最終章 エピローグ
最終話となります!
最後の戦争からおよそ6年の月日が流れた。
長いようで短い年月だ。
様々な国を巡り多種多様な文化を見て来た。
旅は人を成長させるというけれど、確かにその通りなのかもしれない。
僕の気持ちにも変化はあった。
まあだからこそ帝国に帰る事にしたんだけど。
「アステリア帝国に戻って来るのも6年振りか……。」
久しぶりに見た城門は荘厳な造りであった。
とても懐かしい感覚になる。
でも6年も経っていれば皆僕を覚えているだろうか。
フィンブルは人間ではない為身長も見た目も一切変わってはいない。
しかし僕は人間だ。
背も大きくなったしそれなりに大人の風格が出たのではないだろうか。
帝都に入ると賑わいは昔と変わっていなかった。
まずは学園を見ておきたいな。
たった1年しか通っていなかった学園だが、思い出はいくつもある。
魔法対戦に決闘、ああそういえばキャンプなんてものもやったな。
グランバード学園の見た目は一切変わっていなかった。
多少修繕されたのか前より綺麗な校舎になっている。
「ここにはもうお前の友人はいないだろう。」
「まあね。でもまずは最初に見ておきたいじゃないか。でもよく考えたらみんなに会いに行くのって難しくない?」
「当然だ。何しろ帝都を6年も離れていたのだぞ。各々新たな道を歩んでいるであろうな。」
それにみんな貴族ばかりだ。
実家に戻っているか、フェイルだったら騎士団にいそうだけど。
「何か合図をしてみればよいではないか。お前にしか出来ぬ事だってあるだろう。」
「なんだよ僕にしか出来ない合図って。」
連絡用魔道具で一応一報は入れようかとも思ったが、なんとなくそれではつまらない。
せっかく久しぶりに会うのだからサプライズがいい。
「空に向けて七色の魔法を放ってみろ。すぐに帝国全土に広まるぞ。虹色魔導師が戻って来た、とな。」
「ええ~それめちゃめちゃ目立つじゃん。恥ずかしいよそれは。」
「面倒な男だな貴様は……。」
呆れた様子のフィンブルだがこう見えて案外面倒見がいいのだ。
じゃないと6年も一緒に旅は続けられなかっただろう。
「ま、とりあえず帝城に向かおうか。あそこなら二人の友人が必ずいるからさ。」
言うまでもない、ルーザーとエリザさんだ。
皇子と皇女なのだから滅多な事では帝城から離れる事がない、と思う。
帝城の前まで行くと少し緊張してきた。
前は何度か足を運んでいたが、よく考えてみればたかが子爵の分際でちょこちょこ足を運んでいい場所ではないのだ。
門の前で右往左往していると、門兵が不審に思ったのかマリスらへと近づいて来た。
「君、こんな所で何をしている。」
「あ、えっと……ルーザー、いますかね?」
「何?今何と言った。」
あれ、聞こえなかったかな。
仕方ないもう一度。
「ルーザーとエリザさんはいますか?」
「貴様!殿下を呼び捨てにするなど不敬が過ぎるぞ!」
そうだった。
なんだか友達の家に来た感覚で言ってしまったが、彼らは皇族だ。
門兵の反応は間違っていない。
「ん?ちょっと待て。その銀髪……まさか。いや、そんな筈は。」
何故か門兵はフィンブルを見て、首を傾げている。
まあ彼女はとても美人だからね。
よく色んな場所でフィンブルは注目を浴びていたものだ。
「こ、ここで待っていろ!絶対だぞ!!」
門兵はそれだけ言い残すと走って城内へと戻って行った。
言われなくても待つけどさ。
もしかしてフィンブルに気付いたのかな。
昔何度かフィンブルも帝城に来ていたし覚えていてもおかしくはない。
しばらく門の前でボケ―っと待っていると慌ただしい声が聞こえ始め、大きな音と共に門が開いていく。
「マリス!!!!」
中から飛び出してきたのはルーザーとエリザさんであった。
フィンブルの事を伝えたのかな。
それにしても滅茶苦茶イケメンになってるなルーザー。
一瞬誰かと思ったわ。
エリザさんも美少女だったのが、なんとも美しい大人なしめの女性に変わっていた。
「ルーザー、エリザさん、ただいま。帰って来たよ。」
「待っていたよマリス!!!すぐに彼らを呼び戻せ!!急ぐんだ!!」
ルーザーは傍にいた近衛に指示を飛ばすと、近衛もアワアワしながら走り去って行く。
「マリスさんおかえりなさい。ずっとお待ちしておりました。」
「6年振りだね。それにしても綺麗になったなぁ。あ、いや昔も綺麗だったけど。」
「ふふふ、持ち上げても何も出ませんわ。」
6年でこんなにも変わるものかと僕は開いた口が塞がらなかった。
「フィンブル様も長旅お疲れ様でした。」
「うむ。……なかなか興味深い旅であった。」
しっかり神獣であるフィンブルへの礼も忘れない。
まさしく皇女として相応しい態度だ。
「と、とにかくマリスもフィンブル様も中に入ってくれるかい?」
「あ、いいの?なんか手続き的なのは――」
「いらないいらない!そもそも私が許可を出しているのだから、誰も文句は言わないし言わせない。」
そういうもんなのか。
案外帝城って簡単に入れるんだね。
帝城の中はほぼ変わっていなかった。
といってもあまり覚えていないが、多分変わっていない気がする。
ルーザーの案内で客間へと通された僕とフィンブルはソファへと腰を下ろした。
ずっと立ちっぱなしだったから丁度よかった。
ソファもふかふかだ。
良く見ると扉の所で泣きそうな顔で突っ立っている人がいた。
さっきの門兵さんだ。
どうしたんだろうか。
「済まない、彼も悪気はなかったんだけど、流石に6年も経っていてマリスだと分からなかったらしくて……許してやってくれるかい?」
許すも何も怒ってなんていないが。
しかし門兵の顔色は真っ青で今にも気絶しそうな表情をしている。
「もちろん怒っていないよ。門兵としての務めを果たしたのに僕が怒るのは筋違いだろ。」
「だそうだよ。だから大丈夫だ。仕事に戻って構わないよ。」
「は、はい!!あ、ありがとうございます!!」
泣きそうだった門兵はボロボロ涙を流しながら持ち場へと戻って行った。
まあ皇子と皇女がいて神獣までいたら、粗相をやらかしたと自責の念にかられて泣きそうになるのは分かるよ。
僕がその立場だったなら吐いてたかもしれない。
「それで、ここに通された理由は?」
「ふふふ、少し待っててくれるかい?すぐに理由が分かるよ。」
ああ、もしかして昔の友人達を呼んでるのかな?
それならまだしばらく来ないだろうし、紅茶でも飲んで待つとしよう。
僕が立ち上がると察したのかすぐにエリザさんが立ち上がり紅茶を入れ始めた。
皇族にお茶を入れて貰うのは気が引けるんだけどな。
「私もかなり上達したんですよ。紅茶の入れ方を侍従から学んだので、美味しく淹れられます。」
「じゃあ、お言葉に甘えようかな。」
客人みたいな扱いだな。
いや、普通の客人ですらないか。
皇族が紅茶を入れるってどんな客人だよ。
「あ、皇帝陛下に挨拶してないけど大丈夫かな。」
「それは後でいいさ。今は会議中だからね。どうせマリスが戻って来た事を知らせると会議をすっぽかして飛んできてしまうから。」
皇帝陛下が会議か。
何か重要な話し合いなのかな。
それならなかなかタイミングが悪かったかもしれない。
「ルーザー殿下、先程グロリア子爵が現地へと跳びましたのでもうじきかと。」
近衛がルーザーへと耳打ちする。
部屋の中だから聞こえてるけどね。
グロリアさんか。懐かしい名前だ。
転移魔法を使いこなしている魔導師だったかな。
しばらくするとバタバタと廊下を走る音が聞こえて来た。
誰が最初かな。
予想はロゼッタだ。
いや、フェイルだっていう可能性もなくはないな。
扉が勢いよく開かれると飛び込んできたのは、倭国でよく見た着物姿のアスカであった。
「マリス―!!おかえりー!!」
「おお、アスカ久しぶり。」
「冷たっ!別れの挨拶もなかったし、ワタシ悲しかったよー!」
そういえば忘れてたな。
まあそれもご愛嬌って事で許してくれないかな。
「まあまあ、じゃあこれあげるから。」
代わりと言ってはなんだが、倭国で買った刀を亜空間袋から出した。
お土産って事で。
「えー!これ倭国の刀じゃん!!すっごい高かったんじゃない!?しかも有名な刀匠の名前が彫ってある!」
どうやらえらく気に入ってくれたらしく、アスカは終始ニコニコしていた。
丁度そのタイミングで扉が再度大きく開かれる。
扉壊れてないかな。
「マリス!!帰って来たのね!!」
「おお!待っていたぞ!!」
「ふふふ、皆さんあまり騒ぐと迷惑ですわ。」
次に入って来たのはロゼッタ、フェイル、シーラだった。
皆この6年で見違えたのか、背も大きくなっているし大人っぽくなっていた。
「みんな、ただいま。」
「「「おかえり!!」」」
懐かしい面々が揃うとやっぱり思い出が頭の中を駆け巡って行く。
楽しかった事も辛かった事も。
「遅いわよ!帰って来るのが!」
「まあまあそうプリプリしないで。」
「プリプリするってもんでしょうが!6年よ6年!全員大人になっちゃったじゃない!」
ロゼッタのすぐ怒るところは変わっていないな。
「後はミアとレイさんとキリカかな。」
「すぐに来るわ。さっき連絡しておいたから。」
なんだ、皆未だに連絡を取り合う仲なんだな。
僕が居なかった6年間の話を早く聞きたいもんだ。
エリザさんは更に増えた面子の紅茶も入れると、みんなで紅茶を啜る。
ああ、久しぶりだなこういうの。
流石皇族御用達の茶葉だ。
香りもいいし、味も深みがある。
今度はゆっくり扉が開かれると、ミア、レイさん、キリカがそこにはいた。
「おかえりなさい、マリス。待ち遠しかったわ。」
「おっそい!帰って来るのが!せめて一報くらいいれろー!」
「師匠―!!私の魔法見て下さい!成長した所を早く見て欲しいんです!」
みんな同時に話すもんだから何言ってるか全然分からない。
とりあえずうんうん頷いておこう。
しかしこれで全員揃ったのかな。
「まずアタシの話を聞きなさい!聞いて驚け!なんと、今のアタシは十二神序列8位よ!どうよ!」
「ワタクシは残念ながら十二神に名を連ねる事はできませんでしたが、新設された魔導師団の団長をやっていますわ。」
「ボクもその魔導師団にいるんだよ!」
「俺は兄上の騎士団へと入団した!まだまだ兄上には及ばないがこないだ副団長のシャーリーさんから一本取ってやったぞ!」
「わ、私も恐れ多いのですが、魔導師団へと入れて頂きました。」
待った待った、一気に喋るんじゃない。
僕の耳は二つしかないんだが。
えっと、ロゼッタが十二神序列8位でシーラが新設の魔法師団の団長、フェイルが帝国騎士団へ入団、ミアとキリカはシーラの下で働いている、ってとこか。
いや、普通に凄くない?
てか十二神になったの?やばすぎ。
「ロゼッタ強くなりすぎじゃない?」
「ふふん!どうよ!!」
「これは参った。」
「気持ちが籠もってないわよ!」
ああいえばこういう。
懐かしさに僕は目頭が熱くなった。
「私は今グランバード学園の学園長よ。お爺様は理事長になったから。」
「ええ!その若さで学園長って凄いですね。」
「流石に虹色魔導師の友人がそこらの魔導師程度だって言うのは恥ずかしいでしょう?だからみんな努力したのよ。貴方に見合うように、ね。」
ちなみに話を聞くと、十二神序列6位にガウェインさん、序列7位にリスティアさんが名を連ねたらしい。
化け物ばっかりだな僕の知り合い。
もう一人の四大公爵家長男カイル・アストレイは魔法研究部へと配属され、今では所長と共に新たな魔道具開発に勤しんでいるようだ。
「さて、アタシ達の今の状況は話したわ。アンタも話しなさい!」
まだまだ聞きたい事は多いんだけど、それはロゼッタ達も一緒らしい。
フィンブルと顔を見合わせると、長くなりそうだと分かったのか立ち上がると彼女は部屋から出て行った。
多分皇帝陛下の所に向かったのかな。
まあ帰って来た事くらいは報告しておいた方がいいだろうし、フィンブルもそれを察してくれたようだ。
旅の話は6年分ある。
全部話していたらキリがないが、かいつまんで話すとしようか。
皆僕の話を聞きたくて目を輝かせていた。
「そうだな何から話そうか……じゃあ、僕とフィンブルが最初に訪れた倭国での話なんだけど――」
最後までご愛読頂きありがとうございました。
これにてマリスの物語は終わりとなります。
一年と少し、毎日投稿(二日ほど投稿忘れがありましたが、、、)は大変でしたが最後まで書ききる事が出来たのも沢山の方に読んで頂けたお陰かと思っております。
モチベーションの維持はなかなか難しいですが、呼んでくれている方がいると思うと途中で辞めるなんて気持ちになる事はありませんでした。
もしかしたらまたいずれアフターストーリーを書くかもしれませんし、書かないかもしれません。
初めて完結まで走り切った長編小説でしたので、文章も荒かったりいまいち表現が薄かったりと読みにくい部分も多かったかもしれません。
次はこの経験を糧にまた新しい作品を書いていきますので、是非読んで頂ければと思います!
本当にありがとうございました!
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