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虹色魔導師は目立ちたくない  作者: プリン伯爵


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魔導大会でも目立ちたくない④

帝城、謁見の間。

部屋を彩る赤の絨毯が引かれ、その上に一人の男が膝を付いて頭を垂れていた。

壁際には近衛兵が並び立ち、各々槍や剣を持って微動だにしない。

ガイウス皇帝は玉座に腰掛け目の前に傅く男を見つめていた。


「陛下、帝国西部よりクレイ・グレモリー只今帰還致しました。」

「ご苦労。守備はどうだった?」

「国境の守りは万全です。私の代わりに別の十二神を置いてきましたので。被害は多少出ましたが陛下の支援によりドレッドムーン領はなんとか持ち堪えました。」

「ふむ、ならば良かった。少し休みたまえクレイ。」

立ち上がった男は歴戦の魔導師を思わせる出で立ちをしていた。

片目に眼帯を付け、もう片方の目はギラついている。

戦場から帰還したばかりだからかまだ戦意が残っているようにも見えた。


「では、本日は休ませて頂きます。」

「うむ、構わん。明日から帝都の守りは任せるぞ。」

「ハッ。」

クレイは短く返事をすると両手で襟を摘む動作をして、踵を返し謁見の間から出て行った。

王国軍が引いてくれたお陰で帝国最高戦力を戻らせることが出来たとガイウスはホッとする。


ガイウスは私室に戻ってもまだ皇帝たる態度は崩さなかった。

謁見の間でクレイの見せた動作、襟を両手で摘むというのは昔から2人で話したい事があるというサインでもあったからだ。


しばらく部屋で待っているとドアをノックする音が聞こえた。

入るよう促すと先程謁見の間で見たクレイが入室してくる。


「陛下、聞きたいことがありましたので久しぶりにあのサインを使いましたよ。」

「ふふふ、余も久しぶりに見た気分だ。それで?話というのはなんだ。」

クレイが話す内容などなんとなく想像がつくが知らないていで話し掛けた。


「狐面の男の事です。」

まあそれだろうなと予想していたガイウスは準備していた言葉を投げかけた。


「あの男は帝国が内密に保持している戦力、といった所だ。殆どの者は顔も知らぬ。」

「ほう、私も知らない事があるとは。宮廷魔導師となって長いですがいつの間にそんな人材を手に入れたので?」

クレイは狐面の男が気になっており、何者かが知りたい。

少なくともヒントくらいは欲しいと暗に訴えかける。


「流石に余もおいそれと言えん。ただ、そうだな。少なくともこの帝国で彼ほどの力を持つ者はおらんだろう。」

「それは……私よりもですか?」

現在、帝国最強はクレイだ。

皇帝陛下の言い方だとクレイよりも強いと聞こえる。

そこが気になったのかクレイは更に畳み掛ける。


「私以上となると、五色魔導師、いや、六色が現れたと?」

「…………。」

ガイウスは沈黙する。

言っていいものかどうか、判断に困っていた。

万が一彼に正体を教え、それが広まれば確実にあの子は帝国から出ていくだろう。

その為言い淀んでしまった。


「まあ詳しくは聞かないでおきましょう。ですが、有事の際はまた力を貸してくれる、という認識でよろしいのですか?」

「そうだな、彼が帝国に協力的である間は力を貸してくれるはず。だが彼の事は極秘である。くれぐれも言いふらす事がないよう気を付けてくれ。」

「陛下がそこまで言うとは……本当に五色以上の魔導師だという信憑性が高まりましたよ。出来れば会って礼をしたいところですが今は辞めておきましょう。」

クレイにしてみれば、手が回らずいいようにやられていたドレッドムーン領を救ってくれた狐面の男には感謝しかなかった。

それに王国最強、四天の一人、炎天のムーアを捕縛したと聞く。

そんな男に興味が出ないはずがなかった。


「すまんな。だがいつかは公表しなければならない時が来るだろう。その時が来るまでは待ってくれ。」

「陛下がそう望むのであれば私は何も言いません。聞きたかった話は以上です。」

クレイが聞き分けのいい者で助かったとガイウスは内心安堵した。



クレイがガイウスの部屋から出ていくと一際大きなため息を付いて背もたれに身を任せた。

正直、いくら虹色魔導師とは言え炎天を捕縛できるとは思っておらず最初に報告を受けた時は飛び上がる程の衝撃を受けたくらいだった。

それほどまでにマリスの功績は大きい。


背もたれに身を任せたまま天井を見つめていると部屋の隅で気配を感じた。

チラッと目を向けると影が浮き上がりアインが現れた。


「陛下、お休みの所失礼いたします。」

「……どうした?何かあったのか?」

相変わらず音もなく現れるアインに一抹の気持ち悪さを覚えたがぐっと飲み込む。


「彼の動向は今後アスカに任せてもよろしいでしょうか?」

「ああ、その事か。そうだな、今は同じクラスの仲間として仲良くやっているのだろう?」

「まあ……そうですね。険悪な関係ではないと思われます。」

ガイウスとしては学園に十二神を3人も預けるのはかなりの痛手だった。

いくら自身の子ども達がいるとは言え、オルバが守っている以上、余程の事がなければ問題はないだろうと思っている。


だが今は違う。

そこに虹色魔導師もいるとなれば、命を狙われる可能性もある為十二神を監視と護衛役で張り付かせるしかなかった。


「アイン、お前には王国軍の動きを探ってもらおう。」

「なるほど、引いたと見せかけて再度侵攻してくるのを事前に察知せよと言うことですか。」

アインも理解が早くいちいち説明しなくても全てを理解してくれるからガイウスは彼を影の護衛にしていた。


「今の所は問題なさそうだが、いつまた攻め込んで来るかは分からん。万が一の時は王国軍の司令官を暗殺せよ。」

「畏まりました。」

それだけ言うと、アインはまた影に消えていった。

何度見ても慣れない光景ではあるが、隠密に関しては彼の右に出るものはいない。


「ふぅ、王国軍の次はマリスを観察するのが先か。それにしても炎天すらも破るとは……将来が末恐ろしいな。」


マリスはまた自分の知らない所で、有名になっているとは思いもしないだろう。

ガイウスは時間をかけてマリスを取り込もうと考えていた。

今はまだ学生でも後4年ちょっと経てば卒業になる。

それまでにマリスが宮廷魔導師に興味を持つようにしなければならず、ガイウスは今日もまた頭を抱える事となった。

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