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ボケルト異世界狂想曲〜手違いで死んだ俺は生き返るためにツッコミを入れる〜  作者: 仮面大将G
第一楽章 オトボケ村のプレリュード

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第10話 休息

 ウメボシはボケルトラクダを撫でながら話を続ける。


「村長はこの村の長ですからのう、それ故に村長と呼ばれておりますのう」


「そりゃそうだろ! 村長って言葉の意味を説明してどうすんだよ!」


「玄司様、村長という言葉にはひき肉に調味料や香辛料を食わて練り合わせ、腸などの袋に詰めて加熱または乾燥させた食肉加工品という意味もありますよ」


「ねえよ! それソーセージの定義だろ!」


「玄司様はソーセージとウインナーの違いを知っていますか?」


「知らねえしどうでもいいだろ今! 話進まないからさっさと言えよ!」


「いや、私も知りませんよ」


「じゃあ言うなよめんどくせえなお前! ソーセージの話は置いとけ!」


「じゃあ双生児の話を」


「しなくていいわ! なんで今双子の話しなきゃいけねえんだよ!」


 自由すぎる高橋に話を遮られたが、村長のところにこのラクダを連れて行くのはどうかというのがウメボシの提案だ。

 村長のところに連れて行ったら何か変わるのか? むしろ怖がられそうな気もするが。


「村長は言い伝えを酷く恐れておってのう、救世主様が『災厄は勘違いだった。カレーの付け合せは福神漬けに限る』と伝えてくだされば、安心すると思うがのう」


「それ後半要る!? 付け合せなんか人それぞれでいいだろ!」


「玄司様、私はカレーには鈴カステラ派です」


「お前は黙って福神漬け食ってろ!」


 でも村長はそんなに言い伝えを恐れてるのか。なら確かに、救世主って言われてる俺が行って、こいつはただのマヨラーラクダだって伝えれば、それで済む話なのかもな。村に対して発信力もあるだろうし、イドバタたちの回した噂も落ち着くかもしれない。


「よし高橋、とりあえず村長のとこに行こう。案内してもらえるか?」


「もちろんですよ玄司様。でも一旦くつろいでからにしませんか?」


「しねえよ! 何呑気してんだお前は!」


「ですが玄司様、異世界からこのボケルト王国にやって来て、私の洞窟から村まで歩き、その間ずっとツッコミを入れられていたのでお疲れではないですか?」


「ああ確かに疲れてはいるけど……。いやでも早くそのラクダ連れて行かないと」


「玄司様。今すぐラクダを連れて行ったところで、村に回った噂が消えるまでの時間はそう変わりません。それにもう日が沈みます。お休みになられてはいかがですか? 敬具」


「なんで最後手紙みたいになってんだよ! 口頭で敬具って言うやつ初めて見たわ!」


 でも確かに、1日歩きっぱなしツッコミっぱなしでものすごく疲れてはいる。せっかくウメボシのところにしばらく居候させてもらえるんだし、しっかり休んでから明日にでも村長のところに行く方がいいのかもな。


「分かったよ高橋。とりあえずここで休ませてもらおう」


「分かっていただけて嬉しいです。では春になったら起こしてください」


「冬眠すんな! のんびりしすぎだろ!」


 高橋と一緒にウメボシの家に上がり、スリッパを履いて中を案内してもらう。しかし広い家だな。流石タワマンだわ。こんなとこに本当に住めたらいいのになあ。まずは生き返って日本に戻らないといけないけど。


「救世主様と高橋の部屋はこちらですのう」


 そう言ってウメボシがドアを開け、何も無い広めの部屋に入れられた。空き部屋にしても広いな。10畳ぐらいあるんじゃないか?


「お布団を持ってきますでのう、少しだけこの脚立に座ってくつろいでもらえますかのう」


「なんで脚立だけあるんだよ! そんなもんに座ってくつろげねえわ!」


「玄司様、私は人をダメにするソファに座りたいです」


「贅沢が過ぎるわ! そんないいもん置いてるわけねえだろ!」


「それもありますでのう、持ってきますかのう」


「なんであるんだよ! ていうかそういうソファこの世界にも普通にあるんだな!?」


「そりゃありますよ。座ると周りの人にイラつき出すソファです」


「そういう意味でダメにすんのかよ! ちゃんと呪いの装備だった!」


 ウメボシが布団を取りに部屋から出て行き、ようやく俺たちは座って落ち着いた。


「ふう……。なんかテンションで乗り切って来たけど、いざ落ち着くとめっちゃ疲れてるな」


「それはそうでしょうね。全く、異世界に来たての玄司様を疲れさせるなんて、ボケルトの民はダメダメですね」


「疲れてる原因主にお前だけどな!?」


 自覚の無い高橋に呆れつつ、ここまでの道のりを振り返る。神に手違いで命を奪われて、高橋に出会い、オトボケ村に来て救世主扱いされ、ウメボシの家に居候させてもらえることになり、災厄の問題を解決することになった。

 うん、なんか想像してたよりも複雑なことになってるな。俺はただツッコミを何回か入れたら生き返れるもんだと思ってたけど、どうやらそういうわけには行かなさそうだ。


 ゲージを確認すると、5パーセントまで回復している。これでまだ5パーセントか……。なかなか長い道のりになりそうだぞ。


「玄司様、どうなさったんです? まだソーセージとウインナーの違いについてお考えで?」


「そんなわけねえだろ! 忘れてたわその問題提起! めちゃくちゃどうでもいいな!」


「明日は村長のところに行くんですから、ウメボシが布団を持って来たらすぐ休みましょう。夢枕に立ってあげますから」


「余計なことすんなよ怖えな! お前夢に出て来たらリアルにちびるわ!」


「救世主様、高橋、お布団を持ってきましたがのう、お休みになられますかのう」


「ずっと気になってたけどみんな高橋は呼び捨てなのな!?」


 こうして俺たちはとりあえず布団に入り、目を閉じた。明日は村長のところに行かなきゃいけないからな。しっかり回復しよう。


 しかし村長か……。ハラマキにパチンコ台を押し付けられたこと以外情報が無いけど、どんな人なんだろうな。

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― 新着の感想 ―
ちょっとこっちも笑いすぎて腹筋割れそうなんですけど敬具。 夢枕にまで立たれたらほんと疲れ取れないわいっ!!
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