パーティーでも目立ちたくない②
パーティー会場は、帝都にある高級ホテルだった。
1度も泊まったことがないホテルだ。
というより泊まれないほど高いのだ。
そこを貸し切って主催するクルーエル家は流石としか言いようがない。
既にマリエッタさんは会場入りしているそうで、僕らはロゼッタに続いて入場する。
会場を見た感じ、立食形式らしく至る所にテーブルが置かれその上に沢山の料理が乗っていた。
パーティーの始まる時間が迫ると、続々と貴族や大商人らしき人物が入ってきた。
やはりというか召し物が高級そうだ。
キョロキョロと目線を彷徨わせているとマリエッタさんが近付いて来た。
その横には見たことがないとても優しそうな顔をした大人の男性がいる。
「来てくれて嬉しいですわマリスさん。服もとても似合ってて素晴らしいですわよ。」
「こちらこそ、こんないい服を用意して頂いてありがとうございます。」
マリエッタさんはとても優雅に笑う。
ロゼッタは本当にこの人の娘なのだろうかと思うくらいに優雅なお人だ。
「マリエッタ、彼があのマリス君かい?」
横の男性がマリエッタさんに問いかける。
「そうよ、あのマリスさんですわ、貴方。」
ははぁ、なるほど。
この男性はロゼッタのお父さんか。
あのという部分が気になるな。
それにしても優しそうな顔だ。
何度も言うがこの2人からロゼッタのような性格の娘が生まれた事に疑問を持たざるを得ない。
「ふむ、君がマリス君か。噂は聞いているよ。いつか魔法を私にも見せてくれてもいいかな?」
噂、とは。
マリエッタさん、余計な事は言っていないだろうな?
この人に僕はどんな風に伝えられているのか不安になる物言いだ。
「おっと、自己紹介が遅れたね。私の名前はハリス・クルーエルだ。マリエッタの夫だよ。」
優しそうな顔で優しそうな声色。
優しさの権化とはこの人の事を言うのかもしれない。
「ロゼッタさんとシーラさんのお父様ですね。初めまして、マリス・レオンハートです。」
「いやぁ会えて光栄だよ。君は次代の……オホンオホン!いや何でもないよ。」
ハリスさんは唐突に咳払いをする。
何故かマリエッタさんに足を踏まれていたが、何を言おうとしたのだろうか。
もう一度聞こうとしたが、その後サッサと僕の前から去って行ってしまった。
まあマリエッタさんが何か止めたくらいだし、男爵家の僕が聞くと都合が悪い話かもしれないし丁度良かった。
1人になったタイミングでいきなり会場が湧いた。
みんな入り口付近を見ている。
何事かと思うとルーザーとエリザさんが入ってくる所であった。
実を言うと、入場のタイミングは数回に分けて行うことにしていた。
まず、ロゼッタとシーラに連れられて僕ら男爵グループが入場する。
その後フェイルとレイさんが入ってきて、最後に皇族組が入場する手筈だ。
じゃないとルーザーと一緒に入場しようもんなら、目立って仕方がない。
実際に今の光景を見ていると、分けて良かったと心から思う。
「やっぱり皇子と皇女殿下が入場してくるとみんなの対応が違うね〜。」
いつの間にか隣に来ていたミアがそんな事を言う。
まああんだけオーラを放っているし、こんな機会でしか話すことが出来ないのが皇族だ。
みんなここぞとばかりに話に行くみたいで、既にルーザーとエリザさんの元には挨拶する為の列が出来ていた。
ちなみに僕はというと、その辺にある料理を食べてパーティーを楽しんでいる。
ジンはフェイルの近くにいるようだ。
あの2人は特に仲良くなったみたいだな。
ロゼッタとシーラは一応クルーエル家主催という事もあって、挨拶回りをしている。
レイさんもあまりこういう場に出てこないのか、男の貴族連中が集まっていた。
故に僕は1人で様々な料理を楽しんでいた。
そんな僕に目を付けた人物がいた。
その人物はゆっくりと僕に近付いて来る。
お付きの者らしき人を連れ添っているのを見るに、それなりの家柄なのだろう。
物好きもいるものだと思ったがその人はハットを深く被り目元が見えにくい格好をしている。
お付きの人は辺りをキョロキョロ見回しながら張り付いている。
だいぶ警戒しているな。
そんなにも大物なのだろうか?
出来るだけ相手をしたくなかったが、明らかに僕を見て近づいて来ている。
仕方ない、一旦料理を楽しむのは後にしよう。
ただ1つ気になるのは、何故かルーザーとエリザの目が点になっていたことだ。
それに加えて周囲で談笑する貴族や大商人もチラチラとその怪しい人物を見ていた。
「き、君はレオンハート家の子かな?」
少し上ずった声で話し掛けてきた。
明らかに普段の声と変えて喋っているように聞こえる。
「そうですけど。失礼ですが貴方の名前は?」
「おお、すまないな。余、いや私は、えぇと、ガイン……ア、アステリアム辺境伯だ。まあ辺境伯だから君は知らないだろうがね。」
「ガイン・アアステリアム辺境伯でしたか。大変失礼致しました。」
思ってた以上に大物だったので膝を付き片手を胸に置く仕草をすると、ガイン辺境伯は慌てて僕を立たせた。
「ああ!いやそんなに畏まらなくていい。それと私の名前はガイン・アステリアムだ。アが1つ多かったな。」
「失礼しました。僕はマリス・レオンハートです。」
「うむ、マリス君か。ふむふむ、なるほど。」
手を顎にやり、見定めるかのような目線で上から下までじっくりと見てくる。
なんだこの人は。
男色の趣味でもあるのだろうか。
それに、横にいる従者らしき人は俯いてしまい顔を上げようとしない。
「あの……何かご用でしょうか?」
「ああ!いやまあそのだな、君はあのアモンの息子だろう?ならばやはり魔法が得意だったりするのかね?」
何か僕を探っているような雰囲気で聞いてくる人だな。
しかし辺境伯にも名前が通っているのか父さんは。
有名人の息子というのも楽ではないのかもしれないな。
「まあそうですね、魔法は少し得意、かと思います。」
「ほう!やはり!ううむ、なるほどなるほど……。」
また顎に手をやりジッと見つめてくる。
いちいち間が空くのは何なのだろうか。
それにこの人と話していると、チラチラ他の貴族が見てくるのは如何なものか。
目立つのは極力避けたいのだが、目の前にいるのは辺境伯だ。
じゃあ、と立ち去る訳にもいかずこの人が去るまで耐えるしかなかった。
「もし君さえ良ければ学園を卒業した後宮廷魔導師になるのはどうかね?高待遇で肩書きも素晴らしいものだ。」
何故いきなりこの人はそんな事を口にするのだろうか。
ただ、僕は決めている。
宮廷魔導師にはならないと。
静かで自由な暮らしがしたいのだ。
なので返答は決まっていた。
「いいえ、宮廷魔導師になるつもりはありません。」
その瞬間、ガイン辺境伯の顔は固まった。
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