クラブ活動でも目立ちたくない⑨
今訓練場の真ん中に僕が1人突っ立っている。
クラブの皆は結界の外にある観覧席から見ており、そのまた離れた場所にマリエッタさんが座っている。
僕の目線の先には木で出来た人形が置いてある。
集中する為に目を瞑り魔力を練り始めた。
訓練場の中央に立つマリスをレイは不安な顔付きで見ていた。
また派手にやってしまうのではないかと想像してしまう。
ロゼッタとシーラは虹色魔導師とはどの程度のものなのかワクワクした表情で見守っている。
フェイルは真面目な顔でマリスを見据えていた。
今から見せる魔法を教えてもらうとなれば、今後の戦いに取り入れることになるだろう。
そう思い魔力の流れやどれほどの威力かをしっかり見定めねばならないからだ。
ルーザーとエリザは結界の中にいて見てはいないが神獣を一撃で殺した際のやり取りを聞いており期待した眼差しを送っている。
マリエッタはおっとりした態度は相変わらずだが、目だけは真剣そのものだった。
魔導師としての血が騒ぐのか、マリスの一挙手一投足を見逃すべきかとジッと見つめている。
そんな事は露知らず、マリスは徐々に魔力を高めていく。
まずはマリエッタさんに魅せる魔法を披露しなくてはならない。
三色魔導師であればこれくらいだろうと思う魔力まで高めていく。
実際は四色魔導師クラスの魔力量になってしまっているが、その事にマリスは気付かない。
既に頭の中は新しく考えた魔法の事でいっぱいだ。
準備の整ったマリスはいよいよ魔法発動の体勢に入った。
左手を前方に突き出し魔法陣を展開する。
「白き破壊の雑音。」
魔法名を口にすると、前方の空間が歪み始める。
耳を劈く爆音を奏でたかと思うと目の前が真っ白になった。
衝撃波が訓練場全体を揺らす。
圧を感じる程の衝撃波により見守っていた全員が目を瞑る。
"パキリ"
何かが割れる音が不安感を募らせる。
まさか本当に結界を破ったのではないかと、レイは恐る恐る目を開く。
訓練場に置かれた木の人形などまるで最初からなかったかのように綺麗に消え去っていた。
空を見上げるとそこにはヒビの入った結界が目に映る。
レイは流石に結界にヒビを入れただけかと胸を撫で下ろしたが、隣にいたシーラがアッと小さく声を上げた。
そこで察したのかロゼッタがある方向を指差す。
それに釣られて全員が目を向けると、そこには必死の形相で両手を上げ額に汗を垂らしたマリエッタの姿があった。
「違う……さっきのガラスを踏んだような音は結界にヒビが入っただけじゃないわ。宮廷魔導師が3人がかりで張った結界を瞬時に砕き危険を察したお母様が張った結界にヒビを入れた音よ……。」
恐ろしい者でも見るかのように訓練場の中央に佇むマリスを見ると、それはそれは清々しいやり切ったという顔をしていた。
全員の気持ちがその時ばかりは被る。
あの馬鹿はまたやらかした、と。
虹色魔導師だという事を隠す手伝いをして欲しいと言われていたがまさかいきなり挑戦状を叩きつけられると思っていなかった彼女達は、何も言えずただ呆然としていた。
そんな事になっているとは露知らず、マリスは大声で何やらこちらに向かって叫んでいた。
耳を澄ますと余計に腹が立つような事を。
「おーい、どうー?ちょっと気合入れちゃったけど無属性だしド派手な魔法だと思わない?これならみんな習得したくなるんじゃないか?」
ロゼッタは今すぐマリスの頬を引っ叩いてやりたかったが、いかんせん物理的に距離がある。
マリスは何も知らずスタスタと歩いて近付いてくるが、火に油を注ぐような事をするなと、ミアは声を大にして言いたかった。
「いやーちょっとさ、やっぱ僕も男だしあんな美人な人が見てたら気合も入ってしまったよ。」
「「「………………。」」」
誰も何も言ってくれない。
派手さが足りなかったのか?
とも思ったがそんなはずはない。
結界をぶち抜いてもう1枚の結界にヒビまで入れてやったのだ。
これで派手さが足りないと言うのなら、それは欲張り過ぎだと怒ってやろうと思っていると、マリエッタさんが息を切らしながら走り寄ってきた。
「マ、マ、マリスさん!?先程の魔法は一体!?」
凄い慌てようだ。
汗も垂らしているしせっかくストレートに流れる綺麗な髪も振り乱したように所々ハネている。
「マリエッタさん、どうですかね?割りと自信があったんですけど。」
「割りと!?あれよりまだ上があるのかしら!?」
興奮状態のマリエッタさんはえらく取り乱している。
ちょっと結界が脆かったが、マリエッタさんのお陰で訓練場の外まで被害が及ぶことはなかったんだから許してくれないかな。
まさかあんな簡単に破れるなんて思わないじゃないか。
結構怒りが溜まっているのか、マリエッタさんは顔を赤くして魔法がどうとか魔力がーとか喚いている。
今はソッとしておこう。
時間を置けば許してくれるかもしれない。
喚くマリエッタさんを放置してみんなの所へ戻ると全員が微妙な顔をしていた。
「おいおい、あれ結構派手な魔法を考えたんだぞ。少しは驚いて欲しいんだけど。」
誰も口を開かないから僕からそう告げると、レイさんが一番に話し掛けてきた。
「マリス、貴方は本当に隠す気があるのかしらね?」
「隠す気?いやもちろんゴニョゴニョ魔導師の事は秘密にするつもりですけど。」
一応少し離れているとはいえ、マリエッタさんがこの場にいる為虹色の部分を少し濁して話す。
「目立ちたくないというのは嘘に思えて仕方ないよ。」
ルーザーまでそんな事を言う。
失礼だな、これでも帝国で目立ちたくない人ランキングでは一位だと自負しているんだ。
「あーもしかして結界壊しちゃった事?あれは仕方ないよ、なんか脆かったし。それにちゃんと三色魔導師程度の魔力で放ったよ。」
「脆かった!?脆かったと言ったのかしら!?」
ロゼッタが凄い勢いで噛みついてくる。
まーたプリプリしちゃって。
「そんなプリプリするなって。確かに宮廷魔導師?の結界破っちゃったのは悪かったけど、ほら、マリエッタさんが守ってくれたから外は無事だよ。」
流石は四色魔導師のマリエッタさんだ。
三色程度の魔力とは言え僕の全力を防いだんだから、やっぱりエリートは違うなと実感させられる。
しかしロゼッタは止まらなかった。
「アンタが壊した結界は宮廷魔導師が3人がかりで構築した結界魔法よ!!!それを壊せる三色魔導師が何処にいるってんのよ!!!」
ここに居るんだけど。
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