魔導大会でも目立ちたくない①
学園に戻った僕はまたいつもの日常に戻った。
と、言えたら良かったが自分で連れて帰って来た目の前の彼女の面倒を見ることになってしまった。
「初めまして!マリスさん!よろしくお願いします!」
「ああ、よろしく。」
キリカは案外優秀だったようで、数日勉強を見てあげただけで編入試験に合格したらしい。
二色魔導師なので、二級クラスに編入だ。
ジンとミアがいるクラスだし、ちょうど良かった。
今僕達は訓練場にいる。
これから実際に魔法を行使し、身につけてもらう為だ。
座学に関しては問題無い事が分かったが実践となると数をこなすしかない。
そこで、ガインから紹介されたというていで僕が教えることになったのだ。
「えーと、まずはどんな魔法が使えるか見せてもらってもいい?」
「はい!まずはこれです!」
キリカは村を守っていた結界魔法を展開する。
結界魔法は基礎中の基礎だ。
防御力はともかく、使う事は魔導師であれば誰でも出来る。
一応防御力も見ておいたほうがいいか。
「じゃあ攻撃するから防いでみて。」
「分かりました!」
キリカは両手を前に突き出し、全力で魔力を流し込む。
いきなり、破壊するのは自身を無くさせてしまうし、とりあえず初級魔法でいこうかな。
「雷光一閃。」
一筋の電撃がキリカの結界へと真っ向からぶち当たる。
バチバチと結界と相反する音を響かせながら、電撃は霧散した。
割るつもりはなかったが、少なくともヒビくらいは入るだろうという程度の魔力を使ったがキリカの結界は無傷だった。
「ど、どうでしょうか!」
「うん、結界の強度はそれなりにあるみたいだ。」
キリカの魔力は思っていたより高いかもしれない。
これならすぐに別の魔法も習得出来そうだ。
「次の魔法は回復魔法なんですが、どうやって見せたらいいですか?」
回復か……見せてもらうには傷が必要になる。
仕方ないな、僕がやるしかない。
小さい風の刃を生み出し指の先を切ると少し血が滲んだ。
「はい、この傷を治してくれるかな。」
「分かりました!」
キリカは僕の指先に掌を向けると魔法名を唱えた。
「癒やしの水。」
ごく一般的な初級の回復魔法だが、僕の指先の傷はまるでなかったかのように綺麗に治った。
初級とはいえこれで結界と回復両方使える事が分かった。
魔法の事を殆ど学んでいないのにも関わらずこれだけ出来れば将来有望だな。
「以上が私の使える魔法です。」
「十分だよ。じゃあ今日からは攻撃魔法を覚えようか。守る事しか出来なければ魔導師としては半人前だしね。」
キリカは青と緑の魔色持ちだ。
僕が公にしている魔色は赤、黄、青。
必然的に青の水属性魔法のみしか教えられない。
「攻撃魔法……ワクワクします!!」
その気持ちは良く分かる。
僕も初めて攻撃魔法を使った時は嬉しかった。
「じゃあこれを教えようかな。」
そう言って僕はキリカから少し離れた。
手を前に突き出し、魔法名を唱える。
「水の刃。」
薄く引き伸ばされた水は真っ直ぐ飛び、訓練用の木人形を真っ二つにした。
それを見ていたキリカは目を輝かせている。
「すっっごいです!!やっぱり魔法はかっこいいですね!!」
「これは簡単だからすぐ覚えられると思うよ。じゃあ実際にやってみようか。」
それからは毎日放課後2時間ほど訓練に費やした。
魔法探求会にも顔を出して、オリジナル魔法を教え、訓練場にも毎日足を運びキリカに教える。
いつ休めばいいんだと思ったが、僕が始めたことだ。
誰にも文句は言えなかった。
一月が経ち、キリカが覚えた魔法をお披露目する時が来た。
呼んでいるのはもちろん魔法探求会の面々だ。
キリカは緊張するかもしれないが、僕が呼べる面子なんて彼らくらいしかいないのだから諦めてもらおう。
訓練場にゾロゾロと入ってくる僕の友達を見てキリカは明らかに緊張していた。
「で、マリス。来てくれって言うから来たけどその子がそうなのね?」
ロゼッタがキリカに視線を送ると表情が硬いキリカは突っ立ったまま微動だにしない。
まあ仕方のない事だ。
平民からすれば、公爵家の人間なんて天上の人に等しい。
僕からみてもかなり格上になるんだし、慣れてもらうしかないな。
「キ、キリカと!申します!!」
「アタシはロゼッタよ。こっちにいるのは妹のシーラ。よろしくね。」
気さくに話しかけるロゼッタだがまだキリカの緊張は取れていないようだ。
シーラは柔らかい雰囲気を纏っているしまだロゼッタよりかは接しやすい気がする。
中身さえ知らなければ。
各々挨拶が終わるとやっとお披露目タイムだ。
初対面のそれも複数人の前で魔法を披露するキリカはもうガチガチに固まっていた。
なんとか緊張を和らげてやろうと、冗談の一つでも言おうとすると遅れて魔法探求会のメンバーが2人入って来た。
「すまない、少し遅れてしまったよ。」
「申し訳ございませんマリスさん。教室で少しお喋りしてたら遅れてしまって……。」
ルーザーとエリザさんだ。
キリカも皇子皇女の顔は知っていたらしく目は点になる。
「君がキリカさんだね?私はルーザーというんだけどまあその様子を見ると知っているみたいだね。」
「私はエリザですわ。よろしくお願いしますねキリカさん。」
キリカは僕の方を見て口をパクパクさせている。
まあそうだよな、まさか皇族が見に来るなんて思ってもなかっただろうな。
「ルーザーとエリザさんは僕の友達なんだ。だからそんなに肩肘張らなくていいよ。」
「と、と、と、と、友達……ですか……。」
もう何が何やら分からないといった顔をしているな。
とりあえず魔法を見せてもらうとしよう。
「挨拶はこの辺にしてそろそろやろうか。」
「あ、はい!!」
魔法の事となると案外すぐに切り替えられるらしくいつもの顔に戻った。
一月も付きっきりで教えたんだ。
みんな驚いてくれるかな。
「じゃあ、いきます!!」
キリカは覚えた順番に魔法を披露していく。
5つ目を超えた辺りからみんなの様子がおかしくなってきた。
ふふふ、驚くといい。
教えた僕が言うのもなんだがキリカはなかなか魔法の才能が高い。
だからか覚えるのも早くついつい色んな魔法を教えてしまった。
キリカが10個目の魔法を放ち終わると、みんな呆然としていた。
さあそろそろクライマックスだ。
「キリカ、最後にあれを見せてあげて。」
「はい!分かりました!!!」
キリカは力強く頷くと徐々に魔力を練っていく。
「行きます!!!」
準備が出来たキリカは最後の魔法名を唱えた。
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