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虹色魔導師は目立ちたくない  作者: プリン伯爵


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キャンプ中も目立ちたくない③

白い体毛に人間の腕ほどもある大きな牙。

体躯は3メートルはあるだろうか。

マリス達の後ろから追って来ていたのは神狼と呼ばれる神獣だった。

神獣は各地に生息しており、魔獣とは比較にならない強さを誇る。

本来であれば、十二神が出張ってくるような異常事態だ。

何故こんな学園所有の山中にいるのかは置いといて、それが今目の前にいる。


「し、神獣……なぜこんな所に!!」

ルーザーも初めて見たのか、驚愕と絶望の顔に染まっている。

エリザは恐ろしいものを見たくないのかずっと目を瞑っていた。


「ジリアン先生十二神ですよね、1人で勝てそうですか?」

「言ってくれるねぇマリス君。ただ正直言うとウチ一人じゃ勝てないね。」

十二神の中でも魔道具製作や特殊な魔術に特化している者は戦闘に長けている訳ではない。

ジリアンもその一人であった。


「手伝います。」

「ふぅん、いいのかな?その力見せちゃっても。」

皇子皇女に聞こえない程度の小声で問いかけてくる。

どこで知ったのか分からないが、やはりジリアンは僕の秘密を知っているのだろうか。


「皇子達の命とは比べられませんよ。秘密だなんだと言ってる場合じゃないでしょう。」

「そういう考え方、ウチは好きだなぁ。マリス君なら一人で相手できる?」

「まあ出来ないことはないと思いますけど、神獣と戦った事なんてないんで確証はないです。」

「じゃあこうしたら満足に戦える?」


そう言ったジリアンは懐から小さい球体を取り出し皇子らの足元へと投げた。

「殿下!これはウチが作った結界だ!その中から動かないで下さいよ!」


黒い膜に覆われた皇子皇女らは外も見えない状態だろうか?

僕に全力で戦わせる為に視界も塞いだということだろうか?

その予測は当たっていた。


「マリス君、これで皇子らの視界は塞いだ。全力出してくれて構わないよ!」

「な、何のことかわかりませんね。」

一応、苦し紛れに知らない振りをする。


「ウチの今つけてる眼鏡は魔導具さ。魔色鑑定を可能にする、ね。だから君が隠している秘密も知ってるよ。」

「な、汚いですねジリアン先生。」

「どうとでも言うがいいさ。ただウチはまだ誰にも君が虹色魔導師だなんて言ってはいない。ここだけの秘密にしておこうじゃないか、その方がいいんだろ?」


ジリアン先生……あんた良いやつだよ。

僕が秘密にしているのを気にしてか、誰にも言わないでくれているようだ。

この人の前なら全力で戦える。


「分かりました。ジリアン先生は念の為ルーザー達の結界まで下がっていて下さい。」

「おいおい、本気で1人で戦うつもりか?」

「虹色魔導師だとバレているなら力を温存して戦う必要がないですからね。」

「ふぅん、いいねぇ。見してくれよ虹色魔導師の本気ってやつ。」

ニヤリと口角を上げ二度ほど僕の肩を叩いた後、結界までジリアン先生は下がっていった。


さあ、久々の全力だ。

神獣がどれほどの強さか分からない以上、変に力を抑えて戦わないほうがいいだろう。


マリスはゆっくりと濃密な七色の魔力を身体に纏わせる。

神獣にも種類はあり、今目の前にいる神狼は雷属性を宿している。

体表に静電気が発せられているのを見れば、一目瞭然だった。


「お、おお、ウチの魔道具を疑ってた訳じゃないけど実際にこうして虹色の魔力を見ると迫力が違うねぇ!」


後ろからジリアン先生の喜んだ声が聞こえてくる。

気が散るからやめて欲しいなぁ。


「さて、今回はどんな魔法でいこうかな。」

マリスは魔力を練りながら神獣に放つ魔法を頭の中で考える。


「よし、これでいこう!」

マリスは頭の中で思い描いた魔法を創り出す。

そうして出来上がった、マリスを中心に広がる巨大な魔法陣。

目の前にいる神獣はあまりの濃密な魔力を放つマリスを警戒して動かない。


足元に魔法陣を展開したマリスは、両手を神獣に向け前方にも魔法陣を創り出す。


「グルルゥゥゥ!!」

濃密な魔力を自分に向けられている事が分かった神獣も対抗するように眼前に魔法陣を展開した。


ジリアンは異常ともいえる1人と1匹の魔力お化けに恐れを抱いた。

十二神といえど、これほどの魔力のぶつかり合いはそうそうない。

十二神序列一位に君臨する五色魔導師クレイの魔法も見たことはあるが、これほどまでの魔力は感じられなかった。

やはり、虹色魔導師は別格であると目の前の光景が教えてくれる。


七星爆発(セブンスノヴァ)

マリスが発した魔法名は誰も聞いたことがない。

恐らくオリジナル魔法であるとジリアンは結論付けた。


神罰の一撃(ゴッドボルト)

神獣も対抗して魔法名を口にする。

雷属性の最上級魔法だ。

最上級魔法とオリジナル魔法がぶつかればただでは済まないと判断したジリアンは自らも結界で守った。

ジリアンの判断は正解だったと言うべきだろう。


まだ魔法陣から放たれていないにも関わらず周囲に撒き散らされる濃密な魔力は地面を抉り木々を薙ぎ倒した。

暴風とも言えるほどの魔力が周囲を破壊していく。


マリスの魔法陣からは七色の光の剣が七本生み出され、神獣へと飛翔する。

神獣からはマリスに向かって極太の雷が一直線に伸びた。

光の剣と雷はぶつかり合い、爆発音とも言えるほどの音と目が眩むほどの光が周囲を埋め尽くす。

数秒のせめぎ合いを制したのはマリスの放った光の剣であった。


七本の光の剣は雷を割り、中を突き進む。

次第に雷は四散し、ジリアンとマリスの目に映ったのは七本の光の剣が身体に突き刺さった神獣の姿だった。

「ガァァァァァ!!!!」

痛みによるものか、神狼は咆哮する。


「まだ終わらないよ狼くん。」

その言葉通り、突き刺さった剣は次第に強い光を放ちだし最後に爆発した。


耳を劈く爆音。


煙が晴れた後に残ったのは神獣と思われる残骸であった。


「ふぅ、なんとか僕一人で倒せて良かったよ。案外神獣って言われている割にはそんなに強くないな。」


そんな台詞が吐けるのはお前だけだろ、と思ったが口にはしなかったジリアンであった。

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