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虹色魔導師は目立ちたくない  作者: プリン伯爵


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キャンプ中も目立ちたくない⑦

結界魔法。

数多く存在するが、神獣の攻撃すらも耐えることが出来る魔法は限られている。

ジリアンの使っていた黒い結界、黒き断絶した世界(ブラックカーテン)

神殿魔導師が使用する光の聖域(サンクチュアリ)

無属性魔法の頂点、絶対守護領域(パーシヴァル)

この3つがまず最初に思い付く。

ただしこの3つはとても高位の魔導師が使用することの出来る魔法だ。

もしもマリスが使用できる事が分かれば、それだけでも大事になる。

だからこそ考える。

シーラの質問に対して最適な答えは何か。

生半可な魔法では神獣の攻撃を防ぐ事など到底出来ない。


ルーザーも不安そうな目でマリスを見つめる。

ジリアンはもう目を瞑って聞こえていないフリをしている。


「ああ、それは内緒かな。」

これが最適解だ。

確か魔導師は自分の使える魔法をおいそれと口にするべきではない、という風に習った気がする。


「へぇ、内緒……。殿下方を守った魔法となるとあまり沢山思い付かないけれど、その中のどれか、ということですわね?」

「……黙秘するよ。」

怪しんでいるのか、次はどんな質問をしようかといった表情を見せるシーラ。


「そ、そういえば食後のデザート、楽しみですわ。」

エリザさんの一言がその場の空気を変える。

皇子といいこの皇女様もなかなかいいフォローをしてくれるじゃないか。


「そうだねエリザさん。じゃあ果物を取ってくるよ、近くの川で冷やしているから。」

シーラからの質問を躱し、その場を離れる口実を作ってくれたエリザさんに感謝だ。


「マリスさん、ワタクシも手伝いますわ。」

「い、いいよシーラ。」

「とんでもない。料理までして頂いたのに手伝わないなんて礼儀がなっていませんわ。」

ああ言えばこう言う。

しかしここは負けるわけにはいかない。

シーラと二人きりになんてなってしまえば、何を聞いてくるか分かったもんじゃないからな。


「いや、いいんだ。ほらルーザーもエリザさんも座ったままだろ?」

「皇族の方は動かない事が普通ですわ。」

「じゃ、じゃあほらロゼッタもフェイルも座ってるじゃないか。」

「お姉様の分までワタクシが動きますのよ。フェイルさんは動いても役に立たないでしょうし。」

しれっと悪口が混ざっていたが気にしない。

それにしてもなかなかしぶといな。


「じゃあみんなの食事が終わったら食器の片付けを手伝って貰えるかな?」

「それはしませんわ。」

いやしろよ。

そこが一番手伝って欲しい所だよ。


マリスはこれ以上シーラを押し留める事は無理だと判断し結局2人で果物を取りに行くこととなった。


川まで向かう道中、無言の時間が続く。

僕からシーラに話す事もなければ、シーラも何故か何も聞いてこない。

結局川で冷やしておいた果物を引き上げるまでずっと無言だった。



「マリスさん、十悪と呼ばれる方々を知っているかしら?」

みんなの待つテントに戻る道中で突然シーラが口を開いた。


「十悪?初めて聞いたよ。」

「十悪とは十二神と双角を成す存在です。十二神が善の集団だとすれば十悪は悪の集団。この世界を支配することが目的だそうですわ。」

十悪……聞いたこともなかったが世界は広い。

何処かにそんな集団がいるんだろうな、という程度の認識。

しかし何故そんな事を急に聞いてきたのだろうか?


「ワタクシは貴方がその十悪に属していないか、それだけが心配なのですわ。」

「属してないよ。そもそも十悪って言葉も初めて聞いたし。」

「言うのは誰でも出来ますわ。本当に十悪ではないと証明することができて?」

そんな事を聞いてどうするんだと思ったが、シーラの目は真剣だ。


「証明……か。どうすれば証明できる?」

「貴方が隠している秘密を教えて頂ければ。」

やっぱりそれか。

結局それが知りたいが為に適当な話をでっち上げたのではないだろうか?

それにしてもシーラの目が余りにも真剣で冗談を言うような雰囲気には思えない。


「それは言えない。でももし十悪だったらシーラはどうするつもりなんだ?」

「殺しますわ。」

即答だった。

あまりの早い回答に一瞬戸惑ったが、なんとか平静を装う。


「僕の秘密は教えることは出来ないけど、十悪ではないと信じてほしい。」

「知り合ったばかりの貴方を信用する材料が何一つありませんわ。」

あまり聞くべきではないとは思うが聞かずにはいられなかった。


「シーラ、君は十悪を何故そんなに憎んでいるんだ?」

「あんな屑共はこの世に存在してはいけませんわ。見つけ次第クルーエル公爵家が総力を上げて殺しますわ。」

何故、という問いには答えてくれなかったが家が関係するということは分かった。

それならこれを天秤にかければ、この場を切り抜けられるかもしれない。


「シーラ、君が何故十悪をそこまで憎むのか教えてくれるなら僕も秘密を打ち明けるよ。それなら平等だろ?」

「………………。」

だんまりだ。

どうしても言いたくないのかシーラは口を噤む。


「君がそこまでして言いたくない秘密があるのと同じで僕にも言いたくない秘密はある。一緒だよ。」

「…………分かりましたわ。ですが貴方の疑いが晴れたわけではないという事は覚えておいて頂戴。監視させて頂きますわ。」


監視されるという結果に終わったが、この場での秘密バレだけは避けることができた。

案外僕も口が上手くなったのではないだろうか。

それにしてもシーラはシーラで何かしら重い秘密を持っていそうだ。

正直知りたいとは思わない。

知ってしまったら、絶対に厄介事に巻き込まれるだろうから。


「おまたせ、果物持ってきたから切り分けるよ。」

「遅かったわね、シーラと何かあったの?」

ありましたよ、貴方の妹さんがしつこくてね。とは言わないが適当にその場は濁しておいた。


その後皆で食べた果物はとても甘く美味しかった。

結構な量があったはずだがすぐに無くなってしまう程に。

後は眠るだけだ。

テントに入ろうとすると、ルーザーがキョロキョロ辺りを見回している。

無視しておこうかとも思ったが、流石に見てしまった以上は声を掛けたほうがよさそうだ。


「どうしたんだルーザー。」

「その、風呂はどうするんだい?」

出たよ、温室育ちのお坊ちゃんめ。

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