キャンプ中も目立ちたくない④
「お、終わった……みたいだなマリス君……。」
「そうですね、弱い神獣で助かりました。」
神獣に弱い強いはあまりない。
全ての神獣は軒並み強い。
十二神数人がかりで倒すような相手であり、十二神と互角以上に渡り合える魔獣という意味も含めて神獣と呼ばれている。
「弱い神獣なんていねぇよ……。」
ジリアンの呟きはマリスには聞こえない程度の声であった。
「というか、さっきの七星爆発ってなんだよ、聞いたことないぞ。」
「ああ、あれは今創りました。」
「い、今創った?はあ?」
ジリアンは口を開け、恐ろしいものでも見るかのように目を見開く。
「神獣ってどんな魔法が効くかも分からなかったんで効きそうな強い魔法がいいかなーと思ったんで。それにジリアン先生は僕の虹色の魔力を知ってますし本気でやりました。」
「いや!一瞬で魔法創る事が出来るなんて知らないよ!!こんな短時間で魔法って創れるもんじゃないだろ!」
「え、そうなんですか?」
くそ、また失言だったらしい。
虹色の魔力持ってる事知ってるなら魔法創る事も知っておいてくれよ……。
もう既にジリアン先生は僕を化け物でも見るかのような目付きで見てくる始末だ。
「とりあえず終わりましたし、ジリアン先生が倒したことにしといて下さいよ?」
「まあそうするしかないか、優秀な生徒の援護もあってなんとか討伐出来たってストーリーでいくしかないね……。」
「じゃあ皇子達の結界解いてあげて下さい。」
「待て待て、この状態で結界解除はやばいだろ。」
ジリアン先生に促され辺りを見回すと、木々はなぎ倒され一部更地になってしまっている。
確かにこれで解除するのはまずいかもしれない。
ここまで辺りに影響を及ぼすほどの戦闘を行ったのに傷一つない2人を見れば流石に怪しまれるだろう。
「ちょっと待ってろ、これを使う。」
そう言ってジリアン先生が懐から取り出したのは杖の先に魔石が付けられた物。
その杖を軽く振ると破壊された地形がみるみる元の状態へと戻っていく。
「こいつは幸せだったあの頃にって魔法が込められた魔道具だ。対象を限りなく元の状態まで時間を巻き戻す。買ったら白金貨レベルだからな?」
素晴らしい魔道具だ。
多少の戦闘跡はわざと残したようだが、そこまでド派手な戦いではなかったと思われる程度まで元に戻った。
これなら皇子達も変に思わないだろう。
いや、どうせなら僕の服にも汚れを付けておこう。
戦闘には参加していた風にしておかないと、何にも汚れがない綺麗なままはおかしいからな。
「何してんだ、ああ汚れ付けしてんのか。そこまでしなくたっていいだろ。」
「よくありませんよ。少しでもバレる可能性は潰しておかないと。」
ジリアン先生はあまり分かっていないのだろうか。
皇子達にバレるということは皇帝にもバレるという事だ。
もはや死刑宣告に等しい。
やりすぎなくらい証拠隠滅はしておかないと。
「でも正直誰かに話されたって、マリスは虹色魔導師だという事を隠していて魔法創造にも長けています。更に神獣を1人で無傷で倒しました、なんて信じないと思うけどねぇ……。」
「既に入学してからなんとなく怪しまれて、こいつは何か隠しているって思われてますからね。やりすぎなくらいが丁度いいんです。」
「ほーん。で、お前のその秘密は他に何人知ってるんだ。」
両親、テレーズさん、ジン、ミア、レイさん、学園長、そして目の前のジリアン先生。
おお、こうしてみると結構な人数にバレている。
これは今後の動きに気を付けないと更に増えそうだ。
「結構いるんじゃねぇか!ウチにバレたところで対して変わんねぇよ。」
「いやいや、ジリアン先生は十二神の一人じゃないですか。そんな大物にバレたってことはどこから漏れるか……。最悪口封じに魔法で……。」
「い、言わねぇって!!!やめろその手に魔力込めて不穏な事言い出すの!!」
少し脅しもかけて魔力を練り始めると、ジリアン先生は焦りだす。
これくらいしておけばおいそれと他人に口を滑らせる事もしないだろう。
「さ、そろそろ結界解除すんぞ。あんまり遅いともう一方の班が駆け付けちまう。」
解除の為ジリアンは黒い幕に覆われた半球の結界の前に立ち、黒い球を掲げる。
たちまち暗幕に閉ざされていた結界は消えていき、驚愕の顔をして座り込む皇子皇女の姿が見えた。
「ん?どうしたんですか殿下、そんな恐ろしい者でも見たかのような顔をして。」
「あ、あ、いや、その。」
なんだか皇子達の様子がおかしいな。
どうしたことかと僕も近づくと、更に顔つきが険しくなる。
「あ、暗幕の結界?を使ってくれて感謝するよジリアン。でもこれってそういう仕様なのかな?」
「何言ってんです?皇子らに攻撃は当たらないはずですけど。」
どうも皇子は困ったような顔をしている。
結界を突き抜けて凄い風圧を感じたとかかな?
「その、ジリアンは十二神で凄い強いことは知ってるんだけど……えっと、さっきの話、本当なのかい?」
なんのことだ?
一体ルーザーは何を言っているのか。
ジリアン先生はハッとした顔でチラッとマリスを見た。
「あの、この結界って私達を守ってくれたのは凄いんですけど、音は遮断されてなくて……。」
エリザは申し訳なさそうに言う。
「て、ことはさっきのウチとマリス君の会話は聞こえてた、ってことですかね?」
ルーザーは頷く。
やってくれたなこの教師。
誰にも言わないとか言いつつもしっかり皇子らに会話を聞かれてしまってるじゃないか。
「えっと、マリス君。この結界、音は遮断できないって事忘れてた……わ。」
「……………………。」
皇子皇女もマリスを見つめ次の発言を待っている。
数秒の無言が続きマリスが口を開いた。
「ルーザー、君が聞いたのは幻聴だね。」
「え?げ、幻聴?」
「そう、幻聴。」
もうここはとぼけるしかない。
この役立たず教師は後で文句を言うとしてまずはこの場を乗り切らねばならない。
「ルーザーとエリザさんはどうやら幻聴を聞いたらしいね。神獣はそういう能力を持った者もいると聞く。多分それだね。ですよねジリアン先生。」
話を合わせろと言わんばかりの目付きでジリアン先生を睨む。
「ああ、そう……だ。幻聴を聞いてしまったのでしょうルーザー皇子にエリザ皇女殿下。」
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