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虹色魔導師は目立ちたくない  作者: プリン伯爵


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パーティーでも目立ちたくない③

時は数時間前に戻る。


「ガイウス陛下!またその格好で外出されるのですか!?」

「む?なんだ、いかんのか。」

「当たり前でしょう!貴方は皇帝なのですよ!?そんな格好で外に出て襲われでもしたら国の一大事でございます!!」

皇帝陛下は私室で怒られていた。

怒っているのは十二神の1人、ナターシャ・ハイライン子爵だ。

序列5位にして皇帝陛下専属の護衛でもある。

度々、皇帝は変装をして街を見て回ることがある。

様々なパーティーにも出没し、普通の貴族として楽しんでいたりする。

ただし、変装が甘く度々出没しているせいで、貴族や大商人からはバレているのだ。

ただ本人はバレていないと思っているが、それはあくまで皇帝陛下がお忍びで遊んでいらっしゃると考えた貴族や大商人が気付かないフリをしているだけである。


もちろんその事はナターシャも分かっているが本人に言う訳にいかずもどかしい思いをしていた。

護衛する身からすれば、皇帝陛下がお忍びで出かけると気が気ではないのだ。

もしも万が一があれば、物理的に首が飛ぶ。

常に周囲へ気を配る彼女のストレスはたまったものではなかった。


「少し面白い事があったのだ。それを見に行く。」

「面白い事!?面白いという理由だけで御身を危険に晒すと!?」

「別にお前は着いてこなくても良いぞ。フフフ、まだ余の変装はバレておらぬからな!」

「行きますよ!着いて行きますけど!」

思いっきりバレてます、とは言えないナターシャであった。




そしてガイウス皇帝が姿を現したのは、クルーエル家主催のパーティーであった。

影からアインが目を光らせ監視しつつ、傍ではナターシャが護衛を引き受ける万全の体制を取った。

念の為ハリス・クルーエルには皇帝がお忍びで来るとナターシャからコッソリと伝えてある。

なので何人かメイドや給仕に変装した近衛兵もパーティー会場に潜入していた。


皇帝陛下がお忍びで遊びに行くだけで、無駄に人件費が嵩む為出来れば控えて欲しいが何度言っても聞かない為ナターシャは諦めている。


ガイウス皇帝がパーティー会場に入ると、空気が一瞬だけ張り詰めた。

皇帝が変装してやって来たぞ、と全員が気を引き締め緊張感が走る。

その事に気付かない皇帝は目的の面白い事とやらを探していた。

ふと皇帝の足が止まりある人物を直視する。

ナターシャも釣られてそちらを向くと1人の少年が料理を口に運んでいた。

マリスの事を何も知らないナターシャは何の目的であの少年に目を付けたのか分からずとりあえず皇帝に着いていく。


皇帝は何故か緊張しているのか、少し上ずった声で話し掛けた。

「き、君はレオンハート家の子かな?」


皇帝がこんなにも緊張している姿を初めて見たナターシャは驚いた。

一体この少年は何者なのかと凝視するが特段目立った様子はない。


「そうですけど。失礼ですが貴方の名前は?」

この少年は皇帝の変装を知らないのだろうか?

大抵の貴族は自分の子供にこんな姿をした人物は皇帝のお忍びの姿だと教えている。

万が一失礼があると後が怖いからだ。

しかしこの少年は本当に知らないのかとぼけた顔で聞き返している。


「おお、すまないな。余、いや私は、えぇと、ガイン……ア、アステリアム辺境伯だ。まあ辺境伯だから君は知らないだろうがね。」

「ガイン・アアステリアム辺境伯でしたか。大変失礼致しました。」

あまりにも安直な名前にナターシャは吹き出しそうになったが、無理もない。

今まで名前を聞いてくる貴族など居なかったからだ。

皇帝は辺境伯だから名も知らぬのは仕方がないと適当にその場を濁している事に慣れてしまっており、その相手をする貴族も皇帝と分かっているから深く聞きはしない。


しかし目の前の少年は名前を聞いてきた。

そのせいで、皇帝陛下はどもりながら適当にでっち上げた名前を名乗る。

それがあまりにも安直すぎたのだ。

そもそもの名前がガイウス・アステリアだ。

名乗った名前がガイン・アステリアム。

ほとんど変わらないではないか。

チラチラと周りで見ている者も聞こえたのか、少し肩を震わせていた。


それにどもったせいで、少年は名前を聞き間違えた。

余計に面白くて、ナターシャは俯いて笑いを堪える。


「ああ!いやそんなに畏まらなくていい。それと私の名前はガイン・アステリアムだ。アが1つ多かったな。」

皇帝陛下はまさか(かしず)かれるとは思わず慌てて少年を立たせた。

それと聞き間違えられた部分は修正している。

アが1個多いくらい別に変わらないだろ、とナターシャは言いたくなるがグッと堪えた。


「失礼しました。僕はマリス・レオンハートです。」

「うむ、マリス君か。ふむふむ、なるほど。」

レオンハートという名前は聞いたことがあった。

確かアモンという平民がレオンハートの名を貰い男爵となった稀有な人物がいたはずだ。

ナターシャはその事を思い出し、目の前の少年はその子供だと理解する。

同時に皇帝の興味を引くほどの事なのだろうか、と思案する。


「あの……何かご用でしょうか?」

皇帝が長く見続けていたせいでマリス君は訝しんだ顔をしている。

怪しまれているようだ。

やはり皇帝に変装は向いていないのではないだろうか。


「ああ!いやまあそのだな、君はあのアモンの息子だろう?ならばやはり魔法が得意だったりするのかね?」

聞きたいことがたったそれだけか?とナターシャは思ったが、もしかしたらこの少年は何かしら天性の才がありそれを何処からか聞きつけた皇帝が興味を持ったのかもしれないと考える。


「まあそうですね、魔法は少し得意、かと思います。」

「ほう!やはり!ううむ、なるほどなるほど……。」

またもやジッと見つめてしまう皇帝。

それを辞めろと言いたくなる。

ほら、また訝しげな顔をされているじゃないか。


「もし君さえ良ければ学園を卒業した後宮廷魔導師になるのはどうかね?高待遇で肩書きも素晴らしいものだ。」

やはりそうかと、ナターシャは自分の考えが当たっていた事に少し嬉しくなる。

ただ皇帝がスカウトするなどなかなか有り得ない事だ。

周りからすれば、皇帝自ら変装までしてスカウトしに来たと見えているはずだ。

そうなればもちろん、この少年は注目の的になるだろう。

しかし次の少年の発言がその場に居た全員を凍らせる事となった。



「いえ、宮廷魔導師になるつもりはありません。」

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