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おっさんと彼女と異世界チャリ  作者: モロコロス
おっさん、チャリをパクられる
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魔王に連れられ知らぬ街

 受付時間を一分でも過ぎちゃうと駄目ってシステムはよくあるが、学校とか役所とかお堅い所じゃなければ、ゴネれば何とかなる場合も多い。強圧的なゴネはいけない。あくまで、ルールは分かっているけれども、こちらにも仕方ない事情があり、なおかつ受け付けた方が相手の得になるように見える、ゴネでなければならない。新入社員の頃、先輩からそう教わったなあ。


 コンピュータで管理されてるからもう無理?いやいや、担当者本人にメールして、システムに紛れ込ませて貰うのさ、俺たちとの取引がこれで全てパアになるくらいなら、多少の調整はするだろう、そうやって笑った先輩の言う通りだった。俺はスマートなゴネはサラリーマンの必須スキルと学んだのである。


 というわけで、閂で固く閉ざされた街と森を隔てる門をどうゴネたら開けてもらえるのだろうか、サラリーマンのスキルは役に立つのだろうかってところなのだが、後ろから近づいてきた魔王様が残酷な真実を告げた。


「門の向こうにそもそも人が居なさそうなので、無理ですね」

「じゃあブチ開けるかあ」


 魔王様の状況判断に素早く反応した本上さん。うらあっと木の門を殴りやがった。


 どがんがらがらがしゃん。おっさんのネゴシエーションの話はたった今無駄になりました。分かっていた事だが、所詮人の猿知恵など神の力(ちーと)の前には無力である。


 とはいえ短絡的に過ぎないだろうか。そんな思いを抱きつつ、閂棒が折れて、扉として用を為さなくなった残骸が倒れていき、俺たちは質素な木の門の向こう側を見ることができた。


 門の向こうは開けていつつ森ほどの密度は無いがそれなりに緑にあふれた場所で、所々の木々や、ぐねぐねとうねりながら遠くに見える家らしきものに向かう土の道、などが見える。目の前に広がる空地は畑だろうか、まだ何も植えられていないようだ。もう少し暖かくなったらかな。


「今って季節は春?」

「異世界に季節ってあるの?」

「一応、春も間近というところです。それではこの先はお二方にお任せします」


 魔王様は少し足早に森の方に帰っていく。ついでに本上さんのチャリも引いてってくれた。そのチャリ隠されたら俺たち異世界に置き去りなんだけど仕方ない。


 俺たち二人が門を越えたあたりで、道の向こうから、三人程が駆け出して来るのが見えた。


 兜を被り槍らしき長い棒を持ち、胸と腹を隠すような皮っぽいのを纏い、ブーツみたいな靴を履いた、俺たちと同じくらいの背丈の男っぽいのが三人だ。彼らはそれなりに全力で走ってきており、明らかにこちらに気づいている様子である。


「そりゃ轟音が、森に続く扉から聞こえてきたらそうなるな」

「手間が省けたねえ」

「そういうことでいいんだろうか」


 明るくコメントする本上さんだけど何か違う気がする。それとも肝が座ってるって言うのだろうか。格好いいかもしれない。そう思ったら何も続けられなくなり、一分くらいでその三人の衛兵、もう衛兵でいいや恰好がそれっぽいし、が到着するまで二人で無言で待った。


 顔立ちはなんだろう、西洋人とか東洋人っていう分け方じゃないなあ。鼻と口が大きい、目は小さいし、目の間隔がどうも開きすぎている気がする。肌の色も青白色が薄くて眉毛の色は赤い。髪の毛は短く刈り込んでるらしく見えなかった。うーん、何人だって聞かれたら異世界人って言うしか無い面構え。


 いや目が二つ、鼻と口が一つとか、人間っぽいだけでもよかったかもしれない。耳だって普通に俺たちと同じ位置にあるし。呼ばれて飛び出た異世界でシリコン生命体とかに出会ってもどうしようもないからな。


「がっぎっぎぎ、ぎぎぎ、ぎぐ、ぎげごごごごごごが、ぐっぎぐごげがぐ」

「うが、うが、がっぎっぎぎ」


 そして、衛兵さん達だが、ガ行が中心の唸り声をあげている。


「異世界言語を地球の学問が解析できるかは謎だよね」

「そうだなあ、太陽二つある世界なら複数形だよなあ、あわねえな」

「言語の元になる世界の理が違うって大変だよね」

「異世界翻訳は貰ってないし。気付けよ邪神」


 当然異世界の言葉なんか知らない俺たちにはお手上げの状況だ。すると衛兵さんのうち喋ってなかった、少し小柄の男が他の衛兵二人を手で制した。そういうジェスチャーは共通か。


「ぐぎ?だま?ふれふれ?誰ですか?」

「あ、通じた!」

「西方共通語わかる。ゴブリン語、東方語、フレフレ語分からない、ですか」


 小柄な男が認識できる言葉を喋り出す。いや日本語じゃない変な言語なんだが、なぜか理解できるのだ。知らない間に睡眠学習でも受けてたような。十年勉強した英語ですらいまだに苦労してるのに。つうか言語チート呉れてたんだな魔王様。言えよ、と。


 コミュニケーションが成立したとみて、他の衛兵二人もガ行中心の言葉を切り替えて俺達がわかる言葉でしゃべってくれた。


「ごぶりん語判らない、不思議。二人、ごぶりん森、来た」

「顔立ち、おかしい。ごぶりん、変装」

「ごめんなさい、この二人あまり西方共通語、喋るないです」


 うごがご喋ってた二人の言葉は少し拙く、小柄な一人が謝ってくれた。いえいえ。無理して不得手な言葉を喋ってくれるだけでも大変ありがたいですよ。


 内容はともかく。

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