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N-073 勝負の方法?

 アルトスさん達の勝負は、エクレムさんの勝利に終った。

 どんな闘いをしたのか聞いてみたら、何とスゴロクで3回勝ったと言っていた。3人で拳で語り合うよりは平和的なんだけど、スゴロクってあったんだな。


 そんなエクレムさんが俺の所にレイミーさんとやってきた。

 表向きの訪問は今後の作戦の打合せらしいが、実際のところはレイミーさんがアイネさん達と遊びたかったらしい。

 俺達の後ろで、エルちゃんを交えて真剣にスゴロクのサイコロを振っている。


 「まぁ、勝負は勝負ということで、俺達に同行することになる。だが、レムルのところは、姫が通信機の教室に通うと聞いたのだが……」

 「そうです。そんな訳で、俺とアイネさんマイネさんが参加します。ミイネさんとシイネさんはエルちゃんと一緒です」


 「3人か。まぁしょうがあるまい。俺達のチームは4人だ。そこで、ライナスから1チームを譲りうけた。レイクのチームだが、レイクはお前も知っているな」


 レイクなら気心も知れている。一緒に通路の壁を削ったり、リングワームを倒した仲間だ。

 

 「明日の早朝に出発するから、準備をして置けよ」

 「村の出口で良いですね。了解です」

 

 そう言ってエクレムさんは部屋を出て行ったが、レイミーさんは、白熱した勝負をしているようだ。

 そんな彼女達にお茶を入れてあげると、自分の部屋に行って装備を整える。


 今度は人が相手だから、ライフルになる。

 杖は止めて、装備ベルトの吊り具に長剣をストラップで固定する。

 バッグから袋を取り出して、食器と携帯食料を確認する。カートリッジはパレトの強装弾のみだ。ライフル用の薬莢に10発入っていることを確認してカートリッジポーチに入れて置く。薬莢の予備もあるから、それにもカートリッジを入れてポケットに入れておいた。残りのカートリッジは袋に入れて置く。

 バッグの後ろに隠れたM29とその上に横に取り付けた片手剣。それを隠すようにポンチョを小さく畳んでストラップで固定する。

 後は毛布だが、薄い毛布を小さく畳んで魔法の袋に入れることにした。

 魔法の袋は結構入るようだが、余り入れると取り出すのが大変だからな。

 

 最後に、コンパスと双眼鏡。それにタバコの袋とパイプを布で巻いて入れておく。

 貰った、マールボロはポケットに1箱入れておけばいい。ライターも一緒だけど、たぶん今回で全てガスを使い切るだろうな。

              ◇

              ◇

              ◇


 そして次の朝。

 朝食を終えたところで俺達は立ち上がる。


 「それじゃ。行ってくるよ。エルちゃんも頑張るんだよ」

 「うん、お姉ちゃん達もいるから大丈夫だよ」


 そう言って抱きついてくるエルちゃんの頭をガシガシと撫でて部屋を出る。

 余り長くいると貰い泣きしそうな感じだからな。

 それに、早く行かないと怒られそうだしね。アイネさん達が夜遅くまでゲームをしていたから全員の起きるのが遅くなって今は8時過ぎだ。

 駆けるように通路を急ぐと、村の入口は開いていた。

 見張りの人に片手を上げて挨拶して急いで広場に出ると、数人の男女が集まっていたが肝心のエクレムさん達が来ていないぞ。


 「よう、遅かったな」 

 「あぁ、昨夜遅くまでゲームをしていたみたいで寝坊しちゃったんだ」


 「ひょっとして、レイミーが一緒じゃなかったか?」

 「えぇ、いましたよ。エクレムさんは先に帰りましたけど……」


 はぁ……ってメイヒムさんが溜息を付く。

 

 「レイミーは大のゲーム好きだ。たぶん遅くまでやってたに違いない」

 

 チラリとアイネさん達を見たら、俺の視線を感じてそっぽを向いてるけど、尻尾がユラユラと揺れてるぞ。

 どうやら、それが原因みたいだな。何時も早く起きるエルちゃんだって今朝は眠そうな目をしてたからな。


 「あのう……、てっちゃんですよね。これをありがとうございます。早速使ってみましたが、今までのパレトが玩具に感じます」


 え~と、誰だったかな。それより、語尾ににゃが付かないのはどういう訳だ?


 「てっちゃん。こいつがミーネだ。あのライナスさんの末娘だぞ。ライナスさんの奥さんは人族だから、ミーネはエルちゃんと同じハーフなんだ」


 きょとんとする俺に、レイクが笑いながら近付いて教えてくれた。


 「そうだったのか。その銃はお下がりで申し訳ない。でも、レイクならばうまく使ってくれるだろうと思ってね」

 「お下がりだなんて、とんでもありません。大事に使わせていただきます」


 「そうだ、レイク。俺の名前なんだけど、レムルって長老が着けてくれたんだ。てっちゃんでも良いけど、レムルと呼んで欲しいな」

 「レムルだな。了解だ!」


 レイクはそう言って自分達のチームの所に帰っていく。

 

 「私等もレムルと呼んだほうが良いのかにゃ?」

 「その方が、色々と問題無さそうです」

 「分ったにゃ」


 アイネさんも、そういえば……って感じで聞いて来た。ある程度統一しといた方が良いよな。ユングさん達には今まで通りってことで良いだろう。


 そんなところに、エクレムさん達がやってきた。レイミーさんは眠そうだな。目をゴシゴシやってるぞ。


 「遅くなってすまん。たぶん俺達が最後だな。だが、もう少し待ってくれ」

 「何だ? 直ぐに出発じゃないのか?」


 「荷物がある。村のガルパスで運んでくれるそうだ」

 

 あの亀で荷物を運ぶのか……。だが、荷車は曳いていけないと思うぞ。

 しばらく待つと、出入り口の置くからカチャカチャと石を爪が叩く音がする。

 そして、俺達の前に、3匹のガルパスが姿を現した。

 

 毛布を数枚重ねてその上に大きな笊を2つも積んでいる。一体何が入っているのかと考えてしまう光景だ。大きな陸亀なんだけど、甲羅も見えない位の荷物だな。


 「さて、今度こそ出発だ。エルナー爺さん、ガルパスは大丈夫なんだろうな?」

 「お前達より足は確かじゃよ。ワシは最後歩くから、さっさと行くがいい」

 

 とりあえず、俺達はエクレムさんを先頭にして歩き出す。

 長い隊列だけど最後尾のガルパス3匹もトコトコと俺達の歩みに合わせて荷物を運んでくれている。

 この世界の亀は使役獣の代用なんだろうか?

 そういえば、ラクト村でも狩りはしていたんだけど、畑を耕す光景って見たことがなかったな。


 1時間程歩いて10分程の休憩。これを繰り返して、この間森の大岩の見張り所まで行った山の斜面歩いて行く。

 意外と歩き辛いんだが、皆は平地を歩くように歩いている。

 ネコ族の人達にはこれ位の斜面は平地と変わらないんだろうか?


 昼を過ぎた所で、焚火を作ってお茶を沸かす。

 今日は、お弁当を持ってきたからお茶と一緒に黒パンサンドを食べる。俺達の行軍を知っているのか、ハムの切り身が少し厚いような気がするな。


 「大岩の見張り所は知っているな。俺達はあの大岩から山手に陣を張る。20M(3km)程山手に小さなガレ場がある。俺達は其処に本拠地を作る」

 「ガレ場は崩れる岩で危ないんじゃないですか?」


 「それほど大きくはない、それに斜度は緩やかだ。昔山から転げ落ちた大岩が数個あるから、それを利用して岩屋を作る。2中隊いるんだから何でもできる筈だ」

 

 そう言って、咥えていたパイプから灰を落とす。

 そろそろ出発だな。

 

 それから2時間程歩くと、山裾に岩山が見えてきた。北側には立派なログハウスが立っている。あれが岩山の見張り所だ。

 俺達は少しずつ西に向かいながら斜面を上っていく。


 そして1時間を待たずに、ガレ場に出た。

 確かに俺の背丈よりも高い岩が転がり落ちている。そして此処に止まったようだ。丁度窪みに嵌まっているような形だから、なるほど安全だな。

 そして、ガレ場だが横幅は50m程で長さも100mはないぞ。斜度もそれほどではないようだ。

 雨水で表面の土砂が流されて岩が露出してるって感じだな。


 「ガルパスに積んだ籠に大型天幕が3つあるはずだ。それを適当な所に張って、ガルパスの積荷を降ろせ。ガルパスは明日には此処を去る」

 「水場は無いのかにゃ?」


 「あそこに見える雑木林に小さな泉がある。あの泉を使いやすくするのも俺達の仕事だ」

 

 エクレムさんが指差した雑木林は数本の背の低い雑木と茂みがあるだけだった。それでも、アイネさんは桶とポットを持って水場に出掛けていく。


 「天幕は俺がやろう。エクレム手伝え。レムルとレイクそれにマイネは薪を集めて来い」


 メイヒムさんの言いつけで、俺達3人は荒地をあちこち歩きながら薪を探す。

 元々が荒れた地だから、余り育たずに立ち枯れている雑木は多い。

 3人で抱えられるだけの薪を集めて帰ると、手近かな薪で作った焚火に大鍋が乗っていた。

 

 「おぉ、ご苦労だった。明日は中隊が1つやってくるから、少しは楽ができるぞ。

 「陣を作るのは兵隊に任せておけ。お前達はその間、周囲の警戒をして欲しい。できればこの上に小さな見張り小屋を作りたいんだが、その場所を探してくれるとありがたい」


 「獣がいれば狩りをしても良いんですか?」

 「構わんぞ。できれば肉はここで兵隊に振舞ってやってくれ」


 エクレムさんの言葉にレイクがニコリと微笑む。

 迷宮では散弾銃を試したんだろうが、狩にはまだ使ってなかったようだ。


 焚火から少し離れた場所に天幕が3つ張られていた。1つは倉庫代わりらしいが、もう2つは俺達がその中で休めるようだ。

 まだ夏だから良いが、冬には雪が深くなる。それまでには雪の重みに耐えられる小屋を作らねばならない。

 そして此処には、太い立木がないのだ。それで、ガレ場の石を使って壁を作るということになるのだが、はたしてどんなものができるかはやってみないと分らないぞ。


 夕食は、何時ものスープにパンだが、食後に蜂蜜酒のお茶割りが出た。

 ちょっとした、疲労回復薬だと言っていたが、エクレムさん達は割っていないような気がするぞ。

 その後は、2時間交替で焚火の番をする。

 まだ、サンドミナスの先行部隊の気配はないようだが、山の荒地には野犬だっているのだ。今は、野犬だが冬にはスノウガトルも山から降りてくると、蜂蜜酒を飲んでいたメイヒムさんが教えてくれた。


 手近かな場所に太い薪を用心のために置いておくと、アイネさん達は散弾銃の薬莢を散弾カートリッジを詰めた物に交換していた。


 「後装式は弾種を簡単に換えられるから便利にゃ」

 

 そんなことを言いながら散弾銃をなでなでしている。

 ちょっと、暴発しないか心配だな。できれば近くに置いといて欲しいぞ。 


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