パーティーでも目立ちたくない⑥
ガイン辺境伯が帰った後は何故か分からないが僕に近づく人がいなくなった。
例えば料理を取りに行くと、そこに居た人は僕を見てサッとその場を離れる。
そして遠巻きに僕を見ている。
居心地は多少悪くなってしまったが、食べたい料理があればすぐに食べられるようになった事はとてもありがたい。
やはり人気の料理が乗っているテーブル周りには人が多い。
なかなか近付きにくく食べれていない料理がいくつかあったが、今は違う。
近づけば勝手に離れてくれるのだ。
様々な料理を1人で楽しんでいると、ロゼッタとシーラがやって来た。
挨拶回りが終わったらしい。
「ああ、ロゼッタとシーラお疲れ。大変なんだなパーティーの主催ってのも。」
「アンタに比べりゃマシよ……まさかあの方が来られるなんてね……。聞いてなかったから驚いたわ。」
あの方というのはガイン辺境伯の事だろうか。
公爵家にも一目置かれているという事はガイン辺境伯というのは有名な方らしい。
「そんなに有名な人なのか?」
「有名どころか……まあアンタが知らないのも無理ないけどね。こういうパーティーにほとんど参加してなかったんでしょ?」
「まあ、そうだね。ジンとミアはちょこちょこ出てたみたいだけど、僕は10歳頃に行ったパーティー以来ほぼ顔を出していない。」
「あの方はパーティーにたまーにだけど顔を出すのよ。だからアタシも知っているんだけど。」
パーティーに偶に出没する?
妖精かな?
「それにしても言っておけば良かったかな~、まあでも今更遅いか。」
「何の事?」
「いや、気にしないでいいわ。それより料理は美味しいかしら?ウチの専属料理人は腕がいいのよ!」
全部美味しいと思ったら、クルーエル家お抱えの料理人か。
そりゃあ美味しいはずだ。
「美味しすぎて手が止まらないくらいだ。」
「うふふ、その言葉ワタクシからお伝えしておきますわ。」
シーラさんは裏の顔が出て来なければとても優しそうなお嬢様って感じがするな。
こういう場ではドレスも相まって特にそう思う。
「マリス!!!」
聞き覚えのある声が聞こえたと思うとジンとフェイルだった。
2人してずっと剣術とか魔剣技がどーのこーのって話し合ってたのは終わったみたいだ。
「さっきの人と連絡先交換してただろ!あの人の事マジで知らねぇのか!?」
「なんだ、ジンも知ってるんだな。僕は見た事もないし聞いたこともなかった。」
「いやまあ確かに聞いたことはないかもしれ、あ、いやまあそうだな。」
なんだか煮え切らない返事をするな。
フェイルも苦虫を嚙み潰したかのような表情を見せる。
「ううむ、ここは親友の為教えるべきか否か……」
「なんだよフェイルも。なんかみんな微妙な顔してるな。もしかしてガイン辺境伯ってやばい人なのか?それだったら早く言ってくれよ。こんな連絡先サッサと消すから。」
「おおおお!!!??ちょっと待て!!消すのはダメだ!!悪い人ではない!!それだけは確かだ!」
えらい驚き様だな。
僕がポケットから連絡用魔道具を取り出したら、フェイルが取り乱し手を抑えつけて止めてきた。
「結構……偉いお方だ……。帝国でも5本の指に入る事は確実に。」
「へー、じゃあ公爵家みたいなもんか。」
「まあ、そうとも言うしそうでないとも言う。と、とにかく!あの方から連絡があれば必ず返信するべきだ。少なくともこの国であの方程力を持っている者など……いない……に等しい。」
しどろもどろで分かりにくかったけど、とりあえずガイン辺境伯から連絡あっても無視すんなよってことか。
まあ流石に無視はしないつもりだったけど、連絡来たら3日程経ってから返すつもりだった。
「なんだかルーザー達も困ってたくらい勢い凄かったよ。お付きの人もなんか申し訳なさそうにしてたし。」
「まあ、そうであろうな……。」
フェイルはルーザー達の方を見て憐れんだ目線を送っていた。
「ふぅ、貴方はとことんトラブルを引き付けやすい体質なようね。」
皮肉を言いながら近づいて来たのはレイさんだった。
男貴族連中からやっと解放されたらしい。
顔に疲れが見えていた。
「レイさん、お疲れ様です。なんか大変だったみたいですね。」
「貴方よりはマシだけれどね。」
僕が大変だったのも見ていたようだ。
ガイン辺境伯に詰め寄られていた所もばっちり見てたらしい。
「まさかあのお方まで貴方に目を付けるなんてね。これは早々にお爺様に報告した方が良さそうだわ。」
「うむ、それがいいだろう。グランバード伯爵であればなんとか事態の収拾を付けてくれる気がする。」
「ま、アタシもお父様に伝えておくわ。」
僕以外の皆が目配せして何やら秘密の会話をしているようだ。
気にしてもあんまり意味はないかと思いまた料理に舌鼓をうつ。
しばらく料理を楽しんでいると、ルーザーとエリザさんが気づいたら真横にいた。
今までは目立つ事を避ける為近付かないように取り決めていたがガイン辺境伯のせいで意味は無くなった。
それで2人はせっかくだしと僕の所まで来たらしい。
「大変、だったね。えっとガイン辺境伯と連絡先を交換したって聞いたけど?」
「お互いにな。ああこれほら。」
登録した魔道具を見せてやるとルーザーは溜息をついた。
「申し訳無い。せっかく目立たないようにって上手くやってたのにね。」
「ん?ルーザーが謝る必要はないだろ。」
「ああ、いやまあ……そうだった、ね。」
「お、お兄様、ほら、ガイン辺境伯は結構前から皇族と縁の深い仲だって。」
ルーザーがしどろもどろになったせいかエリザさんがフォローし始めた。
「ああ!そう、そうなんだよマリス。ガイン辺境伯は昔から懇意にしているんだ。だからあれくらいの軽い感じなんだ!」
「はーなるほどな。でもちょっと嫌そうな顔してたじゃないか。」
「あれは!その……まああんまり得意じゃないと言うか。」
まあ人には合う合わないがあるしそれは仕方ない事だろう。
しかし顔に出さないのが得意だと言っていたあのルーザーが顔に出すほどだ。
よっぽど苦手な人なんだろう。
「じゃあちょっと、まだ食べてない料理もあるからこの辺で。」
「そうか、私達はここにいるから楽しんできてくれ。」
そう言って僕は皆と別れまた1人で料理を楽しむ事にした。
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