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N-088 魔物のレベル


 扉板をバリ!っと突き破って鎌のようなものが飛び出した。そして直ぐ隣にも鎌が飛び出してきた。


 「シザーラにゃ。両手に鎌を持ってる魔物にゃ!」

 

 アイネさんがそう叫ぶと、扉の前に置かれた障害をマイネさんと急いで後ろに移動し始めた。エルちゃん達は少し安全になるな。

 そして俺達は扉を中心に扇型に立つと銃を構えた。


 鎌で数回の打撃を受けた扉に30cm程の穴が開く。その穴から三角形をした顔がニューっと伸びて俺達を見ている。

 どう見てもカマキリだな。頭の両端の複眼とナイフのようにカチカチと音がしている顎はカマキリが大きくなったとしか思えない。

 となれば、間違いなく肉食だ。コイツ等が群れてるとなるとかなり厄介だぞ。


 銃声が後ろから聞こえた。突き出した顔に2つの穴開く緑の体液を垂らしながらカマキリは顔を引っ込めた。

 どうやらエルちゃん達が攻撃したらしいな。中々の腕だぞ。


 更に、鎌で扉が壊される。そして扉に50cm程の穴が開くとそこから半身を乗り出してきた。

 ドォン!っという音がして上半身がバラバラになった。アイネさん達が同時攻撃をしたらしい。

 これで1匹だな。仲間のカマキリが胴体だけになったカマキリを通路側に引き込んでいる。


 更に、鎌で扉を壊してとうとう扉の半分程がなくなったとき、一斉にカマキリが雪崩れ込んできた。

 俺とアイネさん達が、一斉に散弾銃を撃つと直ぐに後ろに下がって薬莢を交換する。

 次に入ってきた奴等をレイク達が狙い撃つ。2発撃って下がった時には俺達はもう射撃準備が出来ている。

 5人でもう一度射撃をすると、カマキリは全て床に倒れていた。

 アイネさん達がロアルで、まだピクピクと動いているカマキリの頭を撃ち抜いていく。

 

 「どうやら終ったにゃ。やはり魔物はいるみたいにゃ」

 

 床にゆっくりと溶け込んでいくカマキリを見ながらアイネさんが呟いた。

 

 「一時はどうなるかと思ったぞ。まぁ、これだけの人がいるとやはり安心出来るな!」

 「あぁ、だが油断は出来ないぞ」


 何とかなったけど、次も上手く行くとは限らないからな。

 とりあえず皆でお茶を飲む。俺とレイクは一服を楽しむ。


 「ところで、その散弾銃のカートリッジの交換は早いな」

 「あらかじめコイツに詰めてあるんだ。銃を折るとコイツが飛び出すから次を入れれば直ぐに撃てるんだ」


 「それは手に入らないのか?」

 「しばらくは無理だな。軍の連中だってレイクの使ってる散弾銃と同じだぞ。というか、それを真似た銃を使ってるんだ」

 

 「そうだな。確かに強装弾を使うパレトの比じゃないんだよな。まぁ、上を見ればきりが無いって言うからな」

 「ところで、妹達は良い腕だな?」


 「あぁ、先払いの金でハントを購入したんだ。中古だけど、結構改造してあったぞ。バレルも少し長めなんだ」


 ミーナのところも一緒なんだろうな。通常弾ならそれなりに威力はあるし、レベルが上がっても強装弾を使うハントなら長く使えるに違いない。


 「魔石は2つにゃ。中位と下位の赤にゃ」

 「7匹で2個はまあまあですね」


 アイネさんはそう俺達に伝えてエルちゃんに魔石を渡す。エルちゃんは魔石を入れるケースにそれを入れてバッグに仕舞いこんだ。ちゃんと別の箱を持って来たようだ。何時ものメンバーだけじゃないから、ちゃんと区別しておかないとね。


 簡単なスープを作って、薄いパンを浸して食べる。食後には杏のような干した果物だ。そして、お茶をカップ半分程注いで貰って朝食が終る。


 荷物を片付けて籠に入れれば出発の準備は終る。

 最後に、銃にカートリッジが入っていることを確認して俺達は部屋を出た。


 分岐路は常に左へと進路を変える。全ての通路を踏破することが目的だから、このような進路選定を取ることになる。帰りは1つずつ分岐路の方向を変えればいい。

 その辺は地図を作っているエルちゃんがちゃんと記録を取っているから安心だ。


 相変わらず、道は先に伸びている。

 2時間程経った時にようやく行き止まりになった。

 ここで、少し休憩を取る。

 

 「やっと、突き当たりにゃ。エルちゃん、ここはどの辺りにゃ?」

 「え~と、だいたい入口から20M(3km)位北西ですよ。遺跡からはみ出してます」


 まぁ、迷宮をカバーするように遺跡が出来た訳じゃないからな。

 ここで行き止まりならおよそ3km四方ってところかな。地図があれば2時間も歩かずに地下への階段に着けるだろう。


 携帯コンロでお茶を沸かしてカップ半分のお茶を飲む。

 俺とレイクは少し離れて一服だ。

 まぁ、それと一緒に後方の監視も行なってるんだけどね。


 「そろそろ出発するにゃ。1M(150m)程戻って、左に曲がるにゃ!」


 荷物を纏めて俺は籠を担ぐと列の後ろに下がる。そこにはもうミーナが待っていた。


 「お兄ちゃん後ろはお願いね!」

 「あぁ、任せとけ。エルちゃんこそ大役だからね。しっかり頼んだよ」


 俺の言葉に笑顔で頷く。

 

 「仲が良いんですね」

 「あぁ、たった2人の兄妹だからね」


 そんな俺の言葉を聞いて急にミーナが大人しくなった。

 ミーナには家族がいるから俺達を気の毒に思ったのかな。

 それは、ミーナが優しい性格だからなんだろう。レイクは良い娘とチームを組んだと思うぞ。

 まぁ、俺達と一緒に暮らしてるクァルのお姉さん達も悪い人ではない。普段はあれだけど、迷宮に入った途端に性格が変るアイネさんは頼りになるし、末の妹のシイネさんだって何時もエルちゃんを可愛がってくれる。


 突然歩みが止まる。先を見ると、銃剣の先に鏡を付けて分岐路の先を調べてる。

 そしてアイネさんが頷くと、レイクが後ろの俺達に異常なしを知らせてくれた。

 左に曲がった所でエルちゃんがカウンターを元に戻している。此処から先は新たな通路ってことだな。


 今度の道は途中に扉が無い。2つほど曲がった所でその先にあったのはちょっとした広場だった。

 アイネさん達が広場の四方に散って、隅々を調べている。床は敷石ではなく砂地だな。

 エルちゃんが部屋の2辺の歩数を計測し始めた。

 どうやらこの道の突き当たりはこの広場のような部屋らしい。


 「変った場所だな」

 「あぁ、だが油断するなよ。胸騒ぎがするんだ」

 「レムルもか?……俺もそうだ。何かは分らないんだけどな」


 エルちゃんが部屋の歩数を図って俺達の所に帰ってくる。アイネさん達も何も無いことにガッカリした様子で戻って来た。


 その時、エルちゃんの後ろで砂が動いたのを俺は偶然目にした。

 背中の籠をそっと置くと、杖代わりの槍を握り直す。


 「エルちゃん走れ!!」


 大声でエルちゃんに怒鳴ると、エルちゃんは俺に向かって走ってくる。その後ろで砂が盛り上がってきた。

 その砂山に向かって力一杯槍を投付けた。


 「砂蛇にゃ!」


 アイネさんが叫ぶと同時に散弾銃を頭部に打ち込んだ。

 続けて全員が砂蛇に銃弾を打ち込む。


  グオォォォ……

 叫ぶような唸るような声を上げて短い触手が蠢く頭部が大きな口を開ける。その口にはナイフのような牙がグルリと取り囲んでいた。


 【アクセル!】と叫びながら背中の長剣を抜いて胴体に力一杯切りつけた。

 グサっと言う感じではなかったが、長剣を叩き付けた場所から鮮血が噴出した。

 

 「砂蛇の皮は丈夫にゃ。斬るんじゃなくて突き刺すにゃ」


 サササ……っと俺の直ぐ傍に寄ってきたアイネさんが教えてくれた。そして俺の手に槍を1本持たせてくれた。

 少し前に出過ぎたようだ、俺に向かって大きな口をあけて砂蛇が迫ってきた。

 槍を反対にして砂地に突き刺すと、ギリギリで横に飛び込むようにして逃れる。


 グオォォ……

 再びあの叫びだ。さっきの槍が口から首の後ろに突き出ている。

 棒立ちになった砂蛇に散弾銃が放たれる。

 頭を血だらけにしてドサリと砂地に崩れ落ちた。


 「やったのか?」

 「いやまだだ」


 俺はM29を取り出すと、至近距離から砂蛇の頭に2発撃ちこんだ。

 全身をブルっと震わせて静かになる。


 「やばかったにゃ。部屋が砂地は気を付けるにゃ!」


 そんなことはもうちょっと早く教えて欲しかったな。

 砂蛇がだんだんと砂に消えていく。

 そして魔石が残った。


 「中位の白にゃ!」


 マイネさんが砂地から魔石を取り上げて喜んでる。

 確かに4色の10倍の値が付くからな。

 

 俺達は此処で少し休むことにした。ミイネさんが干した杏を配ってくれる。疲れた体に染み入る味だな。

 

 「アイネさん。前のシザーラや砂蛇って村の迷宮で言うとどれ位の階層にいるんですか?」

 「地下2階以下にゃ。ちょっとこの迷宮は上級者向けにゃ。でも、受けた以上頑張らないといけないにゃ」


 やはり……。となると、俺達も少し考えなくちゃならないな。

 

 「迷宮地下2階以下って、かなり問題じゃないのか? 俺たちだけならともかく妹もいるんだぞ」

 「あぁ、分ってる。俺んとこもエルちゃんがいるからな。とにかく早いところこの階の調査を終えなくちゃならない。で、銃弾はまだあるんだよな?」

 

 「40発近くあるぞ。それに爆裂球もある。妹のエレーナは【メル】も使える」

 「なら、まだ大丈夫だ。残りの弾丸が10発以下になったら一旦調査を中断して急いで迷宮を出ればいい」


 「積極的に撃っていくにゃ。こっちも40発は残ってるにゃ」


 確か、20発を分けてくれたんだよな。そんなに手持ちがあったのか?

 水筒の水を少し飲んで、俺達は次の通路を目指して歩き始めた。


 再び分岐路に差し掛かる。一旦俺達は停止してアイネさんの確認を待つ。

 後ろに浮かぶ光球に通路が照らされているが、何の姿もそこには見えなかった。

 咥えタバコで後を見ていた俺に、出発の声が届く。

 また新たな通路が俺達の前に伸びていた。


 今度の通路は所々に扉がある。

 その都度、アイネさん達が部屋の中を改める。

 何度目かの扉を開けた時、アイネさんが俺を呼んだ。


 「何ですか?」

 「あれにゃ。核をやれるかにゃ?」

 「ええ、任せてください」

 

 部屋の中にエルちゃん位の大きさのバリアントがジッと此方を覗っている。

 核の大きさはバレーボール位だから外すことは無いだろう。

 M29を引抜いて、ハンマーを引くとゆっくり近付いて3m程の至近距離で核を撃ち抜く。

 

 バリアントはゆっくりと床に融けていき、最後に低位の青の魔石を残した。

 まぁ、仕方がないかバリアントだからな。魔石が出ただけマシってもんだ。

 

 そして俺達は先に進む。

 エルちゃんの地図を見ると、三分の一は調査が済んでるんじゃないかな。

 それでも、先は長そうだ。そしてそろそろ今夜の休憩場所を探さなくちゃならないぞ。

 


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