魔法対戦でも目立ちたくない⑥
ガウェインの魔法を身体能力だけで躱すのは不可能だ。
実際、悪魔の爪はフェイルの身体を切り刻み足元には血溜まりが出来ていた。
「……もういいだろう、負けを認めろフェイル。」
「まだ、だ……まだやれる!!」
ガウェインは満身創痍のフェイルを気遣って試合を終わらせようとしたが、肝心のフェイル自身がそれを拒んだ。
そうなれば、もう腕輪を破壊するしかない。
恐らく彼は完膚なきまでにやられなければいつまでも立ち続けるだろうと判断したガウェインは次の魔法で終わらせる為に魔力を練り始めた。
フェイルは未だ剣を手放さない。
それよりもまだ戦意を失っておらず、目はガウェインを見据えていた。
「魔光剣……!」
魔力を剣に流し、構えを取る。
ガウェインの魔法に対抗する術はほぼないだろう。
それでも何もせずただ敗北を受け入れる事はフェイルには出来なかった。
「……死を司る死神の鎌。」
ガウェインが片腕を振るうと黒い影が形を変え鎌を生み出した。
死を連想するその鎌は首を刈り取らんとフェイルへと迫る。
フェイルの使う魔光剣は魔法を斬ることが出来る。
しかしそれは中級魔法までであった。
ガウェインの放った死の鎌は上級魔法。
フェイルは剣を弾き飛ばされ無防備になる。
身体能力強化の魔法をかけていたとしても鎌の刃を防ぐことは出来なかった。
胴体を切り付けられところで腕輪が破壊された。
膝から崩れ落ち倒れたフェイルはピクリとも動かない。
「勝者、ガウェイン・マギクラッド選手ー!!!最後の一撃はフェイル選手も防ぎきれなかったかー!!!」
実況の声が周囲に木霊すると担架を持った救急班がフェイルを運んで行った。
「よく頑張ったぞー!!」
「フェイル様ー!!」
「かっこよかったですわー!」
十分善戦したといえるフェイルの活躍は観客からの声援が物語っていた。
ちなみにガウェインにはほとんど声援はない。
こういう時いつも闇属性を扱う者は悪役扱いされるのだ。
ステージを降りたガウェインはそのままマリスのいる所へと急いだ。
控室にいたマリスを見つけると、ガウェインは言葉を投げ掛ける。
「……おい、お前の次の相手はあのリー・ライカンだろう。」
いきなり部屋へと入って来たガウェインを見たマリスは驚いたがすぐに返事をする。
「はい、そうですけど。」
「……奴には気をつけろ。アイツはトリッキーな戦い方をするぞ。」
「トリッキーですか?」
「……まあお前くらい力があれば正面からねじ伏せるかもしれんがな。一応伝えたぞ。」
それだけ言うとガウェインは部屋から出て行ってしまった。
どうやらマリスに対戦相手の情報を伝えに来てくれたらしい。
良く考えればガウェインさんとリーさんは同じ4年生だ。
ぶっきらぼうに見えて案外律儀な所もあるようだ。
フェイルは残念だったが相手が悪かった。
でもなかなかカッコいい戦いをしていたと思う。
やっぱり魔剣士というのは男心をくすぐられるな。
僕も一つくらいは魔剣士の技を覚えてみたいものだ。
「さあ、次の試合は生徒会長を破ったマリス・レオンハート選手と一撃でリスティア選手を倒したリー・ライカン選手です!!今度はどんなドラマが生まれるのでしょうか!?」
ドラマなんて生まないよ。
つい実況に対して心の中で突っ込んでしまった。
ステージに上がると、細身で高身長の男が立っていた。
あれがリーさんか。
トリッキーと聞いたがそんな変な戦い方をするようには見えないけどな。
「どうも、初めましてマリス君。ワタシがリー・ライカンです。」
「これはご丁寧に。マリス・レオンハートです。」
声色も優しく挨拶まで交わしてくれた。
宝石店の店員かなというような綺麗に真っ直ぐ立っている。
言葉遣いや仕草に気を付けているのか全てが洗練されているように見えた。
「貴方とは一度戦ってみたかったのですよ。あの決闘を見てしまいましたから。」
フフフと優しく微笑みかけてくるが、なんかちょっと不気味な雰囲気を感じる。
誰にでも好かれそうな優しさの塊みたいな人だが、ガウェインさんからトリッキーな戦い方と聞いていたせいか、この人の一挙手一投足に気持ちの悪さを感じてしまう。
「是非、本気で戦って頂きたいのですが……どうすれば本気になって頂けるでしょうか?」
えらく下から話し掛けてくる人だな。
後輩のそれも歳下に対して行う仕草ではない。
「本気でというなら最初から本気でやりますけど。」
「おお!それはありがたい!!とても楽しみになってきましたね。」
大げさに身体を仰け反らせ喜びを表現しているがそれすらも不気味に見えてきた。
適当に会話を交わしたところで実況の合図が聞こえた。
「これより!試合開始です!!!」
試合が始まってもその態度は変わらなかった。
先輩だからと僕に先手を譲ってくれるそうで、リーさんはその場から動かない。
とりあえず最初はこれで、と決めていた魔法を放つ。
「疾走雷撃。」
僕が使える最速の魔法だ。
一直線に飛翔する雷撃は確実にリーさんの頭に直撃した。
少なくとも僕からはそう見えたが、リーさんは何故かピンピンしている。
気を失ってもおかしくはない威力だったはずだ。
「なるほど、なかなか恐ろしい速さですね。これなら確かに速攻で相手を倒すことが出来ます。」
僕の魔法を分析しているようで、ブツブツと何やら呟きながらウンウンと唸っていた。
「ですがワタシの人はいずれ霧になりての前では無意味ですよ。」
なんの魔法だろうか。
名前からして魔法の無効化?
いや、瞬間的に透明になっているのかもしれない。
念の為再度同じ魔法を放つ。
「疾走雷撃。」
またしても突っ立っているだけのリーさんに何のダメージもなかった。
当たっているのに動じていないのだ。
するとリーさんは微笑みながら口を開いた。
「何も教えないというのも卑怯ですし、説明しておきましょう。ワタシの人はいずれ霧になりては一時的に自身の身体を霧状に変えているんです。なのでどれだけ速い電撃であってもすり抜けてしまうのですよ。」
なるほど、厄介な魔法だ。
これは攻略に時間がかかりそうだな。
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