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虹色魔導師は目立ちたくない  作者: プリン伯爵


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戦争が始まっても目立ちたくない⑧

マリスを襲った炎は火力が高すぎたのか地面を溶かしていた。

結界を瞬時に展開したお陰で火傷を負うような事はないが、炎天と呼ばれるだけあって火属性魔法の火力は今まで見たどんな魔法よりも大きかった。

魔力量の多いマリスでさえも防御するのが大変な熱量であり、他の魔導師であれば一瞬で灰になっていたことだろう。

マリスは自身の卓越した魔法の才能に感謝した。

しかしそもそも虹色魔導師だとバレていなければ、こんな戦場に駆り出されることはなかったので自業自得とも言えた。


「しぶといやつだなてめぇ!!!」

灼熱の炎を隔てて反対側から荒い口調で苛立った様子の声が聞こえてきた。

かなり上位の魔法を放ったにも関わらず未だマリスは涼しい顔で防いでいる。

それがムーアの神経を逆なでしていた。


「上級魔法だぞ?なんでまだ耐えられる!!」

それはもう地力の差としか言えないとマリスは思った。

たとえ四天と持て囃されていても所詮は四色魔導師。

七色の魔色を持つマリスとは天と地程に実力の差があったからだ。


一般常識では自身より魔色の数が多い者に対しては勝てないと言われている。

魔力を溜めておく器の大きさが違いすぎるのだ。

四色魔導師の器がお風呂程度の大きさだとすれば、七色はプールよりも大きいくらいには差があった。

そこにプラスして、魔法の才がモノを言う。

ムーアは四天と呼ばれるだけあって普通の魔導師からすればかなりの才能を持っている。

だがマリスの才はそれを遥かに凌駕する才であった。

実戦経験がないというだけで、魔法のぶつかり合いでマリスが負ける要素は一つもなかった。



結界を維持しながらマリスは思案する。

攻撃を仕掛けてくる目の前の男をどの程度痛めつけるべきなのか。

殺してしまう事はできるが、十二神と互角以上と言われる男を殺してしまうのはもったいない気もする。

しかし、帝国民が何人も彼に殺された事は事実。

仇を討つという名目で殺すべきか、捕縛して皇帝の前に連れて行く方がいいのかマリスでは正解が分からなかった。


結界を張り防御に専念しながら考え事をしていたマリスにキャロルが話し掛けた。


「あの……ガイン?様。相手は四天の一人です。ガイン様が何者かは存じ上げませんが貴方一人ではかなり厳しい相手かと……。」

キャロルさんは僕の身の心配をしてくれているようだ。

確かに強敵かもしれないが、勝てない訳ではない。

しかしそれはマリスが虹色魔導師だからであってキャロルの知る所ではない。


「大丈夫です。僕は結構強いので。」

できるだけ短く返答する。

長々と話せばボロが出るという事は今まで何度も経験してきた事だ。

同じ過ちを繰り返さないよう導き出した結論は、あまり口を開かない、だ。

その態度がかなりの実力者に見えたのか、キャロルはそれ以上口出す事はなかった。


そんなやり取りをしていると、次第に炎の勢いは弱まり消えた。

魔力が尽きたのかと思ったがそんな事はなかった。

憮然とした様子で突っ立って睨んでくる所を見れば結界を破れないと判断して魔法を中断しただけなのが分かる。

ムーアが攻撃の手を止めたのを見て僕も結界を一度解いた。



「ホントに何者だお前は。本気ではなかったとはいえ俺の魔法で焼き尽くせねぇだと?救援にしては少ないなとは思ったが……帝国の隠された切り札ってやつか?」

「そんな凄い人でもないよ。ただ人よりちょっと魔法が得意なだけだ。」

「ちょっと得意で俺の魔法が止められてたまるかよ!」

苛立ちが収まらないムーアは再度魔力を練り始めた。

次は本気で撃つつもりで膨大な魔力を魔法陣に注ぎ始める。



マリスがムーアと相対していた頃既に近くまで来ていたガウェインはその様子をしっかり見ていた。

虹色魔導師だと聞いてはいたが、まさか四天と互角に戦える程とは思っておらず動揺を隠せない。

「……実戦経験はないんじゃなかったのか?チッ、俺からすればどっちも化け物に見えるな……。」

ガウェインは誰に言うでもなく独り言を溢す。

しかしボーっと見ているだけなのもどうかと思い、キャロルの元へと向かった。


「……無事……のようだな。」

後ろから声を掛けるとキャロルは驚いて振り向いた。

ガウェインの顔を見て更に驚く。


「ガウェイン・マギクラッド!?……なるほど、救援要請に応えて送って来たのは貴方とあそこにいる彼ですか。」

「……そういう事だ。」

「学園魔導位1位の貴方が来てくれるとは思いませんでしたわ。感謝します。」

「……感謝は後にしろ。それより状況はどうなっている。」

キャロルは現在の被害状況を簡単に報告する。

それを聞いてガウェインは顔を顰めた。


「……チッ王国のカス共が。かなりの大打撃だな。」

「ええ、生き残った兵士はここにいる数百人だけですわ。」

元々ドレッドムーン私兵は強力な軍隊で数も優に1000を超えていた。

しかし今では200人ちょっとしかいない。

それが今回の被害を物語っていた。


「……まあいい、後は俺とアイツがやる。お前らは街に籠ってろ。」

「あの方は何者なのですか?先程からあのムーアと互角に戦っておりますが……。」

あの方と言ったのはガインの事だろう。

ガウェインは返答に悩んだ。

正直に答えたかったがそう言う訳にもいかずそれらしい嘘を考える。


「……帝国が内密に隠し続けてきた秘密兵器、みたいなものだ。」

「秘密兵器……ですか。人を兵器というのは何ともいい気分はしませんわね。」

メンドクサイ女だとガウェインは頭を掻く。

だが、これ以上教えてやる義理はないと言わんばかりにそっぽを向いた。


「ですがあんな方がおられたなんて聞いたこともありませんわ。それに狐のお面を着けているなど……顔を隠す必要があるお方という事ですわね。」

勘が鋭いのかキャロルは顔を隠す必要があると言い当てた。

ガウェインは何も答えない。


「沈黙は肯定とみなしますわ。救援にきたのが2人だけだと話にならないと思いましたがあれほどに力を持っているなら十分ですわ。」

「……俺の出る幕は多分ない。まあ、せいぜいアイツがとりこぼした敵を狩る程度だろうな。」

「アイツ……なるほど?貴方はあの方に対してえらく馴れ馴れしいようですわね。ということは貴方は中身をしっていると。それもその口調、年下でしょうか。」

キャロルはかなり頭が切れる。

生徒会長であり領主である彼女は早くも二つの秘密を暴いてしまった。

顔を隠す必要がある事と中の人はガウェインよりも年下だという事。


もう何も話さないと決め込んだガウェインは黙ってマリスの行方を見る事にした。

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