魔導大会でも目立ちたくない⑩
ああ、憂鬱だ。
これから魔法対戦が始まると思ったら気分は憂鬱になる。
これだけ沢山の人目に晒される事なんて今まであっただろうか。
それも国内だけじゃない、外国から見に来た人らもいる。
そんな中で僕がポカをやらかしたら、もう終わりだ。
グランバード学園に虹色魔導師現る、なんて見出しで新聞が出回る事だろう。
そんな事を考えていると、実況の声が聞こえてきた。
「さあ皆様!!おまたせしました!!これより!魔法対戦を始めます!!!」
まあ一戦目で出る訳じゃないからまだマシか。
確かトップバッターはガウェインさんが出場するはずだ。
どんな感じで戦うのか一応見ておいた方が参考になるかもしれない。
「さあ、最初の対戦者はこちら!学園魔導位1位に君臨するガウェイン・マギクラッド選手だぁ!!!対する相手はなんと1年生!カイル・アストレイ選手です!」
ああ、これは荒れるな。
主にカイルが。
一番最初にガウェインさんと当たるなんてアイツもツイてないな。
勝てる確率なんてほぼ0に等しいのに自信満々の表情で出てきた。
腕組みなんかしちゃって、どうやらガウェインさんが先輩だという事も忘れているようだ。
「ふん!お前がこの学園最強か。私の相手に相応しい!手を抜くなんて真似はするなよ?正々堂々と戦いたまえ。」
おお、啖呵まで切ってるぞ。
ガウェインさんはどんな反応をするだろうか。
「……なんだお前?アストレイって言えば四大公爵家の一人か?良く分からんが手加減抜きでいいんだな?」
「当たり前だ!本気で戦ってこそ魔法対戦というものだろう。それとその口の利き方、なっていないな。」
「……あ?そんなに死にてぇなら殺してやるよ。」
ああ~ガウェインさんを怒らしたな。
どうもカイルは咬ませ犬に見えて仕方がないな。
一応この場では準準決勝からの戦いを見せる事になる。
ここに出られるという事は少なくとも予選を勝ち抜いて来た猛者という事だ。
という事はカイルもそれなりに実力はあるはず。
しかし相手が悪かった。
ガウェインさんは自他共に認める最強だ。
次期十二神とも言われる程に実力がある。
そんな人を相手にあそこまで啖呵を切れるカイルは、逆に凄いのかもしれない。
この魔法対戦では万が一にも死者が出ないように全員魔道具の腕輪を着けている。
致命傷となる一撃を受けた時ダメージを肩代わりしてくれる代物だ。
ただ痛みは感じるから、腕輪が砕けるような事があれば恐らく気絶するだろう。
お互いに相手の出方を見ているのか、2人共動きはない。
にらみ合っていると思ったら、最初に動いたのはカイルだった。
「影から飛翔する刃!!」
カイルの影が動き黒い刃が飛んだ。
初手は中級魔法でガウェインさんの腕試しをしようとしたようだがそれは悪手だ。
そもそもガウェインさんに対して闇属性魔法で勝てる訳がない。
「……ふざけているのか?なら死ね死者へ送る手向け。」
ガウェインさんの影からいくつものどす黒い腕が伸びカイルへと迫る。
カイルの魔法はその腕に阻まれ霧散した。
「な!なんだその魔法は!!」
異様な魔法にカイルは後ずさる。
すぐに結界魔法を展開したが、その結界を壊さんと複数のどす黒い腕が纏わりついた。
「ひぃ!!」
情けない叫び声をあげるが、腕は呆気なく結界を破った。
そのままカイルの身体を掴むと身動きが取れなくなった。
「ぐっ!離せ!!!この魔法はなんだ!!!」
僕も見た事がない魔法だが、ガウェインさんは闇属性に関して言えばエキスパートだ。
マイナーな魔法なのだろう。
カイルを掴んでいた腕はそのまま身体を引きちぎらんと外方向に引っ張り始めた。
声も出せないのかカイルは悲痛な顔をしながら必死に抵抗する。
しかし抵抗むなしく引っ張られ続けると、パキンッと金属が割れる音が響いた。
「そこまで!!!」
審判が叫ぶとガウェインさんの魔法はすぐさま消えた。
膝から崩れるように倒れ込んだカイルはピクリとも動かない。
どうやら引っ張られすぎて痛みが限界を超えたらしい。
もし腕輪がなければそのまま四肢をバラバラにされて死んでいた事だろう。
闇属性魔法は恐ろしいモノが多いと聞くが実際に見るとなかなかエグイ魔法のようだ。
「勝者ガウェイン・マギクラッド!!」
歓声はあまりない。
気持ち悪い魔法だったのとカイルが何も出来ず敗れた事で観客は声を大にして叫ぶことが出来ないみたいだ。
カイルは可哀そうだがガウェインさんに喧嘩を売るのが間違いだったな。
スンとした表情のガウェインさんがステージを降りると観客はホッとした表情を見せていた。
やっぱり怖い印象が強いのだろう。
「まさかの一撃!!!カイル選手は成すすべもなく敗れてしまったぁ!これが一位の実力というのかぁ!!!!」
実況はとても興奮して先程の戦いを振り返っていた。
魔導師目線で見ればガウェインさんは既に魔導師として出来上がっている。
これは各所からスカウトされるだろうな。
一戦目はあまりに呆気なく終わってしまったがその後に続く2戦目3戦目は割と盛り上がっていた。
僕は良く知らない人達が出ていたのであまりしっかりは見ていなかったが多分先輩達だろう。
一年生でまだ残っているのはフェイル、委員長、そして僕だけだ。
他の選手を知らないのも無理はない。
4戦目はフェイルが出てくるはずだ。
これはしっかり見ておきたい。
と、その前に戦いを控えたフェイルはどんな面持ちでいるのだろうと僕は控室に向かった。
控室に入るとフェイルはやる気に満ち溢れた表情で自身の剣を磨いていた。
俺はやってやるぜと言わんばかりの表情だ。
「フェイル、緊張してないのか?」
「ん?おおマリスか!そうだな、緊張していないと言えば嘘になるが……今は全力で戦いたい気分だ。」
どっかの戦闘民族みたいな事言ってんな。
まあやる気があるのは悪い事ではないけど。
「負けるなよ、相手は誰か知らないけど。」
「相手は先輩だ。胸を借りるつもりで挑戦したいところだな。」
「花を持たせてくれるんじゃない?」
「いや、それはない。この魔法対戦は成績にかなり響く。先輩となれば将来を左右する事になるはずだ。そんな中で後輩に花を持たせようなんて酔狂な人はいないだろう。」
なるほど。
てっきりフェイルは公爵家の人間だし先輩も気を使って勝たせてくれるんじゃないかと考えていたけど甘い考えだったようだ。
「では行ってくる!!!応援頼んだぞ!!!」
ステージに向かうフェイルの背中は心なしか大きく見えた。
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