召喚ウサモフ
アキラ視点
僕が、ベーシックファイアーを唱えようとすると魔法の盾を構えた。
最後まで唱え、放つが効いていない。
「そんな初歩魔法がこの俺に効くとでも思っていたか?」
ペッパーは短く魔法を詠唱すると三本指を立て腕を高らかに上げる。
「きゃあっ!」
ソナタが、エリーゼが、植物の蔦で束縛される。
「これで戦えるのはお前だけになった。成績表を見たところ、お前が一番劣等生のようだからな。最後に残しておいたわけだ」
くっくっくと不敵の笑みを浮かべる。
ベーシックファイアーが効かないということか。
それなら、別の魔法を使うしかない。
「かまいたち!」
「無駄だ!」
向こうもかまいたちを唱えて風の刃を相殺する。
「そんな小学生のレクリエーションレベルの魔法を使ってくるとは、よほど切り札がないと見える。とりあえず、お前から死んでもらおうか」
もう、切り札は僕に残されていないのか?
僕の使える魔法。
僕の使える魔法。
待てよ。
一つだけ、まだ、試していないものがあることに思い当たった。
詠唱をはじめる。
「悪あがきか?貴様に使えるような魔法で俺に効くようなものは……」
「出でよ!召喚!ウサモフ!」
魔法陣のような半透明の意匠が僕の目前に飛び出る。
「ようやく呼んでくれたね!待ちくたびれたよ!」
野ウサギが野に解き放たれた。
耳をピンと立て、全力疾走し、そして、ペッパー軍曹に体当たりする。
「なにっ。ぐっ。さすがに物理攻撃のバリアは……油断した」
全力疾走をし、ウサギ特有の切り返しターンをし、再び突撃する。
「ぐふっ!」
体当たりで敵のバリアの魔法が解けたのを、魔法の帽子が脱げたのを確認する。
「今よ!」とエリーゼが叫ぶので「言われんでもわかってる!」と返す。
ベーシックファイアーを詠唱し、ペッパー軍曹にぶつける。
「ぐああああああ!」
ペッパー倒れこむと、エリーゼのアレグロのソナタを縛り付けた蔦が消えていくのを確認する。
今度こそ勝利したんだ。
緊張感がぬけて一気にへたりこむ。
「よくやったよ!」とエリーゼが抱き着く。
ちょ、ちょっと待って。
可愛い女の子に抱き着かれたら僕の男の部分が……。
僕自身が興奮しているのを見て彼女がにやりと笑ったのを見ると急に恥ずかしくなった。
この小悪魔め。
「あんたたちやっぱり夫婦ねえ」とソナタに冷やかされる。
「ちがーう!」と反論するもにやにや笑っている。
「おーい!大丈夫かー!」
遠くから軍人たちが走ってくる。
「遅いっつーの!!」
アレグロが叫ぶとどっとあたりは笑いに包み込まれた。




