帝国の危機でも目立ちたくない⑤
「おーいアスカー。」
「シラヌイ!何処にいるのだ!」
急に姿を消してしまったアスカの名前を連呼しながら学園内を歩き回る。
結局リスティアさんは委員長でクラスを守る義務がある為いなくなった生徒を探す役割は僕とフェイルのみで行う事となった。
実は僕だけで行こうとしたのだが、何故かフェイルも着いてきた。
剣も使えて近接戦闘も可能なフェイルが居たほうが安全だと言う理由だった。
「うーむ、見つからんな。どうする?図書館の方も見てみるか?彼女があんな所に行くとは思えんが……。」
何気に失礼な事をサラッと言うんだな。
本なんて読むような奴に見えないって事だろそれ。
「まあ一応見ておこう。ここ広すぎて何処にいるかなんて検討もつかないし。」
念の為図書館の方にも足を向けた。
その後も探し回ったが一向に見つかる気配はなかった。
既に学園内にいないのではないかと思えるくらいに。
「やはりおらんな……一旦戻るか。」
「そうだな、まさか学園の外に出たなんて事はないだろうけど、これだけ探して見つからないんだ。何か用事があって学園外に出たかもしれない。」
教室の扉を開けると中に居た生徒は一斉に僕とフェイルを見た。
そこにアスカの姿がない事で見つからなかったと分かったのか残念そうな表情をしている。
「この学園広すぎて隅々まで探しきれないよ。少なくともこの校舎の近くと寮の方も見たけど居なかった。」
「図書館のあたりも見たのだが、居なかったぞ。」
「ちゃんと探したの?適当にぶらついただけじゃなくて?」
ロゼッタがそんな事を言ってくるが、フェイルはすぐに言葉を返した。
「何!?俺とマリスで探したのだ!!適当にぶらつくわけがないだろう!!」
ちょっと良く分からない怒り方をしているがまあ気にしないでおこう。
フェイルの事だ、親友と探しているのにサボる訳がないとかそんな事を言いたかったんだと思う。
しかし生徒が一人見つからないというのは結構な問題である。
教師陣は未だに教員室に籠ったままだし、僕らで探すしかない。
2人で広大な学園内を探すのはこれ以上無理だという事で、今度はクルーエル姉妹も加わって4人で探すことになった。
「良かったのか?2人共教室から出てきて。今学園を覆う結界もないし多分敵は入ってきてるよ。」
未だ出会ってはいないが、結界が破られた以上学園内に敵が入り込んでいるのは確実だ。
女子を2人連れ添って探すのは気が引ける、と思っていたがロゼッタとシーラなのでまあいいかと連れてくることにした。
ロゼッタは気が強いから敵と出会っても腰が引けるような事はないだろうし、シーラに至っては姉に危険が迫るとなれば本性を露わにして敵に襲い掛かりそうだ。
「なんだか失礼な事考えていませんか?マリスさん。」
シーラは勘も鋭いらしい。
上手く誤魔化しておいたが目が笑っていなかった。
もうずいぶんと歩き回った。
探せる所はほとんど探したが見つからない。
4人共、もうこれは確実に学園内にいないだろうなという空気になってしまっていた。
そんな時だった。
廊下の先に人が立っているのが見えた。
距離があって分かりにくいが体型的に女性のようだった。
「ちょっと……あれ、先生?じゃないわよね。」
「違うだろう。今教師陣は全員教員室にいるはずだからな。」
「という事は……間違いありませんね。」
皆同じ意見だったようだ。
「敵だ。ここの結界を破壊した本人かその仲間だろうね。」
僕がそう言うと全員戦闘態勢をとる。
フェイルが前衛に回り剣を抜く。
ロゼッタが中衛で火属性魔法を用意、シーラは後衛で支援魔法の準備に取り掛かっていた。
僕はその後ろだ。
3人が前に出たせいで僕は一番後ろでただ見ているだけになってしまった。
なんとなく見ているだけなのも申し訳ないので、4人に結界魔法を張っておく。
これなら万が一があっても一度だけなら致命傷を避けられるはずだ。
「感謝するぞ!マリス!」
フェイルは真っ先に気づいたようでお礼を述べる。
ロゼッタとシーラもチラッとこっちを見た。
「僕の結界はかなりの強度を誇る。かといって油断は禁物だ。避けられる致命傷は一度のみ。相手はここの結界を破壊した本人かもしれないんだ。気を付けてくれ。」
といってもここにいる3人はこの学園内でもトップクラスの成績だ。
簡単にはやられないだろうが、未知の敵との遭遇時は油断大敵。
もしも十悪であった場合、勝ち目はない。
身構えていると一歩ずつ女性らしき人物が近づいてくる。
シルエットだった姿は徐々に服装や顔も見える距離になってきた。
見た事もない女性だ。
見た感じ魔導師っぽい服装をしている。
胸のふくらみがなかなか強調していて女性だとすぐに分かった。
よく見ると片手にロッドを持っている。
魔導師以外でロッドなんて物は持たない。
「狙いは皇子皇女殿下ではなく、マリス、アンタかもしれないわ。」
「その可能性は高いだろうな。ここは一級クラスの教室と離れている。もしもマリスではないのならこんな所におらず一級クラスを目指しているはずだ。」
どうやら僕が狙われているらしい。
ナイスバディな女性に狙われるなんて、世の男子が羨ましがるだろうな。
でも狙われている意味が違う。
多分僕を虹色魔導師だと知って殺しに来たか勧誘かだ。
どうやって知ったか分からないけど、僕を狙う理由なんてそれしかない。
「はぁい、マリス。へぇ近くで見ると割と私好みの顔ね。私と一緒に来てくれないかしら?君なら楽しい事してあげてもいいけど?」
楽しい事ってなんだ。
凄く気になる。
質問しようとしたが、僕より先にフェイルが口を開いた。
「何者かは知らんが、それ以上近づけば俺の剣が届く間合いだぞ。」
「フフフ、ここは魔導師の学校じゃないのかしらね?剣を使うなんてみっともないわ~、それに魔導師に剣で対抗するなんて無理よ。」
「フッ、お前こそ俺を知らんようだな。いいだろう教えてやる!俺はフェイル・ワーグナー!魔剣士の一族くらい聞いたことはあるだろう?」
「なるほど、ワーグナーの魔剣士か。それなら納得だわ。でも私相手に近接戦闘なんて無理よ~?近づかせないから。」
フェイルとそれだけやり取りすると急激に女性の魔力が上がった。
近づいて来るまでにこっそり魔力を練り上げていたようだ。
明らかに普通の魔導師レベルではない魔力。
それに佇まいからしてかなりの手練れだ。
目の前の女性はニヤッと口角を上げ口を開く。
「私の邪魔をするなら、焼き殺すけど、いいかしら?」
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