ビッグブリッジの死闘!
アキラ視点
魔法馬車が橋に差し掛かったところで手綱を握り慌てて止める。
まだだ。
ここなら、まだ、2人を拾いあげられる。
ここは大きな石橋だ。
さっきみたいに、簡単に燃やすことはできない。
だが、罠は仕掛けられるかもしれない。
どうする?
先に行くか戻るか。
戸惑っていると、前方と後方の橋門が閉じ始める。
「しまった!」
「アキラのバカ!」
魔法馬車は孤立してしまった。
アレグロとソナタと連絡できない。
前方からゆっくりと長髪と短髪の2人の男が現れる。
馬車から降りて構える。
「さてとじっくりと料理してやるか」
「見事に罠にかかってくれたね」
「念のために聞いておこう。何の用だ」
「わかっているだろう?そこの秘書さん。クライスさんに用事があるんだよ。こちらに渡してもらおうか」
「嫌だと言ったら?」
「死んでもらおう」
2人同時にとびかかってくる。
エリーゼは攻撃魔法を使うことはできない。
俺だけで2人を相手にしないといけないのは重荷だ。
こんな絶体絶命のピンチのときに秘めていた最終兵器魔法を俺は心得ていた。
「出でよ!ウサモフ!」
ウサギ召喚獣を呼び出した。
「長髪の男をかく乱してくれ!俺はその間に短髪の男を仕留める!」
「モフモフ!やってみるモフ!」
ウサモフは長髪の男の方に跳ねていき、アイス魔法を浴びせる。
「な、なんだこいつは」
俺は俺で今のうちに短髪の男にアドバンスファイアーを浴びせかける。
男が唱えるのはマスターファイアー。
威力は相手が勝っていた。
エリーゼが手早く伴奏魔法を唱えて、威力を相殺する。
迎え火ね。
日本の歴史書の古事記に出てくるヤマトタケルの尊になったかのような気分だ。
火炎放射同士の戦いの勝敗をわけるのは、やはり風向きだろう。
エリーゼは、伴奏魔法をほどほどに止め、風の魔法を唱え始めた。
やぱり、こういうときにエリーゼは頼りになる!
俺の至らないかゆいところに手を届かせてくれる!
君と組めて良かった!
「くそっ!こいつら、魔法を自在に操りやがる!雑魚ではないのか?前情報と違う!」
敵が焦っているようだ。
「こうなったら、最後の手段だ。アサシンブレード!」
敵は、四方八方にナイフを飛ばす。
「し、しまった!」
俺やエリーゼだけではなく、クライスさんの方にも飛んでいく!
エリーゼの防御魔法は僕たち2人は守ることはできたが、遠方は守れない。
その時、「アイロンバリア!」
クライスさんは魔法を唱え、己の身を守りきった。
「なんだと?秘書がこんな防御魔法を使えるとは、それも事前情報になかったぞ!」
俺も驚いた。
クライスさんは魔法能力が低いという確かな筋からの情報があったからだ。
「敵を騙すなら味方から。こんな日が来るために、誰にも告げずひそかに魔法の特訓をしていたの」
「くそおっ!作戦は完璧だったのに、作戦立案の基礎となる情報が全部間違っていたとは……無念。命あっての物種だ。撤退!」
長髪と短髪はそれぞれ魔法を唱える。
「待てえっ!」
2人はテレポート魔法で消えた。
「もう、襲ってこないかな」
「さあね?罠がこれ以上仕掛けられていないことを祈りましょう」
俺たちは、橋門を開き、新聞社へ街へと向かった。




