おっさんは風呂が好きだが理不尽は嫌い。
俺は風呂自体は好きだ。カラスの行水だって言われるけどね。
だから、城にお風呂とベッドを用意しています、と言われ、のこのこ魔王について魔王城を案内されてたりする。
そろそろお風呂に入って暖かい布団で眠りたいんだけどなあ、僕も帰ろう私も帰る、でんぐり返しでレッツゴーなど、本上さんと二人で歌いながら魔王と並んで歩く。二人の歌に不思議そうな顔をする魔王。おっさん以上じゃないとわからんよこの歌は。いや異世界だから誰も知らんか?つうか魔王ならわからない?
「それはともかく、まず私たちを呼んだのはあなたでいいの?」
本上さんの突然まっすぐ質問。ぱねえ。
「はい、異世界タクシーで」
「待て」
「はい」
慌てて話に割り込む。最初の単語から飛ばしていくスタイル?
「異世界タクシーて何?」
「異世界トラックっていうのがありますよね。あれ毎回跳ねる度に直したり洗ったり、こっち側で器を用意したり大変ですし、最近皆さん分かって来たのか避けたり、トラックの通らなさそうな小路を歩いたりするんですよ」
「まあねえ、トラックなのに深夜映画のサメみたいな扱いされてるわね最近」
「そこで、乗せた人を強制的に異世界に連れていくタクシーってのを設計実装しまして」
「ちょっと待て、そこが不条理な自覚はあるか魔王様?」
魔王は俺を見て、ちょっと悲しそうな顔をしてから、
「はい、運転手さんごと転移するとは気づかず、彼には悪いことをしました」
「正しいがちょっと違う」
「あのね魔王様、タクシー乗る人って大体急いでたり疲れてたりする人じゃない、そんな人いきなり異世界に連れ込んでどうしよっていうのよ」
「本上さんも惜しいなあ」
「なによ。実際それで転移させられたこっちは大迷惑じゃない」
「そうなんだけど。いやいや魔王様。異世界トラックって要するに、トラックに跳ねられて死んだ人があまりに可哀想だから、異世界に転移させたり転生したりする流れじゃない?」
「はい、それがいつからか自分の意志を持ち、夜な夜な街ゆく人を狙うように」
「だからサメ扱いすんなや。だからね、トラックはきっかけじゃん」
「そうですか?」
「街の流しのタクシー乗ったらいきなり理由もなく異世界転移とか、もう手段と目的テレコじゃん」
「業界用語ですか?」
「そこはおいといて。理不尽すぎじゃない?」
「ダメですか?」
「そもそも街中でタクシーに乗ったら突然異世界に、なんてストーリー受けると思う?」
「メタですか?」
「魔王様余裕あるね」
ふう、と俺はため息をついた。流しをとめたら異世界タクシーで転移とか、意味わからん。本当にさっさと風呂に入って寝たい。つうかもう怖くてタクシー乗れないじゃん。




