帝国の危機でも目立ちたくない⑥
フェイルが先陣を切り、魔力を纏わせた剣を振るう。
足にも身体強化の魔法をかけていたようで、凄い速度で女性へと迫る。
しかし振り切った剣は空中で何かにぶつかるような音を響かせ、止まった。
それを知ってか女性は口角を上げる。
「フフフ、だから言ったじゃないの。魔導師たるもの結界魔法を使ってるんだから剣なんて流行らないわ。」
「いや、そうとも限らんぞ!」
急激にフェイルの魔力が上昇し、遂には結界を砕いた。
ガラスの割れる音が響き渡り、結界が完全に破れた事を示していた。
女性は少し驚いた表情を見せる。
「なるほどね、魔剣士って魔力を込めたら結界を砕くんだ。凄いじゃない坊や。」
「その余裕がいつまで持つのか見ものだな!」
結界を破った後は再度踏み込み上段から剣を振り下ろす。
しかしただ突っ立って待ってくれるほど甘くはなかった。
「無駄よ!火炎弾!!」
飛び退いた女性は掌をフェイルに向け魔法名を叫ぶ。
すると複数の火の玉が生成されフェイルへと一直線に飛んだ。
剣を振り火の玉を斬るフェイルだったが全部は斬れなかったようで数発が直撃し僕の足元まで吹っ飛ばされてきた。
「ぐあっ!」
背中から倒れたフェイルは少し火傷も負ったようで、悶絶していた。
「火属性ならアタシだって負けてないわ!!火炎放射!!!」
今度はロゼッタが攻撃に移る。
両手を前に突き出し、魔法陣が浮かび上がった。
炎の渦が生まれ、勢いを保ったまま女性へと放たれた。
「火属性で私に勝とうだなんて、百年早い!!火炎放射!」
負けじと女性も同じ魔法を唱えた。
まったく同じ魔法がぶつかり合うと、純粋な魔力勝負になる。
明らかに格上の女性の魔力量にはロゼッタも及ばない。
ロゼッタの魔法はかき消されそのまま押し込まれた。
「きゃぁぁぁぁ!!!」
えらく可愛らしい悲鳴をあげ吹き飛んできた。
シーラは直ぐにしゃがみ込み回復魔法をかけだした。
今の戦いを見た限りやっぱり僕が出たほうが良さそうだ。
「さ、邪魔者は片付けたわ。どう?マリス、ウチに来ない?」
「まず、貴方が何者か分からないんですが。」
残念ながら目の前の女性の名前も知らなければ、所属も分からなかった。
そう言うと女性はハッとした表情を見せ改めて名乗り始めた。
「ごめんなさいね、名乗ってなかったわ。私はリズリア。十悪の1人、緋色の爆撃リズリアよ。」
やっぱりだった。
なんとなくそんな気はしていたんだ。
ただの生徒とはいえ、三色魔導師であるフェイルとロゼッタを完封し未だ余裕を見せている女性は、手練れだということは分かっていた。
しかしまさか十悪とは思わなかったが。
ある程度回復したのかロゼッタが驚いた顔をして、リズリアを凝視していた。
「まさか!アンタみたいな大物が出てくるなんてね……そんなにもマリスが欲しいのかしら?」
「ええ、もちろん。まあ仲間になってくれないと言うのならここで殺すけどね。」
リズリアは両手に魔法陣を浮かべる。
いつでも魔法を撃てるぞ、という脅しだとでもいうのだろうか。
「悪いけど十悪に加担するつもりはない。かと言って宮廷魔導師になるつもりもないけど。ただ、友達が怪我を負わされたんだ。僕も黙っているわけにはいかなくなった。」
三色魔導師の限界魔力量であろう魔力を身体から放出させると、リズリアは一歩後ろに下がった。
やはり警戒しているようだ。
これで決まりだな。
僕の事をどうやってか知ったらしい。
今の反応が物語っている。
「ヘぇ、やる気なのね。私も虹色魔導師と戦うのは初めてなの。手加減してくれる?」
「すると思う?」
「まあ、しないわよね!!火炎放射!!!」
いきなり両手を突き出して魔法名を叫んだ。
魔法の生成が速い。
さっきロゼッタと撃ち合った時は手を抜いていたようだ。
「火には水だよね。水女神の息吹」
対抗して僕も片手を突き出し、水の魔法を発動した。
両者の魔法はぶつかり合い拮抗している。
次第に火の勢いは弱まり消えた。
同じ中級魔法だ。
相殺したらしい。
今ので押しきれないならもっと魔力を上げよう。
どうせこの場にいる者は全員僕の秘密を知っているんだ。
四色魔導師クラスの魔力を使ってもいいだろう。
「私の二つ名覚えていないの?前ばっか見てると火傷するわよ!」
リズリアは手を空に向ける。
さっきより大きな魔法陣が頭の上に浮かんでいた。
「緋色の爆撃……なるほどな、今度の魔法は降り注ぐタイプか。なら、これで終わりだ。」
僕はリズリアに手を向ける。
「何のつもり?」
「今撃とうとしてるのって上級なんだろ?なら僕の方が速い。」
「速いからって終わりになる理由なんてないわ。」
「いや、あるよ。疾走雷撃。」
ガイを一撃で昏倒させた時より更に魔力を注ぎ込んだ。
目に見えない速度でリズリアに着弾し、小さくアッと声を漏らし後ろに吹き飛んでいった。
遠くの方で窓ガラスの割れる音がした。
吹き飛びすぎて窓を突き破ったみたいだ。
魔導師たるもの先手必勝。
強力な魔法を使うつもりなら、さっきフェイルに割られた結界を張り直しておくべきだったんだ。
まあこれで脅威は去ったし、ロゼッタとフェイルの怪我も治ったようだ。
「教室に戻るか。」
「……相変わらずの威力ね。初級魔法で人を吹っ飛ばすなんて有り得ないわ……。」
「ガイがよく死ななかったと思うぞ。」
「マリスさんは加減というものを知りませんから……。」
手助けしたのにこの言い草。
今度じっくり話し合う必要があるな。
教室に戻ってアスカは学園内に居なかった事を説明すると、リスティアさんは絶望した顔をしていた。
オルバ先生が戻って来たら伝えなければならないが、責任者としての義務を果たせずどうしたものか、といった表情だ。
そうこうすると教室の扉が開いた。
「すまねぇ、遅くなった。さっき学園内で戦闘があったみたいでな。そっちの確認してたら遅くなった。」
少しするとオルバ先生が帰ってきた。
教師陣で話はついたのだろう。
「あの……オルバ先生……実はシラヌイさんがいなくて……。」
リスティアさんは消え入りそうな声で先生に説明しだした。
しかしオルバ先生の反応は思ったものと違かった。
「ん?ああアイツか。あ、いやシラヌイか。なんか外に買い物行くって言ってたような気がするぞ。だから気にしなくていい。」
「えっ?」
「なんかそんなようなことを言ってた気がする。」
「そ、そうですか……。」
釈然としないままリスティアさんは席に戻っていった。
もしかしてオルバ先生は最初からアスカが居なくなった事を知ってたのか?
まあ問題ないならいいが。
学園に入り込んだ侵入者は呆気なく撃退してしまったし、後は帝都が落ち着けば今回のテロ事件も終息だ。
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