魔法対戦でも目立ちたくない③
控室にいるフェイルを見に行くと、魔力欠乏でベッドに寝転がっていた。
どうやら僕が教えた魔法を全力で放ってしまったようで威力もさることながら魔力消費も大きかったらしい。
もう少し控えめな魔法を創ればよかったと今更ながら後悔した。
フェイルがあの魔法を放った時、てっきり相手は死んだのではないかと思ったくらいだ。
それほどまでに衝撃が大きかった。
結果は腕輪破壊と気絶だけで済んだようだが、教えた僕は気が気でなかった。
まあでもあの魔法のお陰でフェイルは勝利したし一概に悪い事ばかりではない。
「お疲れフェイル。まだ魔力は戻らないのか?」
「ん……?ああマリスか。フッ、まだ俺には早かったらしい。魔力回復薬は飲んだが全快には程遠いな。」
無理やり笑顔を作っているがやはりしんどそうだ。
僕は1度も魔力欠乏になった事はないが、なった人曰くとても辛いらしい。
身体は重く息苦しいのがずっと続くそうだ。
今のフェイルもそんな症状なのだろう。
「次の試合はきつそうだな。」
「ううむ、いや、それまでにはある程度回復しているはずだ。不戦敗だけは避けなければならん。」
そうは言うが今の状態では多分出ても負けるだろう。
それに運良く勝てたとしてもトータルで後2回戦わないといけないのに切り札を使ったのは早かった気がする。
「マリスの出番は……まだか?」
「今は委員長が出てるよ。その次が僕だ。」
「そうか……俺は兄に良い所を見せられただろうか。」
「見せれたと思うよ。というよりみんな驚いていたぞ、なんだあの魔法はって。」
「フッ、ならば良かった。……少し眠る事にする、来てもらって早々に悪いな……。」
フェイルが疲れて寝てしまったので、僕は自分の控室に戻った。
今はまだ委員長が出たばかりのはずだ。
少しだけ僕も仮眠を取ろうかと思ったら、急に歓声が大きくなった。
委員長が良い所を見せたのだろうか?
そう思っていると実況の声が聞こえてきた。
「おおっとー!リスティア選手の腕輪が壊れたー!勝者、リー選手!!!」
委員長が敗れた?
そんなバカなと思ったが、良く考えれば相手は4年生だ。
1年生が勝てると思い込んでいたのが間違っていた。
しかし、委員長は学園魔導位でもかなり上だったはずだけど。
試合が始まってそんなに時間が経っていないのに決着が着いたということは相手が相当強いのかもしれない。
せっかく寝ようと思っていたのに、試合が終わってしまったのですぐ準備を始めた。
「さあ準準決勝もこれが最後だー!なんと!我らが生徒会長キャロル・ドレッドムーン選手の登場です!!対する相手は決闘騒ぎで学園中の生徒を驚かせたあのマリス・レオンハート選手!!これは熱い戦いが見られるぞー!!」
何?
キャロルさん?
嘘だろ、初戦でキャロルさんと当たるなんて僕もツイてないな。
相手は学園魔導位2位だ、手加減なんてさせてもらえないだろう。
ステージに上がると凄い数の歓声に包まれた。
キャロルさんの人気も相まってか揺れるような歓声に少しだけ気圧される。
ただ実況の言葉はいただけないな。
なんだ学園中の生徒を驚かせたって。
そんな事言ってしまったら外国の知らない人が謎の期待を持ってしまうじゃないか。
先にステージへと上がったキャロルさんは自信満々な表情だ。
「オーッホッホ、マリスさん、まさか貴方と初戦で当たるとは思いませんでしたわ!」
「僕もですよ。こんな強い人と当たるなんてツイてないです。」
「ワタクシ楽しみですわ、貴方は何処か力を隠しているような……そんな印象がありましたから。」
おっと、これは不味いぞ。
ちょっと手を抜いていい感じの所で負けてもいいかなと思っていたが、この感じだと手を抜けば確実に見抜かれる。
それが公になればキャロルさん相手に手を抜ける程実力があると捉えられてもおかしくはない。
もしくはただのイキり野郎と思われ……いやないな。
決闘を見てた人なら絶対にそんな事は思わないだろう。
「それでは、試合開始です!!!」
実況が合図をするとキャロルさんは魔力を練り始めた。
決闘の時みたいに速撃で倒しても良かったが流石にこの場でそれをやれば興ざめになるし、余計に目立つから避けた。
「あら?マリスさんは魔力を練らないのですか?もしかして魔力の質が高いから練らなくても相応の魔法が使えるとか?」
「い、いやそんなことないですよ。緊張しててボーっとしてました。」
「ではお先に失礼して。酸の雨降る宵闇よ!」
いきなり中級魔法か。
結構本気みたいだな。
これを真正面から受けるような舐めプはしない。
空から降り注ぐ酸の雨が青空を遮りステージを暗く染め上げる。
この魔法は本来単体相手に使う物ではない。
集団に向けて放つと視界が制限される上に酸のダメージまで付いてくるといった嫌らしい魔法である。
それをこのタイミングで放ったという事は次の魔法で決めて来る可能性が高い。
「雷の防護膜。」
そう判断した僕は自身を覆う雷の結界を創り出した。
雷に弾かれた酸の雨が地面を溶かしていく。
次第に平らだったステージはデコボコになっていった。
雨が止むと案の定キャロルさんから大きな魔力を感じ取れた。
魔力量からして上級魔法だ。
今の魔法では防ぎきれない。
ならばと、雷の結界の中で別の魔法を唱えた。
「雷の防護膜×10。」
全部で11層にもなる雷の結界だ。
これならばキャロルさんと言えども突破は難しいだろう。
それにこれは今の僕にとって有難い魔法でもある。
雷の結界を事前に張っておいたおかげで何重にも張られているとは気づかれないのだ。
観客の目を意識した素晴らしい行動。
僕は自分で自分を褒めた。
そんな余裕をかましているとキャロルさんが魔法名を叫んだ。
「いきますわよ!!!赤い月の夜に!!!」
見たことのない魔法だが、空に赤い月が浮かんでいる所を見ると範囲魔法のようだ。
なるほど、僕が万一逃れても必ず当たるよう範囲魔法を選んだらしい。
しかし月が徐々に赤みを増していく。
妙だな、月が落ちて来る魔法じゃないのか?
どんどんと赤くなり、次第に燃える様な真っ赤な月になった。
「マリスさん、全力で防御する事をおススメ致しますわ。」
キャロルさんが忠告してきた。
これは、不味いかもしれないな。
そう考えたのも遅かったか、月から赤い熱線が僕目掛けて降り注いだ。
「これはワタクシの家に代々伝わる継承魔法ですわ。単体に特化した攻撃魔法!!例え神殿魔導師の使う最硬の結界光の聖域でも穴を開けます事よ!!オーッホッホ!!」
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