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虹色魔導師は目立ちたくない  作者: プリン伯爵


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魔法対戦でも目立ちたくない②

音を置き去りにした白い破壊のヴェールがフィーナを包んだ。

何が起きたのかも分からない。

理解することすら許されない死の雑音は一瞬で会場を瓦礫に変えた。

フィーナの風の鎧などまるでなかったかのように消し飛んだ。


もちろん直撃したフィーナが無事であるはずもなく壁に叩きつけられ意識を手放している。

しかし誰よりも驚いていたのはフェイルだった。


訓練時では魔力を抑えて放っていた為今のように全力で魔力を込めた事はなかった。

故にあまりの威力にその場で固まってしまっていた。


「しょ、勝者フェイル・ワーグナー選手!!今のはなんだぁ!?見えない空気の塊をぶつけたのか!?フィーナ選手は無事なのでしょうか!」

実況の声を聞いてやっと正気を取り戻したフェイルはすぐさまフィーナの元に駆けた。

腕輪があると言えども先程の破壊的な魔法は人を死に至らしめるに相応しい威力であった。



フェイルが駆けつけるとフィーナはぐったりと地面に倒れ込み気絶していた。

息はしているようで、幸いにも死者を出すような事にはならなかったとホッとする。


その後救護班が駆け付けフィーナは連れて行かれた。

命に別状が無い事が分かると観客も胸を撫で下ろした。

流石に学生同士の戦いで死人が出るのは想定外の事態になる。

それも各国のトップが集うこの場で死者を出せば帝国がなんと言われるか分かったものではない。


「凄まじい衝撃でしたね!先程の魔法はワタシも知りませんが、フェイル選手の切り札のようです!!皆様盛大な拍手を!!」

会場を揺らすほどの歓声と拍手を一斉に浴びながらフェイルはその場を後にした。

というのも既に立っているのも辛かったからだ。


マリスが教えた魔法は魔力のコントロールが難しく膨大な魔力を消耗してしまい、立っている事すら難しい程であった。

それでも倒れなかったのは兄である騎士団長が見ているからだ。

これで少しは実力を見せつけられただろうか、とフェイルは心の中で問いかけながら控室に戻った。



VIP席では先程の戦いをしかと目に焼き付けていた騎士団長レオニスは満面の笑みであった。

それもそのはず、弟では勝てないであろう相手を圧倒したその力は自身さえも倒せるのではないかと思う程であったからだ。


「あれは……なんという魔法なのだ?」

「私が知る訳ないじゃないですか。それより私の可愛い弟子がボコボコにされたのですが。」

「それは、鍛え方が足りんということだ!!……しかし気になるな、なんだあの魔法は。」

レオニスは隣にいたシャーリーに問うたが適当に返された。

不安そうな顔で弟子が運ばれていく様子を見ており、そんなものどうでもいいと言わんばかりの返事だった。


「誰か知っている者はいるか?」

周りにいた騎士達にも聞いたが全員首を振る。

これほどの精鋭達が知らない魔法となるとかなりレアなケースではあるが創造魔法である可能性が高いと考えたレオニスは手を顎にやり唸った。


「うーむ、フェイルは創造魔法など使えないはずだが……誰かに師事したのだろうか?」

「知りませんよ。本人に聞いたらどうですか?」

「む?それはダメだ!!私が知らないなどフェイルに知られれば恥ずかしいではないか!」

変なプライドだな、とその場にいた誰もが思った。

レオニスは完璧で最強でなければならない。

フェイルからはそう思われており、その幻想を壊すわけにいかないと昔から弱い所を見せたことはなかった。

それ故に知らないから教えてなどとは口が裂けても言えないのであった。


「ならばクレイ殿に聞いてこよう。」

皇帝の傍に控えるクレイに近付き質問する。


「クレイ殿、先程の魔法、何かご存知か?」

「ん?ああレオニス団長か。いや、残念ながら私にも分からないな。多分創造魔法だとは思うが確信はない。」

「クレイ殿でも分からぬとは……。」


帝国最強のクレイですら分からないならばもう誰も分からないだろう。

レオニスは項垂れて元の場所へと戻った。

そんな落ち込んだ彼にシャーリーは話し掛ける。


「どうでしたか?何か分かりました?」

「……いや、クレイ殿も分からないらしい。何だというのださっきの魔法は……。」

レオニスは気になって仕方がなかった。

1度気になってしまえば分かるまで他の試合に集中出来そうにない。

しかし、レオニスはふと思い付いた。

フェイルには最近仲良くしている者達がいると聞く。

その者達に聞けば何か分かるのではないだろうか。

そうと決まれば早速……と動きかけた所でシャーリーに止められた。


「何をするつもりか知りませんが護衛の貴方が陛下の近くから離れてどうするんですか……。」

「む?今私は知らなければならない事が出来たのだ。通したまえ。」

通せんぼするシャーリーに若干の苛立ちを覚えたが静かにそこからどくよう諭す。


「ふざけた事を言わないで下さい。ほら、次の試合が始まりますよ。」

「む!私は今気になる事が出来たのだ!!」

「何をするつもりなんですか!今度は!!」

いよいよキレたシャーリーに気圧され少し後ずさった。

シャーリーはいつも諭すような口調を使うが怒ったら怖い。

それはもう何度も見てきたから良く分かる。

レオニスは黙って自分の席に座ることにした。

これ以上ワガママ言うなら剣を抜くぞと言わんばかリの眼光で睨まれれば流石のレオニスも大人しくすることにした。



「うーむ。まあ後で聞くことにしよう。」

「そうしてください。」

そんなやり取りをしていると、実況の声が聞こえてきた。


「お次は1年生の委員長ことリスティア・アルバート選手と4年生のリー・ライカン選手です!」


アルバートの名前が聞こえると歓声は更に大きくなる。

四大公爵家の名前はやはり注目の的であるようだった。


「それにしても、これで学生か。将来が末恐ろしいものだ。」

「そうですね、卒業する頃には我々の仲間になる者も多いと思いますよ。」


グランバード学園の魔導師達はレオニスらが認める程の実力を持つ者ばかりだ。

各国から来ている者達に見せる理由の1つに帝国が魔法大国だという事を知らしめる政治的な理由もあるのだろう。


「ふっふっふ、楽しみだな。次はどんな魔法を見せてくれるのやら。」

レオニスは一つの娯楽として楽しんでいた。

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