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ボケルト異世界狂想曲〜手違いで死んだ俺は生き返るためにツッコミを入れる〜  作者: 仮面大将G
第一楽章 オトボケ村のプレリュード

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第5話 オトボケ村へようこそ

「ようこそ救世主様、オトボケ村へ」


 ハラマキは笑顔で俺を見送り、また門を閉めて門番の仕事に戻った。ここオトボケ村って言うのか……。いかにもボケてきそうな名前だな。


 いやそれはいいんだけど、高橋がいないと俺何もできないぞ? この世界の通貨とかも持ってないし、宿にも泊まれない。言葉は何故か通じてるけど……。文字とか書けねえしな。どうしようか……。


『城金玄司よ、安心するが良い。履いているぞ』


「とにかく明るい神様!? お前ちょくちょく出て来るのはいいけどボケんなよ! ボケルト人じゃねえだろお前!」


『そなたの話す言葉……日本語と言ったか? それに合わせて、私の力で全てボケルト語を翻訳している。同時にボケルト人たちにも、そなたの話す言葉がボケルト語に聞こえるようにしてある。そなたとボケルト人たちの鼓膜を改造した形だ』


「鼓膜改造したの!? え、ボケルト語が日本語に聞こえるようにってことか!? で、ボケルト人たちには俺の話す言葉がボケルト語に聞こえると!?」


『その通りだ。同時に、そなたの書く文字もボケルト語に自動的に翻訳されるように、ボケルト人たちの目を改造してある』


「お前さ、別にいいんだけど、俺の脳とかちょっと弄ればそれで解決じゃなかった? 翻訳機能とか付けるなら脳に付けるのが早かったろ絶対」


『……。そ、そこはまああれだ、ご愛嬌というやつだ』


「ダメだやっぱこいつバカだ! 人の命紙飛行機にして遊んでる時点で期待してなかったけど、やっぱり根っからのバカだ!」


 まあなんでもいいや。とりあえずボケルト語は全部俺にとっては日本語に、日本語はボケルト人にとってはボケルト語に翻訳されるってことでいいんだもんな。

 とは言えだ。言葉がどうにかなるとしても、通貨を持っていないことには変わりがない。この村にしばらく滞在することになるんだろうから、宿ぐらいは確保しておきたいんだが……。


「玄司様、お待たせしました!」


 突然声をかけられて振り返ると、血まみれになった高橋が笑顔で立っていた。


「うわあああ! お前どうしたんだよ! 裏口から入ってくるって言ってたけど、まさかお前、人でも殺めて来たんじゃ……」


「まさか! 裏口で何度もすっ転んで、木の枝に引っかかり、石に突き刺さり、鳥の軍団に襲われた挙句集団で移動中の牛に轢かれただけですよ!」


「めちゃくちゃ酷い目に遭ってるじゃねえか! なんだそれよく無事だったなお前!」


「腹いせに最後尾にいた牛の尻に蹴りを入れたら、追い回されて何度も角でつつかれて死にかけましたね。まあそんなことはどうでもいいんです」


「よくねえだろ! ちょ、どっかで応急処置とか……」


「必要ありません。それよりお腹が空いたので牛肉でも食べに行きましょう」


「思い切り根に持ってんな!?」


 とりあえず合流できたなら良かった……のか? うんまあいいや。気にしないでおこう。高橋が歩く度に血が滴ってダイイングメッセージみたいになってるけど、もう気にしない。高橋はこういうもんだと思っておかないとな。


「玄司様、大変です! あそこを見てください!」


「どうした!?」


「おばちゃんたちが集まって何かを話しています! 恐らく玄司様の秘密を漏らしたスパイが混じっているはずです!」


「ただの井戸端会議じゃねえか! 仮に俺の秘密がどうのって喋ってるなら漏らしたのお前だよ!」


「早速話を聞きに行きましょう! 玄司様の大切な秘密が漏らされたら困ります!」


「ああちょっと待てよ! そもそも俺の秘密って何だよ!?」


「え? 合コンでカッコつけてぐいぐいテキーラを飲んでたら、盛大に吐いて昼に食べたクロコダイルが出てきたことですよね?」


「そんな黒歴史ねえわ! 合コンなんか行ったことねえし、昼飯にクロコダイルはもっとねえよ! 何俺ジャングルの民族か何か!?」


「ジャングルマンですね」


「はっきり言うなそんな名前! 怒られんぞお前!」


「とにかく行きましょう! あ、その前に牛肉だけ食べていいですか?」


「好きにしろようるせえな!」


 高橋があんまり騒ぐので、とりあえず近くにあった屋台で牛串を食べることになった。ていうかさっきスルーしてたけど、この世界にも普通に鳥とか牛とかいるんだな。動物は地球とほとんど変わらないってことでいいんだろうか。


 そんなことを考えている間に、高橋が牛串を2本買って嬉しそうに戻って来る。


「玄司様! 買って来ましたよ!」


「おう、ありがとな。……ん? 地震か? なんか地面が揺れてるような……」


「気のせいじゃないですか? 玄司様が常々サンバのリズムで踊ってるからそう感じるだけです」


「俺そこまで陽気じゃねえよ! ブラジル出身じゃねえから!」


「リオ・デ・ジャネイロに叔父さんがいるって神から聞いてますけど」


「あの神なら言いそうだけど! もし言ったとしたら適当に喋んなよ神この野郎!」


 アホな言い合いをしている間にも、地響きはどんどん大きくなってくる。うん? なんか高橋の後ろの方から土煙が上がってるような……。


 土煙は段々と俺たちの方に近づいて来て、その形が見えてくる。あ、これ逃げた方がいいやつだ。俺は高橋を置いてそっと道の端に捌けた。


「あれ、玄司様? なんでそんなに端っこに?」


「まあ気にすんな。とりあえず牛串放り投げた方がいいぞ」


「何言ってるんですか玄司様! 今しがた買ってきたばかりの牛串を手放すわkぎゃあああああ!!」


 最後まで言い終わること無く、猛烈な勢いで走って来た牛の群れに吹き飛ばされる高橋。

 牛のケツ蹴った上に牛串なんか食ってるから怒り買ったんだろ。まあ高橋が戻って来るまでゆっくり牛串食っとくか。


 思いの外しっかりジューシーな牛串を齧りながら、ボロボロの高橋が戻って来るのを待つことにした。


 そんな俺をじろじろと見ているおばちゃんたち。何なんだあいつら一体……。

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