表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
連載開始 1巻4/10発売!【完結】魔王様、溺愛しすぎです!  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく
66章 ドラゴンの逆鱗

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

908/1398

904. 母による愛娘の恋人調査

 いきなり牢屋だったら、異世界あるあるだと思う。ぼんやりと部屋の中で庭を眺めた。魔王城に保護された時もそうだが、魔族の方が人族より扱いがいいのは何故だろう。人ってどこまでも利己的で残虐になれる生き物らしい。


 日本にいた時は「悪魔」や「魔物」は悪いイメージがあったが、実際に異世界に来ると魔王や魔族の人は理知的だった。人族は人の話を聞かずにあれこれ強要したり、魔族に対して酷いことばかりだ。もう人族は魔族の支配下の方が幸せなんじゃないだろうか。


 アベルの前に広がるのは、赤い花々が揺れる庭だった。なぜか赤い花ばかり植わっている。これはこれで綺麗だが……吸血鬼の城って考えると怖い。ぶるりと身を震わせて振り返った室内は、客間のようだった。全体に濃色なので、黒い印象が強い。ただ重厚感があり、高級そうな感じがした。


 豪華なベッドの上で寝転がり、ごろごろと時間を潰す。アスタロトに影の中に攫われてから、アベルはずっとこの部屋にいた。ルーサルカも一緒に引き込まれてしまったが、別の部屋にいるんだろう。声も聞こえない状況だが、彼が娘に危害を加えると思えないので心配はない。


 食事も風呂、清潔な服に快適な寝具……ダメな引きこもりを作る環境だった。


「うーん、こんな平和でいいんだろうか」


 視察は続いてるのだろう。護衛が減ってしまったし、直前もドラゴンに襲われた。また襲われたら、あの少女達がケガしたりしないか? 男は女を守るもの、祖母にそう教わったアベルは、彼女達の方が強いとしても守る対象として認識していた。


 こんこん、ノックの音に慌てて跳ね起きる。どうぞと入室を促す声は緊張に掠れた。開いた扉の向こうにいたのは、予想外の人だ。


「ごめんなさいね、ルカじゃなくて」


 茶化した言い方をしながら、魔王妃専属の侍女長アデーレが入ってくる。いつもの侍女服ではなく、ワインレッドのドレスだった。豪華さはないのに質がいい生地を使った服は、豊満な彼女の魅力を引き立てる。魅力的な奥様だった。


 普段は後ろで纏める髪を左側に流して軽く留める。その髪留めは、婚約時代にアスタロトが買い与えた物だった。様々な髪飾りを持っていても、久しぶりに会う夫の前ではいつも同じ髪飾りを選ぶ。彼はそのことに気づいていないようだけれど。普段は敏いのに、肝心なところは鈍い――男はみんな同じだわ。


「あの人はちゃんと説得したから、もう少ししたら帰れるわ」


 まず安心できる材料を提示する。頷いたアベルを観察しながら、アデーレは次の情報を小出しにした。気になっている疑問を先に確認したい。


「ルカをどう思ってらっしゃるの?」


 ルーサルカはアベルを気にしていた。一気に婚約まで行かなくとも、ひとまず恋人にはなれそうだ。問題はアベルの側の気持ちだった。初心な愛娘を傷つけるなら、アスタロトが出向くまでもなくアデーレが排除する。娘に恨まれようと、アベルを二度と会わせないことも考えた。


「可愛いと思います。いつも一生懸命で、努力出来るところも尊敬してます。ただ……」


 アデーレは食い入るように見つめながら、言い淀んだアベルの続きを待った。


「頑張りすぎてて辛くないのかな? と思います」


 ルーサルカの親相手にこんな話をしていいのか迷うが、心配してるのも事実だ。張り詰めた糸みたいにピンと緊張していて、何かのはずみで切れてしまったら。彼女は危うい気がして、もっと肩の力を抜いたらいいとアドバイスしたこともあった。ルーサルカは笑って流してしまったけど。


 ぼそぼそと紡がれた言葉に、アデーレは笑顔を浮かべた。淡い口紅に彩られた唇が「合格ね」と呟く。強い部分や両親の地位に惑わされず、娘の本質を見抜いてくれた。ひとまず預けてみてもいいんじゃないかしら? ねえ、あなた。


 足元の影に隠れて様子を窺う夫に、つま先でこつんと合図を送る。アスタロトからの返答はなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ