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虹色魔導師は目立ちたくない  作者: プリン伯爵


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帝国の危機でも目立ちたくない①

帝都の下に広がる巨大な下水道。

そこに黒いローブに身を包んだ三人が密談の為集まっていた。


「ちょっとさ、私が動く間ロビクスとノーデンスはじっとしててくれない?」

「どういうつもりだ?」

十悪の1人、リズリアが2人の男に提案を持ちかけた。

ロビクスとノーデンスと呼ばれた2人は顔を見合わせ首をひねっている。


「リーダーからの任務でね〜、虹色魔導師のスカウトか殺害を頼まれてるのよ。」

「何だと!?」

「何を言っているのですか貴方は。」

2人は少し前から帝都に入り込んでいたせいでマリスの事を知らなかった。

その為リズリアの口から虹色魔導師という単語が出てくるなんて思いもしていなかった。


「あーあんたら知らないわよねぇ、実は今帝都には虹色魔導師がいるのよ!流石に私も油断できる相手じゃないしね、だから邪魔しないでって言いに来たの。」

「邪魔するつもりはありませんが……その話、本当ですか?」

ノーデンスはまだ信じられないようでリズリアに疑わしい目を向けてくる。

しかしリズリアとてこの場で証明するのは難しい。


「ハスターがさ、記録水晶で虹色魔導師らしい人物を撮影してたのよ。それを見て確信したってわけ。」

「ハスターが、ですか。それならまあ信じましょう。」

リズリアは自分の言葉では信用させられなかったのにハスターの名前を出した途端信じたノーデンスに苛つきを覚えたが、今ここで争うことは不味いと考えなんとか我慢した。


「オレもその虹色魔導師会ってみてぇなぁ。」

「駄目よ、今回は私がリーダーから指名されたんだから。変なことはしないでよ?」

「分かってるって。んで何やるつもりなんだよ。あんまり派手な事はしねぇほうがいいぜ?十二神の上位陣は今国境付近にいるが全員がいなくなった訳じゃねぇ。」

「知ってるわ。まあそれなりに楽しませて貰うつもりだけど、多少は目を瞑ってもらいたいわね。」

リーダーからの指名なら仕方ないとしぶしぶながら首を縦に振ったが、正直に言えばリズリアには派手に動いて欲しくはなかった。

ある計画の為に2人は帝都に潜り込んでおり、あまり派手に動かず目立たないように進めている。

しかし、リズリアはいつも無計画に動く。

だから2人はあまりいい顔をしていなかった。


「じゃ、よろしくね〜。」

手を振りながらその場を去っていくリズリアを2人はただ見つめる事しか出来なかった。



――同時刻、帝城。


「陛下、こちら報告書になります。」

文官の男が皇帝に1枚の紙を渡す。

これは収支や犯罪のまとめなどではなく、十悪に関する情報であった。


「ふむ、目立った動きはないようだな。」

「はい、ただ1つ気がかりな点があります。」

報告書には全て目を通していないが目の前の文官はそんな事を言い出した為耳を傾ける。


「あくまで噂程度ですが、帝都内に十悪が入り込んでいると、街の情報屋が言っておりました。」

「何だと?厄介な事をしてくれなければ良いがな……。」

「そうですね、今はクレイ様もおりませんし。」

ガイウスはタイミングが悪いと、唸る。

現在帝国最高戦力であるクレイ・グレモリーを国境付近に派遣している為だ。

西に位置する隣国、ハルマスク王国からの侵略行為が最近活発になっている。

そのせいでクレイを国境付近からずっと動かせずにいた。

もちろんクレイだけではない。

十二神から数名が国境守護の為出払っている。


「万が一の際は十二神が1人、ネームレスを動かす。もし十悪に新たな動きが即報告せよ。」

「畏まりました。」

文官が部屋から出ていくと、部屋の隅の影が動き地面からゆっくりアインが現れた。


「あのネームレスを使うのですか?」

「アインか。そうだな、万が一の時はだ。」

「ですが、あれは帝国の切り札では?」

ネームレス。

彼はたった1つの魔法しか使うことが出来ない無色魔導師と呼ばれる存在。

最強にして最弱。

帝国民からはそう呼ばれている。

何故そんな男が十二神であるのか。

理由は簡単である。

彼の唯一の魔法、消失する奇跡の技(バニシングマジック)

これはどんな強力な魔法であってもかき消す事が出来る最強の魔法であった。

しかし攻撃手段を持たない故に最弱とも呼ばれている。

それに膨大な魔力を使うらしく、一度使えば1ヶ月は使えないという。

だからこそ、帝国の切り札とされていた。

最強の魔導師に最弱の切り札。

この2つがあるからこそ帝国は他国から最強国家と呼ばれている。

アインの発言は、その切り札を使うのはリスクが大きいと考えたからだった。


「他の十二神で片が付くのであれば良い。だがそれでも止められないのであれば、ヤツを使う。」

「……分かりました。オルバ殿が出てくれれば一番良いのですが、今は皇子の護衛……ジリアン殿も同じく。ナターシャ殿は陛下の傍から動かせず、自由に動けるのは拙者とアスカのみ。タイミングが悪いですね。」

「もうじき、騎士団長も遠征から帰ってくる。それまで何も無ければよいがな……。」

ガイウスは最近ナリを潜めていた十悪が動き出したという事に不気味さを感じていた。

虹色魔導師が現れてからというのも不気味さを加速させている。

ネームレスを使うか、マリスという少年に手を貸してもらうべきか、ガイウスは頭を悩ませていた。


「そういえば、アスカはどうだ?上手くやっているのか?」

ガイウスはふと思い出したかのように、マリスに近づけと命令していた彼女の事を口に出す。


「はい。同じクラスに配属されるよう手を回しました。それ以降彼女から連絡はありません。」

「そうか。一応伝えておけ。帝国の危機が迫ればこっちを優先してもらうと。」

アインは頷くと、影に溶け込み消えていった。



「虹色魔導師の誕生と十悪が動き出した事が何も関係なければよいのだがな……。」

ガイウスは小さく呟き、カーテンを開けた。

窓の外には帝都の街が広がっている。

ここ十年ほど、大きな事件は起きていない。

それが今になって、起き得るかもしれないという状況になっていた。


ガイウスは眼下の街が火の海にならない事を祈るばかりであった。

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