おっさんと魔王の新発明。
いや俺は愛の告白なんかしない。愛なんかないし、言われた相手、大量殺ドラゴン犯だし。などと結局頭から離れない魔王様の言葉。考えているうちにわけがわからなくなってくる。全然大人じゃねえなあ、俺。そんな朝食後の俺の前になぜかチャリを持った魔王が現れて、
「ということで出来ました異世界チャリ」
「マジでやめれ」
龍の一族に魔王の地位を奪われそうになり、世界を滅ぼすその力を使わずに龍を撃退できなさそうなので、仕方なしに適当に強い異世界人を召喚しようと異世界タクシーなるものを発明した恋愛脳な魔王は、タクシーが駄目ならチャリでいいじゃん、とまたわけの分からない方法で新たな発明をした、らしかった。
「いえ、元の世界に戻って頂いてから、こちらに戻る手段が必要かと思いまして」
「同じくタクシー呼べばいいんじゃないの?」
「お二方に来ていただけるなら、暫く異世界人の召喚はしなくて済むので、タクシーを流す必要は無いかなと。すると維持費やらコストを考えて、お二方にチャリを用意するのが一番経済的なのです」
「なんか、わかるけどなんだかなあ、て気分になるね」
本上さんが首を振る。俺も同じくだ。
「ていうか、俺らはこっちとあっちを往復する前提なんだ」
「まあ?ネットも無い、私しか居ない、魔王城しかない、右も左も魔王の言うことすら聞きゃあしないケダモノ揃い?の島に永住とは言いませんが」
「わかってんなら何か開発とか、人間世界とのワープゲートとか作ってよ」
「そうはいきません。私こと恋愛脳の魔王が人間の世界に足を踏み入れれば、二度と戻れぬ蟻地獄。人様の恋愛にかぶりつき、未来永劫この島に帰らずいや帰れず、あーだこーだする彼と彼女を見守ったりアドバイスしたりするに決まってます」
「恋愛脳、気に入ったんだ」
「こういう人が釣書き大量に持ってくるようになるんだよね」
こいつ魔王なのか本当に。俺と本上さんは首を傾げた。
「確かに世界の理の上で私は魔王なのですが、人間世界では、絶海の孤島に住まう愛の女神と呼ばれているのです」
「ガチ」
「本性見たら地獄の業火で焼かれるのに」
「本性はいいじゃないですか。まだそちらの世界の太平洋の海底に、私の神殿が残ってるくらいの実力なんて、人の愛の前にはゴミみたいなもんです」
「それ、とこしえに寝てる系?」
「やっぱり本上様はご存知で?」
言外にお前らの世界にも影響力あるぞ、と脅された俺たち二人。それ邪神系ですね確実に。
「一旦帰ると言うならお使いください。逃げられるとは思ってないでしょうし、永住も歓迎ですが流石に生活環境の整備もあるでしょうし、暫く往復できるお試し異世界生活って素敵じゃないですか?気になる人との共同生活とか、なんてどこかのテレビ番組みたいですね」
意外と俗世に詳しい、俺たちを逃すつもりは無い魔王様に逆らうわけにも行かず、異世界チャリを二台、俺と本上さん用に渡されたわけですが、明らかに駅前からパクってきたと思われるボロボロのママチャリを渡されてもねえ?
「ああ、防犯登録とか諸々はこちらで偽造もとい、手配しておきましたので」
しかもえらい親切。とこしえに寝てる系の邪神さんなのに。




