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ボケルト異世界狂想曲〜手違いで死んだ俺は生き返るためにツッコミを入れる〜  作者: 仮面大将G
第二楽章 コボケ町のリタルダンド

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第46話 追跡

「高橋、追うぞ!」


「待ってください、今オンラインでソリティアしてるんです」


「後でやれそんなもん! なんでお前今ソリティアなんかやってんの!?」


「ずっとやってるとお小遣い稼ぎになるんです」


「知らねえけど今やめろバカ! ナゾカケがいたんだよ! 行くぞ!」


「待ってください、あとオンラインカジノもやらないと」


「それは後でもやめとけ!? 行くぞバカ!」


 高橋を引っ張って赤いジャケットの後を追う。ナゾカケと思われる人物は、何故か斜めに進んでは方向転換し、また斜めに進むという謎の動きを見せている。

 なんか今までのボケルト人でもかなりクセ強そうなやつだな。俺がツッコミを入れて捌いてやるか。


「玄司様、少しスピードを緩めませんか? このままだとスピード違反で捕まってしまいます」


「捕まらねえだろ徒歩なんだから! そんなやつ見たことある!?」


「週に1、2回しか無いですね」


「そんな頻度であんの!? じゃあこの国の道路交通法がおかしいだろ!」


「元道路標識としてもそこは同意ですね」


「元道路標識の意見聞けることないから貴重だな! バカ今そんなことどうでもいいんだよ! 追いつかねえと!」


 なんであいつあんな変な歩き方なのにそこそこ早いんだ……。なかなか追いつけないな。動きが読めないのもありそうだ。どっちに行こうとしてるのかが分からないから、先回りしておくこともできない。なかなか厄介だぞ。


「玄司様、大変です!」


「なんだ! どうした高橋!」


「たった今新しいお小遣い稼ぎゲームアプリがリリースされました! インストールしていいですか?」


「後でやれそんなもん! あとなんでお前普通にスマホ持ってんの!? 俺ですら今持ってないのに!」


「え、スマホなんて現代日本に必須アイテムじゃないですか」


「ここ日本じゃねえよ! なんでボケルト王国にそんなもんがあるんだよ!」


「それは私の先祖が三重から持ち込んだからだと言われていますね」


「またお前の先祖かよ! ていうかお前の先祖スマホ世代なの!? まあまあ最近の先祖じゃねえ!?」


 高橋の新情報に驚いていると、ナゾカケの姿がまた遠くなる。こいつまた余計な話しやがって! 追いつけなくなるじゃねえか!

 くっそ、神が体力を生前の俺と同じにしてるから、普通に息が切れるな……。このままじゃナゾカケを見失うぞ。


「玄司様、大丈夫ですか? あそこの給水所で水をもらいましょう。私も喉が乾きました」


「マラソンか! 給水所とかあんの!?」


「ありますよ。あそこに多目的の給水所が」


「それトイレじゃねえの!? お前トイレのこと給水所って呼ぶなよ!」


「でも玄司様、あそこで水を飲まないと水分補給がマヨネーズになりますよ? いいんですか?」


「なんでお前の中でマヨネーズは飲みものなの!? いやトイレの水かマヨネーズかなら何も飲まないのを選ぶわ!」


「ワガママですね玄司様。私はちゃんとマヨネーズで水分補給しますからね」


「なあほんとに水分補給かそれ!? 油分の方が多くねえか!?」


「マヨネーズには水分も含まれますよ。原材料にお酢が使われているので」


「そんな回りくどい水分補給しねえで最初から水持ってたら良かったんじゃねえの!?」


「乳酸菌飲料なら持ってますよ」


「じゃあとりあえずそれ飲めよめんどくせえな!」


 高橋が乳酸菌飲料を飲み始め、走るスピードが落ちる。前を行く赤いジャケットがどんどん遠ざかっていくのを見て、俺はのんびりしている高橋を小突いた。


「おいこら高橋、早く飲めよ! ナゾカケが遠くに行っちゃうだろ!」


「大丈夫ですよ。私のスピードなら追いつけます」


「じゃあ早く本気出してもらえる!? 何のんびりしてんのお前!?」


「まあまあ、見ててください。私の本気のマヨネーズ走法をご覧に入れましょう」


「マヨネーズ走法ってなんだよ!? お前そんな冗談はいいから早く……」


 俺が言い終わる前に、高橋は両手にマヨネーズを持って後ろ向きに構えた。そのままマヨネーズを噴射し、高橋はどんどん加速していく。


「ええ……? マヨネーズをジェット噴射みたいに使ってんのかあれ?」


「さあ、玄司様も早く!」


「嫌だわ! お前道見てみろよ! マヨネーズだらけじゃねえか!」


「それは後で私が舐め取ります! 気にせず!」


「気にするわバカ! まず道にマヨネーズ撒き散らすなよ!」


 言い合っている間にも、高橋はどんどんナゾカケらしき人物に近づいていく。方法はあれだけど、まあ速いのはいいな。さっさと追いついてナゾカケを捕まえてもらわないと。


 高橋はそのままナゾカケらしき人物の背中を捉え、一気に追い抜かして何故か用意してあったゴールテープを切った。


「やりましたー! やりましたよ玄司様! 私が1着です!」


「バカかお前は! 抜かしてどうすんだよ! 捕まえろよ!」


「最初は負けるかと思ったんですけど、ここで限界を超えるしかないと思ってギアを上げたら勝てましたね」


「インタビューしてねえから! お前バカナゾカケが逃げていくだろ!」


「勝利の秘訣ですか? 毎日マヨネーズを摂取することですね」


「早く捕まえろよ!」


 誰もいない空間に向かってインタビューに答え続ける高橋に呆れていると、俺の目の前に赤いジャケットがぬっと現れた。

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― 新着の感想 ―
ナゾカケーー!!!!止まってて!!!! マヨネーズまみれになっちゃうwww いつかでいいので、高橋の異名や詳しい情報をまとめてほしいです。巻物に書き写しておきたくて……! 元道路交通標識って情報まで…
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