クラブ活動でも目立ちたくない①
数日前から編入生が入ってきた。
アスカ・シラヌイという着物を着た女の子だ。
大人しそうな見た目とは裏腹に、うるさい、うざ絡み、声がデカイの3コンボを決めてくる。
だから僕は授業が終わるとすぐに教室を抜け出して、学園内をブラブラする。
意外と知らない場所があったりとこれはこれで楽しいものだった。
本当はジンとミアのいる教室まで行って雑談するのもいいなと思ったが一級クラスと二級クラスは少し距離がある。
流石に次の授業に間に合うように動くとなれば、そんなに長い間雑談も出来ない。
なので2人に会うのは諦めた。
適当にブラつき上級生の教室の前を歩いていると前方から数人侍らして歩いてくるド派手な女性が目に入る。
金髪縦ロールの髪形をしているなんてなかなか珍しい。
邪魔になってはいけないと思い壁際に体を寄せたが何故かその女性は僕の前で足を止めた。
もしや頭を下げなかったから不敬だとでも言うつもりだろうか?
いや、流石に学園内でそれはないか。
そんな事を考えているとその女性が口を開く。
「貴方がマリス・レオンハートね?」
なぜ知っているのだろうと思ったがあの決闘を見てたのなら知っててもおかしくはない。
「はい、そうですけど。」
「やっと見つけたわ!!!いつ教室を見に行ってもいないんですもの!!!こんな所を歩いているなんて!」
デカいなぁ声が。
そんな大きい声を出すと目立っちゃうだろ。
「ワタクシはキャロル・ドレッドムーン辺境伯!まあドレッドムーンの名は知っていますでしょうが名乗るのは礼儀ですから!」
「いえ、知りませんでした。」
周囲がどよめく。
しまった、何故こうも僕の口は勝手に言葉を紡ぐのか。
辺境伯といえば、伯爵とも侯爵とも違い辺境の地を管理する侯爵と同等クラスの地位を持つ爵位だったはず。
男爵なんぞ簡単に潰せてしまう。
冷や汗を流し、即座に頭を下げる。
「申し訳ございません。僕の知見が狭くドレッドムーン辺境伯の名を知りませんでした。」
「ふむ、すぐに自身の失態を認めるその姿は好感が持てますわね。なるほど……いいわね!バン!確か生徒会の席で空いてた席があったでしょう?」
バンと呼ばれた男が後ろからすっと前に出てくる。
その動きは洗練されており、恐らく何かしら武術の嗜みがあるように思えた。
「はい、風紀委員の席が今は空席でございます。」
「風紀委員……まあいいわ、マリスだったわね?貴方風紀委員になりなさい。」
「は?」
あまりに突拍子もない話につい反射的に口を開いてしまった。
「だから風紀委員になりなさい。貴方まだクラブには属していないのでしょう?」
なるほど、この人もしかして生徒会の人だな。
だが残念ながら僕は生徒会に入れない。
頼まれても入るつもりはなかったが。
「いえ、僕がクラブを立ち上げました。」
「な、なんですって!!ちょっとバン!そうなの!?」
いちいちバンという人に振るあたり、多分キャロルさんの手下みたいなもんなんだろう。
相手するのは大変そうだ。
「はい、その者は確かにクラブを立ち上げています。所属するメンバーは皇子皇女殿下、クルーエル姉妹、ワーグナー公爵家の息子、そしてグランバード伯爵の孫、後は男爵家の2人です。」
「そうそうたるメンバーじゃないの!!生徒会なんて一息で潰せる勢いだわ!!」
バンという人が何故そこまで詳しいのかは置いといてキャロルさんはいちいち反応が大きいな。
そのせいで少しずつ人目が増えてきている。
「会長、クラブの部長である者は生徒会に入れることは出来ません。」
「知っているわそれくらい!!……マリス、貴方もしかして生徒会に誘われることを読んでいたのかしら?」
読んでたらそもそもこんな所を歩いていない。
首を振るとキャロルさんは残念そうに肩を落とす。
「せっかくいい人材が見つかったと思ったのに……仕方ないわね、まあいいわ!とにかく!!何か困った事があればワタクシに言いなさい!これでもドレッドムーン辺境伯の当主ですから!!」
当主だと?
この若さで当主なんてあり得ない。
僕が訝しげな顔付きをしたからか、キャロルさんは補足してくれた。
「まあワタクシが当主だと言われても信じないでしょう。ですがワタクシの家は国境沿い、隣国との戦争が絶えませんわ。両親は既に戦死。数年前からワタクシが引き継いでいますの。」
「大変失礼しました。重い話をさせてしまい……。」
当主である理由を語ってくれたが、申し訳ない事をした。
良く考えれば両親が亡くなっていなければこの若さで当主になんてなれない。
訝しげな顔付きをしてしまったことを少し後悔した。
「いいですのよ、もうワタクシの中では割り切れていますから。ですが、貴方真面目ですのね。この若さで当主なんて言うとバカにしたような顔をする者が大半ですのに。まるで、その若さで領地運営など出来るはずがないと言わんばかりに。」
馬鹿にする?
そいつは本物の馬鹿なのだろう。
当主になるということはそれなりの覚悟がなければ出来ない。
この人は両親の死を乗り越え、当主になる道を選んだのだ。
誇らしい事じゃないか。
「考えられませんね。その若さで領地運営など簡単ではないというのに。」
「フフフ、貴方見る目がありますわね。いいですわ!!何かあったら必ずワタクシ、キャロル・ドレッドムーンが力になりましょう!!!オーホッホッホ!!」
あんまり嬉しくないな。
この煩さは出来るだけ近くに居て欲しくはない。
この人に頼る事があるなら、それは余程の事になるだろう。
一応礼をしてその場を後にする。
それにしても生徒会長か、なかなか大物だったな。
何故だろうな、僕の周りはもっと平凡な者で埋め尽くしたいのに輝かしい人ばかりが近寄ってくる。
平穏な日々はまだまだ遠そうだ。
ブックマーク、評価お願いいたします!
誤字脱字等あればご報告お願いします。




