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N-141 新たな装備


 アルトスさん達と打ち合わせはしたけれど、とりあえず俺達は自分達の計画を遂行することにした。

 明人さん達からの武器供与は貰ってみないことには分らないし、それを待っていては俺達が余りにも危険すぎる。

 

 そんな俺達の事情とは裏腹に、季節は流れて夏がやってきた。

 綿の上下と言う軽い服装で別荘内で過ごしているんだが、アイネさんやエルちゃん達も真似をするもんだから目のやり場に困ってしまう。

 

 そんな俺をおもしろがって、アイネさん達がからかうんだから始末に終えないよな。

 何時の間にか、上下とも短く詰めてホットパンツにTシャツのような姿になってるぞ。

 

 そんな俺に『おそろいだよ』ってバミューダパンツをエルちゃんが作ってくれたんで何時でも愛用してるんだが、一国の王女様がその姿で良いものかと考えてしまうな。


 秋の涼しい風が湖を渡って来るようになって、俺達の方も少しは準備が整ってきた。北の石塀は厚みを増したし、2重の空掘りと柵を作ったようだ。

 敵の突撃をどうにか防げそうだな。

 南の砦の兵力を削減して1中隊を北に差し向けた。サンドミナスとの国境付近は今でも魔物が徘徊してるそうだから、その魔物が俺達を守ってくれるだろう。

 残念ながらアルトスさんの部隊はそのままだ。どう考えても陽動がある筈だし、陽動の規模が大きければ再度王都決戦になりそうだからな。


 夕方近くになって、夕食用のレインボウを別荘の庭から釣っていた時だ。

 ミイネさんが来客を告げに来た。


 釣竿をミイネさんに渡して、エルちゃんと別荘の作戦指揮所に向かった。

 

 「お待たせしました」

 

 俺の言葉に振り返ったのはユングさん達3人だった。


 「よう。しばらくだな。……教導隊を1分隊率いてきた。約束通り、武器を供与するぞ。問題は数なんだが、どうにも間に合わん。バビロンが協力を申し出てくれたが、先はそんなに明るく無いな」

 

 俺が席に着く間を惜しんでユングさんが俺に話を始めた。


 「では、当初の予定を変更すると?」

 「そんな事は明人が許さないよ。あいつは言葉と行動が一致する珍しい男だ。ある意味堅物と思われがちだが、そうでもないんだよな」


 そう言って、思い出し笑いをしている。

 結構色々あったのかな?


 「問題は自動小銃だ。取り扱いを教えるのに苦労する。とても全軍に教える事は出来ないという結論が出た。それで、この2つを量産する」


 そう言って取り出したのは、ボルト式の小銃とウインチェスター?

 

 「そう、驚くな。ボルト式は5発弾装に入る。ウインチェスターは10発だ。この違いは、使う弾丸だ。ボルト式はロングカートリッジだから射程は500m以上ある。ウインチェスターの方は、拳銃弾だが45口径で射程は100m。これを量産する。今使っているものよりは遥かに次の弾を撃つ速度は上がるだろう」

 

 「問題は弾丸の供給体制ですね。それは大丈夫なんでしょうか?」

 「大丈夫だ。連合王国で供給できる。それと、榴弾砲と機関銃だがこちらは何とかなりそうだ。4種類の武器を供与してもレムルが取り扱いを教えられるとは思えんから1分隊を残しておきたいんだが……」

 

 「港近くの町ならば、かなりの余裕があります。それに、周辺の荒地は良い演習場として使えるでしょう。通信兵、アルトスさんを呼んでくれ!」

 

 直ぐに通信兵が作業を始める。

 しかし、これでは第二次世界大戦だな。航空機が無いのが残念だ。


 「その代わりと言ってはなんだが、飛行機を渡す。……もっとも、これはかなり先の話だ。俺達がイオンクラフトの簡易型を作れないかやってる最中だからな」

 「飛行機なんて、この世界では裏技に近いんじゃないですか?」


 「そうでもない。敵には飛行部隊がいるんだ。明人達も南の大陸を相手に防戦した時は、敵軍の飛行部隊に苦慮したと言っている」

 「でも、それなら科学が進んでいるんじゃないですか?」


 俺の言葉にユングさんは、苦笑いを浮かべた。そしてタバコの箱から1本取り出して火を点ける。

 

 「やつらには羽がある。あまり高く飛べないし長距離も無理だが、空からの爆裂球や魔法は脅威の一言だ。

 明人は飛立つ前の連中を倒したらしいが、俺達は直接撃ち合った」

 「となれば、やはり必要になりますね」


 そう言って、バッグからタバコを取り出す。

 相手が吸うとこっちも吸いたくなるな。


 「原理もそれを作る道具もあるんだが制御がな……。もうしばらく待ってくれ」

 「小銃は分りました。現状を遥かに超えてます。問題は供与いただく時期ですが」


 「とりあえず、ボルトアクションの小銃を500丁持ってきた。ウインチェスターも500、そして弾丸は1丁に120発を用意している。

 次の船便で更にボルト式2千丁、ウインチェスター1千丁が運び込まれる。弾丸はそれに合わせて持ってくるはずだ。もちろん予備の弾丸もな。機関銃と榴弾砲は2つずつ持ってきたから港に近い町で教えよう。

 機関銃は次の便に10丁、榴弾砲も10門が届く筈だ。最終的にはどちらも50になるよう運べると思う。

 もっとも、この島が敵の攻撃を受けるようなら更に追加する手筈だ。

 とりあえず、これだけあれば悪魔が来ても簡単に敗れることは無いだろう」


 「ありがとうございます。ここまでしていただけるとは思いませんでした」

 「何、頑張れよ。明人達は別の戦に忙しそうだ。俺達は準備だけで出動はしていないがな。この世界のことだ。この世界の住人が先ずは対応すべきことだと俺も思う。だが、こっちはお前がやってみろ」


 結構、明人さん達も苦労してるみたいだな。

 だけど、あれだけの軍勢を押し返せるのだろうか?

 それでも、未だに待機しているという事は、連合王国の兵士達が頑張っているんだろう。


 だが、それにしてもウインチェスターとは……。意外と、明人さん達の趣味が入っているんだろうな。


 「ここでも、教えて頂けますか?」

 「あぁ、良いぞ。だが、ここで使うなら小銃だけで良いだろう。レムルも少しは考えてた筈だ。先ずはそれを装備させて、順次入れ替えれば良い」


 知っていたか。まぁ、それでも良い。改良型バリスタは南に移動すればいいし、摘弾砲が200mも飛べば歩兵に装備させるのもおもしろそうだ。

 そうなると、砲兵隊と機関銃隊が新たに出来るのだが、接近されると自衛の武器が欲しくなるな。

 

 「厚かましいお願いですが、小型の武器を開発しているならば譲っていただきたいのですが」

 「本来ならば、レムルが持つようなリボルバーを作れれば良いのだが、明人が許可したものは45口径のシングルアクションのリボルバーだ。8インチだが、使ってみるか?」

 

 「お願いします。砲兵用に使えます」

 「ついでに、38口径も少し用意してやろう。お前の周りにいる娘達にちょうど良い」


 そんな話をしていると、アルトスさんが副官を連れてやってきた。

 ユングさん達に挨拶すると、テーブルに付いた。


 簡単に今までの話を伝えると、予想を超える武器を供与して貰える事を知って驚いている。

 早速副官に町にいる部隊に教えを請うべく、通信機に走らせていた。


 「だが、俺には1つ危惧があるのだ。新しい武器は機構が複雑だ。撃つ事は出来るだろうが、それを直すとなると問題だぞ」

 「何人か町に向かわせてくれ。修理の仕方を覚えることには俺も賛成だ。ある程度教える事は可能だろう。使う者全てが直し方まで知る必要はない」


 要するに修理部門を作るという事なんだろうな。兵站と一緒に考えれば良いのかもしれない。

 

 「俺にも1つ疑問があります。連合王国は西にあると言う2つの王国に、この事態を何故知らせないんですか?」

 「知らせたらしい。それも1度ではないと明人は言っていた。だが、疑念を持って聞けば怪しい話だな。相手にもしてくれなかったと言っていた。将来的には滅びることになるだろうな」


 未来ではなく、現状のみを考えてるってことなのか?

 悲惨な結末を迎えそうだな。

 だが、アルトさんは3個大隊を作るようなことを言っていたから、場合によっては救援を考えているのだろう。

 

 「もう1つ聞いて良いですか?」


 俺の言葉にユングさんが軽く頷いた。


 「ユングさん達は北米と南米で戦ったと聞きました。どうやって戦ったんですか?」

 「次元の歪2つを同時に破壊するために、俺がククルカンに向かって明人達はユグドラシルの近くに出向いた。

 その時、ククルカンの歪が悪魔達の都市にあることが分かったんだ。モスボール化された機甲師団を見つけ、それを使って奴等の都市を覆う障壁を破壊した。核爆弾でクレータが出来てる。後で中央アメリカ付近を調べてみれば直ぐに分るぞ」


 機甲師団を使ったのか。たぶんAI化された車両だったんだろうが、とんでもない戦をしたものだな。

 だが、そんな部隊で相手にしたのなら、こんな武器では歯が立たなくはないか?

 ちょっと心配になってきたな。

 

 「出来ればガソリンエンジンを作りたかったが、この世界の技術力ではな……。明人達は魔石を使って簡単なエンジンが出来るかを考えてるみたいだ。それがあれば榴弾砲の展開が楽になるんだけどな。連合王国ではガルパスで代用してるが、ここではどうするか、それはレムルが考えてみろ」

 「悪魔が直ぐ来る訳ではありませんから、その辺りは考えて見ます」

 

 俺の応えに満足したのか、ユングさんはフラウさんとラミィさんを立たせるとアルトスさん達に武器の使い方を教え始めた。

 概略を教えると、外で試射をするようだ。


 「さて、レムルには俺が教える。エルちゃんも見ておくんだぞ」


 そう言って、ウインチェスターの取り扱いをじっくりと教えてくれた。

 レバーアクションは果たして使いやすいのかどうかだが、本来であれば俺達が使う場面ならば相当な負け戦ってことになるな。

 たぶん、念の為にってことだろう。そんなだから、ボルトアクションの小銃は俺たちに暗に使うなと言っているのかもしれない。

 そして、最後にエルちゃんに小型のリボルバーの使い方を教えてくれた。


 「これがホルスターなんだ。これ位はこの国でも作れるんじゃないか。こっちがウインチェスター用の弾帯だ。30発分だから腰に巻けば良い筈だ」

 

 何か西部劇の登場人物になった気分だな。

 思い切ってそんなコスプレ衣装を作ってみようか。意外と似合うかも知れないぞ。


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