キャンプ中も目立ちたくない⑥
「ふ〜ん?ま、殿下がそう仰るのであればそうなんでしょうけど、どうもマリスって怪しいのよね〜。実は手伝っただけじゃなくてほとんどマリスが倒してたりして。」
ロゼッタの勘は絶妙に鋭い。
僕が発言すると、また怪しまれそうだからここは皇子に任せておこう。
「な、何を言ってるんだいロゼッタ。流石に神獣が相手だよ?いくらマリス君が強くてもジリアン先生より強いなんて事はありえないよ。」
「まあそうですけど……。でも皇子は見てたんですよね?」
「も、もちろん。」
「アタシの目を見て嘘じゃないって言えますか?」
ルーザーの目が泳ぐ。
ロゼッタは何かしら確信を持って皇子が嘘を付いていると踏んでいるみたいだった。
「ま、いいや。いつかその隠してる実力暴いてやるんだから!ちなみにルーザー殿下は嘘をついた時右下を見る癖があるんですよ。」
なんてことだ、ルーザー。それは大きな欠陥じゃないか。
この場では追求していないが、確実に嘘だとバレたようだし今後ロゼッタとも距離を置いたほうがよさそうだ。
「まあでもみんな無事で良かった!俺はとんでもない魔力を感じ取った時、殿下やマリスはもう駄目だと思ったくらいだからな!」
フェイルは相変わらずだが、意外にも心配してくれていたようだ。
シーラに関しては何も言うまい。
口元を手で隠し、あの見透かしたような目付き。
触れないが吉とみた。
「とりあえずお互いに採ってきた食料でも見せ合おうよ。」
「そうね!さっさとテントに戻るわよ!」
あまり深入りされても面倒なので、次の話題へと移した。
ロゼッタがいい具合に乗ってくれたのでそのまま一同はテントへと引き返す。
「僕らが獲ったのはこの猪一匹だけだけど、これだけ大きかったらボタン鍋もできるしまあ割といいんじゃないかな。」
ルーザーの指輪から出てきた猪の大きさを見てロゼッタは目を剥く。
結構大きいのを狩ったからな。
インパクトは絶大だろう。
「うーむ、これでは俺達が霞んでしまうな。」
そう言ってフェイルがリュックから取り出したのは食べることの出来る野草や果物だった。
「いや十分だよフェイル。食後のデザートってのも大事だしね。」
「そうよ!アタシ達はそれを目当てに探していたんだから!」
嘘つくなよロゼッタ。
山に慣れてなくてその辺の野草とかしか採れなかったんだろ。
せっかく僕がフォローしてあげたのに。
全員が揃いテントの前で一息つく。
猪は血抜きはしており果物等も洗った。
後は料理するだけだ。
「じゃあ、誰が料理する?」
「「「…………………………。」」」
そう聞くとみな一様に黙り込む。
聞こえていなかったのかと思いもう一度皆に尋ねる。
「じゃあ誰が料理する?」
「「「…………………………。」」」
なるほど、全員聞こえていないフリという事か。
するとルーザーが口を開いた。
「すまないマリス。私は料理なんてしたことがなくて……。いつも料理は待ってれば出てくる物だったから。多分みんなの家もそうなんじゃないかな?」
待てば出てくる?
そんな便利な生活、僕もしたい。
「てことは誰も料理はできないと?」
「多分ね。少なくとも私とエリザは出来ないよ。」
「ア、アタシも出来ないことはないけど、まあ、自信は、ないわね……。」
はーやだやだ。
お金持ちというのはこれだからまったく。
「はぁ、役立たずばっかりということか。じゃあその辺で草でもむしっといて。」
「や、役立たずですって!?」
その通りの事を言っただけなのにロゼッタは急に怒り出す。
「だって料理できないんだろ?近くに居られても邪魔だし。」
「ぐぅぅ……。」
何も反論出来ないと思ったのか、ロゼッタは悔しそうに睨みながら離れて行った。
「ほら、みんなもさっさと行った行った。」
手でシッシッと野良猫を追い払うが如く、皆を動かす。
ルーザーもエリザさんも料理が出来ないならここにいても邪魔だし。
「ごめんよ、じゃあ私達は食器とか用意しておくよ。」
「頼んだよルーザー。」
邪魔者がみんな去りやっと1人になったので、猪の下準備に取り掛かった。
手持ち無沙汰になっていたシーラには、足元の草むしりでもさせておいた。
食事中足元の草が当たるとムズムズするからだ。
ただ草むしりしておけと伝えた時のシーラの顔は、女の子がしていい顔ではなかったが。
ボタン鍋の準備も終わり、テーブルに運ぶと既に全員が席に着いていた。
手伝えよと思ったが自分から邪魔するなと言っておいた手前何も言えないマリスであった。
「わー!!凄いじゃない!これボタン鍋っていうの?初めて食べるわ!」
「これは確かに帝都では食べられないね。キャンプの醍醐味ってやつだね!」
「美味しそうですわ!マリスさん、是非ウチの料理人として働いてはどうですか?」
皆の評価はなかなかのものだった。
エリザさんの料理人への斡旋だけは丁重にお断りしたが。
しかしよく見るとまだ全員席についていない。
「ジリアン先生、何隠れてるんですか?さっさと席について下さいよ。」
木の陰に隠れて護衛をしている教師にも声を掛ける。
流石に1人除け者にするのはよろしくないだろう。
「いいのぉ?ウチまで食べちゃって。」
「1人でも多くいたほうがいいんですよ、猪は大きかったですからね。」
「ま、そういう事なら頂こうかな。」
やっと全員が席について、食事が始まった。
ルーザーの持ち込んだ食器は正直触るのが怖いくらいに高そうな物だった。
ロゼッタに至っては当たり前のように紅茶を持ってきていたし。
まあ美味しいから許すけど。
食事も半ば、シーラがある一言をマリスに投げ掛ける。
「そういえばマリスさん、神獣の攻撃から皇子と皇女殿下をお守りした結界はどんな魔法を使ったんですの?」
ほらきた、まあ何処かで確実に聞いてくるだろうとは思っていたけどこのタイミングか。
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