決闘の時も目立ちたくない⑨
「ガイがいなくなった?」
どうやら、決闘後医務室に運ばれたガイだったが、医者が席を外していた間にいつの間にか姿を消していたようだ。
何故かはわからないが、カーテンに少し焦げ目が付いており魔法を使った形跡が残っていた。
「ふん、まあいいんじゃないの?アンタも復讐されなくて清々してるでしょ?」
ロゼッタはそう言うが、僕は一切心配していない訳ではない。
ガイは何の為に姿を消したのか分からない以上、今後警戒を怠らない方がいいだろう。
ガイが姿を消した事で教師陣による捜索が行われたが一切の痕跡が見つからなかったそうだ。
生徒が一人消えただけなら対して問題にはならないが、ガイの家は伯爵家。
それなりの爵位を持った家庭の子息であり、問題にならない訳がなかった。
全員寮に帰らされる事になり、本日外出は禁止とされた。
恐らくガイが消えた原因は学園内にあるかもしれないとの事で邪魔な生徒はさっさと帰そうといった判断だろう。
「それで、アンタの部屋はどこよ。」
「ん?あっちだよ。」
普通に聞かれたせいで普通に答えてしまったが、ロゼッタが何故僕の部屋の場所を聞いたのか。不穏な気配がする。
「そう、じゃあ今日は早く授業も終わった事だしアンタの部屋でお茶でもしましょう。」
お茶でもしましょうじゃねえよ。
何普通に僕の部屋に入ろうと考えているんだ。
貴族の娘だという認識がないのかこいつは。
「いやいや、バカなのか?良く考えてみろ、公爵家の娘が男爵家の男の部屋に入る?世間の目が怖すぎるだろ。」
「いいじゃないの、そんなの放っておけばいいわ。」
ダメだ、このままいけば確実に僕の部屋に行く事になる。
なんとか助けてもらおうとシーラに視線を向けると、何となく察したのか少し頷いてくれた。
「お姉様、流石に一人で男の部屋へ行くのは醜聞が悪いですわ。ここは他の者も誘って皆でお茶会をするのがよろしいかと。」
「シーラいい事言うじゃない!そうと決まれば、マリス、さっさと友達に連絡しなさい!」
ダメだった。
シーラは裏切ったようだ。
ジトっとした目つきでシーラを睨むと、ニヤリと微笑み返された。
なるほど、シーラはとことん僕の嫌がる事をしたいようだ。
「フェイルと、ルーザー達も呼ぶか。」
「それとアンタ、同じ男爵家の友達がいたでしょ、その子達も呼びなさい。せっかくだからアタシお気に入りの紅茶を振舞ってあげるわ!!」
ジンとミアの事を言っているのだろう。
ただ普通に呼んでもあの二人は絶対に来ない。
しかし僕の部屋でお茶でもしようと誘えば来る。
要はロゼッタ達が居るという事を内緒にしておけばいいだけだ。
「分かったよ。じゃあ何時に集合するんだ?」
「ん?今からよ。アタシの部屋から紅茶を持ってくるから、部屋で大人しく待ってなさいよ。あ、それとついでに掃除もしといてね、汚い部屋だと紅茶も美味しくなくなるわ。」
それだけ言うとさっさとシーラを連れて自分の部屋へと入って行った。
寮は全部で3つある。
もちろんクラスごとに分かれており、僕やロゼッタのような一級クラスとジン、ミアのような二級クラスとは寮が違う。
級によって寮は違うし、部屋の広さや豪華さも違う。
三級クラスは2、3人入れる程度の広さしかないが、二級クラスとなると部屋の中に部屋があり用途別にできたりシャワーが完備されており便利さを兼ね備えている。
室内設備もまったく違っており、一級クラスの寮となれば風呂まで付いていたり部屋の広さが二級クラスの倍ほどになる。
10人泊まっても余裕があるくらいの広さだ。
1人で住むには持て余すし、もはや実家の自分の部屋より豪華である。
連絡用魔道具でジンとミアに声を掛けると、着替えたら行くと返答があった。
部屋に来るメンバーの事は言っていない。
フェイルも誘うと、すぐに行くと返事がありバタバタしている音が聞こえたから多分素早く着替え始めたようだ。
ルーザーとエリザさんに至っては、まだ連絡先を登録しておらず部屋まで向かう事に。
皇族の部屋は寮の最上階全てである。
ルーザーとエリザさんで半分ずつとはいえ、部屋のデカさは僕の部屋と比べると数倍だ。
部屋のドアの前には侍女らしき人と護衛らしき人が立っている。
僕が最上階に上がってくると不信な目付きを向けてくるところをみると、本来誰も上がってくる事がないようだ。
「マリスです。あの、ルーザーはいますか?」
「皇子に向かって呼び捨てだと?改めよ。」
いきなり怒られた。
まあ確かにそれもそうか。
自分達が敬い傅く相手に対して、タメ口で話しかける奴がいたらムカつきもする。
「すみません、ルーザー君は居ますか?」
「……部屋におられる。何用だ。」
「えっと、僕の部屋でお茶会するんで誘おうと思って。」
「……そこで待っていろ、話をしてくる。」
護衛の人が侍女に合図し、侍女は部屋の中へと入って行った。
僕はと言うと、護衛の人に見つめられながら突っ立っている。
さっさとルーザーの連絡先は登録しておいた方がいいな、毎回これでは面倒くさすぎる。
しばらく待っていると、侍女と共にルーザーが出てきた。
「マリス!お茶会だって!?」
テンションが高いのは気のせいだろうか。
「あ、ああ僕の部屋でやる事になった。ロゼッタが美味しい紅茶を持ってくるって言ってたからまあ味は保証できるんじゃない?」
「もちろん行くよ!!!あ、エリザも誘っていいかい?」
僕は頷く。
流石にルーザーだけ誘ってエリザさんは誘いませんでしたとなると、泣かせてしまいそうだ。
「じゃあ何かお菓子でも持って行くよ!!」
「ありがとう、じゃあ部屋で待っとく。あ、それと僕の友達も呼んでるから。」
「私とも仲良くしてくれると嬉しいなぁ!」
「……まあそれはルーザー次第、と言っておく。」
すまない、ジン、ミア。
君達も皇族の友達になってしまいそうだ。
ルーザーと話している間は護衛と侍女は一切口を開かなかった。
口を挟むのは不敬だからだろうか。
ただ、タメ口で話してるのが気に食わないのか目は吊り上がっていたが。
あ、ついでにレイさんも誘おう。
レイさんは唯一の常識人だ。
彼女一人いるだけでだいぶ助かりそうだ。
主に、僕の秘密の事で。
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