オークを見つけてもすぐには討伐せず、泳がせて拠点を突き止めてから討伐する予定だ。
オークは繁殖力が化け物並みで、拠点を潰さない限り数が増える一方だからな。
今、早期に発見できたこのタイミングで根絶しないと、後々大変なことになる。
そんなことを考えながら進んでいると、目的地の街道に到着した。
ぱっと見ではオークの姿は確認できず、近くを探ってみてもそれらしき反応はない。
「うーん……ここのはずだけど、いないね!」
「近くを探ってみたが、気配はないな。もう少し進んでみるか?」
「もう少しここで待ちませんか? グレアムさんの気配探知は、弱い反応には気づきにくいですし……オークは近くにいる気がするんですよね」
珍しくジーニアが進言してきたため、その言葉を信じて待機することにした。
雑談を交えながら、南の街道で待機すること約一時間。
草木が生い茂る方角から、何かが勢いよく近づいてきているのを察知。
ジーニアとアオイも気づいたようで、すぐに武器を構えた。
「さすがジーニア! 早くも来たね!」
「弱すぎて察知できなかったパターンだな。助けられた」
「いえいえ。それよりも、気を引き締めましょう。倒さないように――を意識してくださいね」
「分かってる! わざと逃がすんだよね? ここは復帰記念に私にやらせて!」
アオイはそう言うと、近づいてくるオークに向かって突っ込んでいった。
草が深いためアオイの姿は消えたが、オークの叫び声のおかげで位置はすぐに把握できた。
しばらく暴れ回った後、Vサインをしながら戻ってきたアオイ。
この様子なら、もう怪我の心配はいらなそうだな。
「わざと逃がしたオークに、臭いつきのペイントボールをぶち当ててる! 草木についたペイントと臭いをたどれば、オークの拠点にたどり着けると思うよ!」
「動きも問題なかったし、心配いらなそうだな。拠点の掃討もアオイに任せていいか?」
「もちろん! 休んでた分、思いっきり暴れさせてもらうからね!」
アオイは手首を回しながら満面の笑みを見せると、オークの後を追い始めた。
もう依頼は達成したも同然だし、俺とジーニアはここで待っていてもいいのだが――。
久しぶりにアオイの勇姿を拝ませてもらうとしよう。
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。
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Web版をご愛読くださっている皆さまにも楽しんでいただけるよう、加筆修正を加えたうえでの刊行となっております。
ぜひお手に取っていただけますと幸いです。
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