決闘の時も目立ちたくない②
ジンとミアと別れ一級クラスの教室に戻ると、少し騒がしかった。
やはりさっきのイベントが尾を引いているのだろう。
「おい!マリス無事なのか!!!」
マリスが自分の席に座ると同時に真っ先にフェイルが傍まで来た。
親友の危機に真っ先に駆け付ける所を見るととても友達思いらしい。
まあでも親友ではないが。
「ああ、ルーザーが助けてくれたよ。」
「俺の親友に罰を下すなどとふざけたことを抜かしたらしいなオルランド伯爵の者が。」
「何もなかったからいいよ。」
「む、そうか。お前がいいと言うのなら辞めておこう。せっかく俺の剣技を披露する時が来たかと思ったのだがな。」
何もなかったって言ってよかった。
もう少しでフェイルが暴れ回るところだった。
しかし教室を見回してもガイと取り巻きはいなかった。
恐らく戻りづらくて授業ぎりぎりに帰ってくるつもりだろう。
「やっぱりアンタが一人になるのを狙ってたわね。」
「知ってたのかロゼッタ。」
「見りゃ分かるでしょ、どう考えてもアンタに嫉妬してるなって感じしてたしね。」
知ってたなら先に言えよ。
あ、言ってたわ、よく考えたら目を付けられてるって忠告されてた。
あんまり話聞いてなかったから忘れてた。
「そのオルランド?伯爵って結構やばい?」
「やばいって何よ。まあ男爵のアンタからすればヤバイ相手ではあるわね。伯爵の力なら男爵家程度潰せるし。」
それはめっちゃヤバイという状況ではなかろうか。
「ま、そんな事はしないと思うけどね。まずアンタは皇子殿下に好かれてるんだし、なんか食堂で公言したんでしょ?マリスは友人だーって。そんな事聞いてからアンタに手を出そうとするやつは本物の馬鹿ね。」
そういう意図もあって、食堂で格好つけて二回も友人だなんて言ったのだろうか。
「安心していいわよ。そもそも皇子殿下が手を下さずとも今ここにはワーグナー公爵家とクルーエル公爵家がいるのよ?伯爵程度簡単に潰せるわ。」
ロゼッタが初めて頼りがいのある女に見えた。
フェイルは暴れて物理的に潰しそうだが、ロゼッタとシーラは社会的に潰しそうでちょっと怖い。
そうこうしていると扉が開き教師が入ってくる。
「皆さん席について下さい、授業を始めますよ。」
結局先生が来るまでにガイは帰って来なかった。
何のつもりか知らないが、作戦でも練っているのだろうか。
滞りなく授業は終わり、先生が出ていくと入れ違いでガイが帰って来た。
食堂での騒ぎがあったせいでガイを見ると皆黙り込み静かになる。
教室に入って来たその足で僕の所へとまっすぐ向かってきた。
しかし横に座っている人が黙っていない。
立ち塞がるようにロゼッタが僕に背を向けて立った。
「何のつもりかしら、ガイ・オルランド君。」
「ロゼッタ様、そこをどいて頂けませんか。」
「じゃあ理由を教えて頂戴。一応こんなんでも一緒にキャンプをした仲よ。はいそうですかとどくわけにはいかないわね。」
こんなんとは失礼な。
もう少し言葉を選んでくれないかなロゼッタ。
「そこの男に大事な話があるからです。お願いします。」
「ですってよ?どうするのマリス。アンタの返事次第ではアタシはここをどくけど?」
まあ先程のように青筋立てて怒っている様子はなく極めて冷静に見える。
これなら本当に大事な話かもしれないのでロゼッタにどいてもらう。
マリスの目の前に立ったガイは取り巻きも連れていないかった。
誰もが教室内で二人を見守っている。
流石にルーザーも手出しするのは無粋と考えたのか離れた席から見守るだけだった。
しばらく無言の状態が続き、教室内の温度も心なしか冷たくなったように感じる。
そんな無言の状態を破ったのはガイだった。
「拾え。」
その言葉と共に白い手袋が投げつけられた。
ただの嫌がらせにしてはしょぼいなと感じたが、周りの視線は先程見守っていた時と比べて一層険しくなったように見える。
足元に落ちた手袋に手を伸ばした瞬間、ロゼッタが叫んだ。
「拾ってはダメよ!!マリス!!!!」
「え?」
言うのが遅かったのか拾うのが早かったのか、ロゼッタが叫んだ後には既に手袋はマリスの手に握られていた。
しかし真っ先に動いたのはフェイルだった。
「オルランド!!!貴様何を考えている!!!!」
「フェイル様、これは俺とマリスの問題です。口出しはしないで頂きたい。」
「そんなもの知ったものか!!!!貴様はここで切り捨ててくれる!!!」
ワーグナー一家は魔導剣士としても有名な為、フェイルにも帯剣が許されていた。
その剣を抜くが早いか、腕を握り止めたのは尊大な態度で有名なカイル・アストレイだった。
「フェイル!!既にマリスは手袋を拾ってしまった!!お前が手を出せばややこしくなるぞ!!」
「ぐっ!離せカイル!!」
「そのまま動かないで頂戴ね?流石にそれ以上の肩入れは見過ごすわけにいきませんわ。」
その二人に手をかざし魔法陣を展開したのはリスティア・アルバート。
公爵家が全員動いた形となり教室にいる他の生徒は一歩もその場から動けずにいた。
ただ僕は白い手袋を拾っただけなのに、なぜこんなにも騒がしくなってしまうのか。
横にいるロゼッタに聞くのが一番手っ取り早いだろう。
「ロゼッタ、この手袋って拾っちゃダメだった?」
「……そんなことも知らないの?貴方も男爵家の一人ならそれくらい知っておきなさいよ……。」
ロゼッタに呆れられ、何が何やら分からず手袋を握ったまま立ち竦むマリス。
「マリス、お前は何も知らないようだが貴族なら知っていて当然だぞ。」
カイルにそう言われるがまだ理解ができていない。
「いいわ、教えてあげる。貴族が手袋を投げつけた時。それは決闘の申し込みになるのよ。でもそれを拾わなければ決闘は成立しない。拾ってしまえば決闘を受け入れた事になる。マリス、アンタはそれを拾ってしまったから今こういう事になってんのよ。」
「決闘?別に受けてもいいけど、それがなんでこんな大事に?」
「ほんとに何も知らないの?呆れた……いい?決闘は勝った方が生殺与奪権を得るの。負ければ死が待っているのよ。よくてお家取り潰しね。」
想像してたより大事だった。
でもよく考えれば、そんなもの拾わなかったことにすれば良くない?
「拾わなかったことにすれば良くない?って考えてそうだから一応補足するけど、この場には公爵家4人と皇族が2人いるのよ。そんな真似は絶対に出来ないわ。」
なるほどなるほど。
ロゼッタ、君、言うの遅いよ。拾っちゃったじゃないか。
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