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逆襲の劉封 孔明に殺されてたまるか!  作者: 巻神様の下僕
第七章 南蛮制圧戦

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第八十八話 忠義の盃

 劉華に子供!?


 そんな筈はないと思っていたら劉華が赤子を抱いたまま、トコトコと俺に近付いてくる。


「ほらほら兄様。兄様の子ですよ」


 へ? 俺の子?


「もう、早く帰って来てって言ったでしょ!」


 俺の子と言われてフリーズしていた俺に尚香が声を掛ける。


「いや、だって、お前。そんな事、一言も」


「私も確証が有った訳じゃないの。文を送ろうかとも思ったけど、心配させるだろうからって甘夫人に止められて。ほら、抱いて上げて。あなたと私の子よ。女の子。名前考えてね?」


「はい。兄様」


 俺は劉華から赤子を押し付けられる。


 恐る恐るその赤子を抱き上げて思う。

 なんて儚げな存在なんだと、そして同時に暖かいぬくもりを感じて、生きていると主張しているようだと感じた。


「俺の、子供」


 俺はそれだけの言葉しか出せなかった。



 その後の事は朧気にしか覚えていない。


 俺と尚香の子は俺が抱いているとしばらくして泣き出し、子どもを尚香に取り上げられたのは覚えている。

 その後に劉備と甘夫人、劉春、阿斗が来て、身内だけの宴をしたようだ。

 その時に何を言ったのか覚えていない。

 ただ皆が笑顔で食事を摂り、劉備と俺と陸遜は浴びるように酒を飲んだようで、翌朝物凄く頭が痛かった。


 凄く嬉しかった。


 ただそれだけは覚えている。


 俺は娘の名前を『杏』と名付けた。



 翌日、劉巴らに祝福され、からかわれながらも曹魏と孫呉の話を聞いた。


 曹操に派手な動きは無かった。


 ただ、配下に任せて北方の匈奴族、鮮卑(せんぴ)族の討伐を行ってはいたようだ。


 それと、(ふく)皇后が亡くなった。


 伏皇后は曹操暗殺計画に従事したとされ殺された。宮廷では誰も彼女に味方する者も無く、皇帝ですら彼女を擁護出来なかった。

 そして伏皇后に連なる数百名が殺されている。


 これは歴史通りの出来事だ。


 この後に、既に献帝の後宮に入っていた曹節(そうせつ)が皇后に立てられ、曹操は皇帝の外戚となったのだ。


 劉巴はこの事を『曹家による天下簒奪も近い』と嘆いた。



 孫呉も動いていない。


 時折、合肥に偵察程度に兵を出したり、荊州北部の宛に辺りに兵を出したりして曹魏を挑発している。

 これは誘い出しを狙ったものだと思われるが、どれも不発に終わっている。

 やはりそう簡単に勢力図が変わる事はないようだ。


 ちなみに孫権から子供が出来た御祝いの品と文を貰っている。返事は適当に返した。

 あいつと馴れ合うつもりはない。


 それと陸遜には陸績(りくせき)から御祝いの品と文が届いていた。

 一族仲が良いのは良いことだ。



 曹魏、孫呉とも大戦をする事もなく年を越した訳だが、安心は出来ない。


 今後は孫呉と連携して曹魏に当たらなければならない。


 俺達蜀は武都郡、陰平郡を得たが、そこはほぼ無人の土地だ。

 これからの発展に期待出来る土地とは思えない。

 この土地は北伐の足掛かりだ。


 そして南蛮制圧によって益州南部が平穏を取り戻し、その土地で取れる食物と鉱物資源は豊富で、さらに交州との交易路が直接繋がり蜀はますます繁栄するだろう。


 屈強な南蛮兵と糧食を得た事で、大規模遠征も可能に成った。

 南蛮遠征で試した『背負子』と『木牛』はその性能を発揮し、それに開発中の『流馬』も使える目処が立った。

 それにアレの開発も終わっている。


 北伐の準備は着々と進んでいる。


 今年はちょっと無理だが、来年には北伐に動けるだろう。


 いよいよだ。


 いよいよ北伐が目前に迫っている。


 だが、事は簡単には行かないだろう。


 曹魏の主力兵力は二十万を越える。

 そして、方面軍として夏候淵が数万、北方方面にも数万、南方の合肥、宛にも数万の兵、さらにこれに加えて各地に居る屯田兵を合わせると総兵力は五十万を越える。


 それに対して孫呉は荊州北部襄陽に四万、揚州建業に十万が常駐している。


 俺達蜀は荊州南郡に四万、益州に十万、漢中に三万だ。


 孫呉はまだ揚州南部に数万の兵が居るが、山越の抑えで使えず、俺達も交州、南蛮の兵が居るがこれももしもの為の抑えであるために使えない。


 兵力差が有りすぎて目眩を起こしそうだ。


 孔明はこれよりも劣勢な状態でよく北伐なんて出来たなと感心するよ。


 とにかく曹魏に勝つためには同時侵攻、多方面作戦が有効だ。


 と言うかそれしかない!


 孫呉が合肥、宛に攻め込み、俺達が長安に攻め込む。

 曹魏はこの迎撃に兵を裂かなければならない。

 三つの侵攻が全て上手く行くとは限らないが、どれか一つでも成功すれば良いとは思う。


 問題はタイミングと曹魏の主力が何処に来るのか?


 孫呉は直ぐにでも攻め込む準備が整っているが、俺達の北伐は準備に時間が掛かる。

 同時侵攻のタイミングを合わせる為には俺達が先に動いたほうがタイミングを合わせやすい。


 そしてその場合、先に動いた俺達の方に曹魏の主力がやって来るだろう。


 曹魏の主力を率いるのはもちろんあの男『曹操』だ!


 今でも思い出す事が出来る曹操との初対面。

 あの重苦しいプレッシャーを放つ男が大軍勢を率いてやって来るのだ。

 想像するだけで冷や汗が出てくる。


 劉備はいつもこのプレッシャーを感じながら戦っていたのかと思うと正直凄いと思う。

 それに孫権もな。いつも勝てないけど。


 年明けが済めば、三国入り乱れての大戦が始まる。


 最後の勝者に名乗りを上げる為にも負けられない!



「劉巴殿。少しよろしいでしょうか」


「何かな。陸遜殿」


「別室でご相談が」


「……分かった」


 おい、お前ら。俺が気合いを入れている時に内緒話か?

 俺も入れてくれよ?


「悪いけど孝徳には聞かせられない。また今度」


「ではな。孝徳。法正、後は任せる」


「任されました」


 俺を置き去りにして二人は行ってしまった。


 何だよ。気になるじゃないか。


「では孝徳様。例の策の詰めに入りましょうか」


「あ、ああ」


 俺は法正に促されて北伐の作戦を決めていく。

 北伐で取れる作戦は多くはないが、それでも勝率を上げる為に色々と考えなければならない。

 それにはそろそろ徐庶に出て来て貰わなければならない。


 今の徐庶は中立派だ。


 出来れば俺の派閥に入って欲しいと思って居るが、本人が俺に会いたがらないので説得の機会を逃している。

 どうにかしないと行けないとは思っているのだがな。


 謀議は夜まで続き、帰宅が遅くなってしまった。


 屋敷に戻ると皆、寝ていた。

 そして俺は娘杏の寝姿を見ていた。

 その隣では尚香と華が一緒に寝ている。その姿は仲の良い姉妹に見える。

 俺もそろそろ寝ようと思っていたその時、侍女から来客が来たと知らされた。


 こんな遅い時間に誰だろうと思ったら、 客は徐庶だった。


 客間に通された徐庶の顔を見ると何か決心してやって来たのだと知る。


「久しぶりだな。元直」


「お久しぶりです。孝徳様」


 どこかぎこちない会話でちょっと緊張している。

 何を話そうかと思ったが、言葉が出ない。

 それは徐庶も同じようだ。

 しかし先に話したのは徐庶だった。


「お子が産まれた御祝いを直接言いたかったのです」


「そうか。ありがとう」


「いえ、遅くなってしまい申し訳ないと思ってます」


 娘が出来た祝いの言葉は口実だろう。

 そうでなければこんな遅くにはやって来ない筈だ。

 そして徐庶は話し出した。


「母に、郷里に帰ろうと言いました」


「そうか」


「すると母は言うのです。恩を返さず、忠も尽くさずどうするのかと」


「……」


「孝徳様。私はあなたに忠を尽くしたいと思っていました。ですが孔明は私に益州攻めの前に言ったのです」


「なんと?」


「劉孝徳は剛勇にして智に長けた良将であると、しかし、その剛勇さは次代の主では御せないだろうと。やがては騒動の元になる。袁紹、劉表の例を見ればそれは明らかであると」


「……」


「私は悩みました。あの当時、劉備様は後継に付いては未だにはっきりとは言っておりませんでしたが、あなたと阿斗様が争う事がないようにとのお考えでした。そして益州攻めが終わった時、孔明は劉備様にはっきりとあなたの危険性を説いていました。劉備様は一時あなたを除くべきではとお考えになったそうです」


 むちゃくちゃ危なかったのか俺は。


「あなたはまだ狙われております。今ならまだそれを回避する術が御座います。どうなされますか?」


 どうする? そんなの決まっている!


「俺は逃げない」


「ふふ。あなたはお強く成られましたな」


「元直。忠告をしに来ただけか?」


「いえ。孝徳様の覚悟を聞きたかったのです。孝徳様の覚悟を聞いて私も覚悟を決めました。此度の北伐。お供させて頂きます」


「元直。良いのか?」


「あなたは危なっかしくて見ていられません。遠くで見ているよりは近くで見ているほうがましです。それに母の忠告でも有りますから。忠を尽くさせて貰います」


「ありがとう。元直」



 その夜、俺は徐庶と酒を酌み交わした。


 俺は徐庶とまた一緒に戦えると喜んだ。

これにて第七章終了です。


次はいよいよ北伐篇です。


誤字、脱字、感想等有りましたらよろしくお願いいたします


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