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虹色魔導師は目立ちたくない  作者: プリン伯爵


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クラブ活動でも目立ちたくない⑧

エリザさんから尊敬の眼差しを受けつつ、ルーザーはうんうんと頷き、護衛の射殺すような目線を浴び続け、やっとクルーエル家に到着した。


もうあの護衛が恐ろしくてたまったものではない。

ジンやミアを見ていると随分笑顔が溢れている。

ロゼッタの方の馬車では楽しげだったらしい。

僕もそっちが良かった。


僕の方はというと、エリザさんに気に入られたのかずっと僕のそばから離れない。

そのせいで女性騎士の護衛も着いてくる。


「あら?エリザ様、随分マリスさんと仲良くなったのですね。」

目聡いシーラがその様子を見ていたようで近付いてきた。

変な事はしてないだろうな、という目線付きで。


「そうなの!マリスさんって同じ歳なのに凄い賢い方ですわ!!私はマリスさんを見習いたいと思ったの!!」

ギロッとシーラが睨んでくる。

僕は何もしてないよ。

ただ、ちょこっとそれらしい事を喋っただけだ。


目の前に佇む巨大な門とその後ろにある屋敷を眺める。

それにしても大きな豪邸だ。

男爵と公爵では天と地程の差があると実感させられる。

門を抜けて敷地内に入ると、長いレンガ敷きの道が本邸まで続いている。

今回行くのは本邸ではなく、その横に併設された訓練場だそうだ。

もちろんその建物も学園の訓練場並みにデカイ。


「ここが我がクルーエル家の訓練場よ!ここなら人目に付かないし派手にやっても構わないわ!一応宮廷魔導師が結界魔法を施しているし、外に魔法が漏れる事なんてないと思うしね。ま、アンタの魔法がどれほどの威力かは分からないし絶対大丈夫とは言い切れないけれど。」

信用ないなぁ。

流石の僕でもそれくらいは弁えているつもりだ。

人様の家の結界を突き破るほどの威力がある魔法をぶっ放したりなんかしない。


ロゼッタから訓練場の説明を受けていると、1人の女性が近付いて来た。

誰かと思いジッと見つめていると、何処かロゼッタとシーラに似た顔付きをしている。

お姉さんだろうか。


クルーエル姉妹は2人だと聞いていたが少し歳の離れたお姉さんがいるのかもしれない。

一番近い所にいた僕が最初に挨拶をする。


「初めまして、マリス・レオンハートです。本日はロゼッタさんのご好意でこちらの訓練場を使わせて頂きます。騒がしいかと思いますがご容赦願いたく思います、えっと、ロゼッタのお姉様。」

その瞬間空気が凍った気がした。

その場で雑談していたレイさんやフェイルなんかも喋るのを辞めている。

何だと思い振り返るとロゼッタとシーラは口をモニョモニョさせて何とも言えない表情をしていた。


「あら、嬉しい事を言ってくれますわねマリスさん。」

嬉しい事とは?

「では改めて自己紹介を。私はマリエッタ・クルーエル。ロゼッタとシーラの母親ですわ。」

白い髪の美しい女性は自分を母親だと言う。

そんな馬鹿な話があるか。

どう見たって20代にしか見えないぞ。


「いやいや、御冗談を。流石の僕でも分かりますよ。」

「いや、何も分かってないのはアンタよ……。その人はアタシのお母様。まあ見た目が若いのは同意するけどね。」

なんだって?

今年一番の驚きだ。

肌の艶といい柔らかい微笑みといい16の娘がいるとは思えないぞ。


「お世辞が上手ですのねマリスさん。」

ウフフと笑うマリエッタさんの年齢が知りたい。

でも女性に年齢を聞くのはご法度だ。

もしも、16歳で結婚し子供を生んでたとしたら32歳か。

まあそれでも30代には見えないが。


「ロゼッタちゃんも嬉しい事を言ってくれるわね。」

「お母様、これからアタシ達はクラブ活動を始めるんだから本邸に戻って。」

「あら、そんな邪険にしないで?私これでも四色魔導師なのよ?何かお手伝いできる事があるかもしれないわ。」

おっとりとした雰囲気を纏っているマリエッタさんはまさかの四色魔導師だった。

佇まいからは想像できない。


「マリス!サッサと始めましょう!お母様はこうなったら意地でも動かないわ。」

こんなおっとりした母親から何故こうも正反対の娘が生まれるのか、その謎が知りたい。


「あ!でもお母様、ここで見たことは外部に漏らさないでよ?いずれは公表する事だけどまだ秘密にしてるんだから。」

魔法創造の事を言ってるのだろう。

まあ珍しい事に変わりはないが虹色魔導師だという秘密に比べたら大した事ではないし漏らされた所で、だが。


「マリス、君は何か勘違いしてるみたいだね。いいかい?魔法創造が出来る魔導師はごく僅か。珍しいどころか確実に色んな所から引っ張りだこになるよ。」

ルーザーがそう教えてくれたが、あまり実感が湧かない。

そもそも魔法創造ができる人物なら割りと身近にもいるのだから。

確かマリネ・フォンディーヌさんだったか?

レイさんの知り合いでもあり魔導具店を経営している女性だ。

僕が身につけている魔導具もまたその店で買った物だ。

だからだろうか、特段凄い珍しいという感覚がない。


すると魔法創造という単語に興味を持ったのかマリエッタさんが僕の目の前までやってきた。

「マリスさんは魔法創造ができるのかしら?」

「ええ、まあ多少、ですが。」

多少、ちょっと濁しておくのがポイントだ。

あまり自信はないんです、と聞こえるだろう。


「楽しみですわ、私あちらの席で観戦させて頂きますわね。」

「はい、構いませんが。ただ念の為結界から中には入らないようにお願いします。」

万が一結界が破れたことを考え安全第一だと伝えると、マリエッタさんの目が細まる。


「マリスさんはこの結界がもしかすると耐えられないかもしれないと、そう仰られるのですか?」

若干声色が静かになり、試すような言い草をする。


「万が一、ですよ。破るつもりはありません。」

「破るつもりは、ない……ですか。」

気になることがあるのか、言葉尻が小さくなったが、その後は何も言わず用意していた席に戻って行った。


「ちょっとマリス……!」

小声でレイさんが耳打ちしてくる。

よからぬ発言はしてないはずだが。


「さっきの言い様だと、貴方は破ろうと思えば破れると言っているのと同じよ?分かっているの?この結界は宮廷魔導師が張った結界なのよ?」

それが何かだめなのだろうか?


「分かってないわその男は。いいマリス?この結界は宮廷魔導師が3人がかり(・・・・・)で張った結界なのよ。それを破ろうと思えば破れる、なんて発言すれば誇張しているのか本当なのか怪しむのが当然でしょうが。」


なるほど、僕の実力を疑っていると。

それならば見せなければならないな。

あんな美人で若い女性に良いところを見せないなど、男が廃る。

だから僕は胸を張ってこう答えた。


「任せてくれ、しっかりやってみせるよ。」

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