花嫁は傷つけさせない!
サリエリ視点
「その場で跪け!」
脳波がスピーカーを経由し、機械音声が鳴り響かせる。
マシンガンを天に向かって連射した。
「きゃあっ!」
女の悲鳴があたりに響く!
この場の支配者は誰かを知らしめる効果としては十分だ。
「き、君は何者……いったい何のためにこんなことを……」
ナーシャの父が当然の疑問を呈する。
「俺の要求は2つだ。ひとつはこのくだらねぇ式を結婚をやめること。もう一つはウサギの召喚獣を俺の前に差し出すことだ」
あたりがざわめく。
「ウサギって何のことだね。我々にはなんのことだか。結婚式はこの村にとって大事なお祭りなんだ。やめるわけには……」
「ほほう。まだ危機感が足りないみたいだな」
機械に命令し、スピーカーから独特の音階が流れる。
機械音声だから人間には簡単には詠唱できない魔法も唱えられる。
「!!」
「お前の周りだけ空気を薄くした。10分もすれば意識は混濁し、やがて息絶えるだろう」
ふっふっふ、新婦の父の死とあっては式も台無しだ。
「どうして!どうしてこんなひどいことを!答えてサリエリ!」
「……驚いたな。どうして俺だとわかった。鋼のボディーを得たというのに」
「あなたのことだったら、私にはなんとなくわかるの。ひどいことはやめて!」
「わかってるのだったら、式を今すぐ取りやめろと言ってるだろ」
しばしの沈黙、膠着状態が訪れた。
風が落ち葉を吹き飛ばす。
沈黙を最初に破ったのは新郎だった。
「ナーシャのことは傷つけさせない。君がナーシャにとっての何かは知らないが、お義父さんにひどいことはやめるんだ!」
「ケッ!女の前でカッコつけやがって!ちょうどいい。お前をボロボロにしてやれば、ウェディングドレスは赤く染まる」
「させるかっ!」
何かを詠唱しているようだ。
ベーシックウォーターか。
「なるほど、水で電気系統をおかしくしてしまおうという作戦か。頭がなかなか切れるらしい。だが、このボディーは防水仕様だっ!アドバンスファイアー!」
「ファイアーシールド!」
ナーシャがオルゴの前に防壁を張る。
そのレベルのシールドなど、すぐに吹き飛ばしてやる!
「全身やけどを負うのも時間の問題だ!さあ、さあ、どうする。式を取りやめるか。死を選ぶか」
究極の選択をやつらに突き詰めたその時だった。
天地が逆転した。
電気系統に異常が発生する。
それが、何者かに吹き飛ばされたと気づいたのはしばしの時間が経ってからだった。
「何者だ……!」
「式に遅刻してごめんな!ナーシャ!だが、ピンチには間に合ったみたいだ」
俺の前に姿を現したのは、村で一度見たことのある顔だった。
「アキラ!」




