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【完結】魔王様、溺愛しすぎです!  作者: 綾雅(りょうが)今年は7冊!
3章 リリス嬢、保育園でお友達作り

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48. 羨ましくないけど、尊敬しますよ

 夜中に『大公全員集合』の騒動は噂となって城下町に届く。


「なんでもリリス嬢に言い寄った奴がいて、陛下が出撃を指示したらしい」


「戦争か?」


「大公閣下達が何とかしてくれるだろう」


「にしても……「「「迷惑だよな、その言い寄った奴」」」」


 締めくくった言葉を溜め息混じりに吐き出しながらも、魔王領の住民の顔に悲壮感はなかった。この国で戦争が起きても、戦うのは貴族階級以上と決まっている。圧倒的な魔力量を誇る魔王ルシファーが降臨すれば、戦場は一方的な虐殺と変わらなかった。


 そのため自分達が戦場に行く必要がない民は、無責任に戦争を賭けの対象として楽しむ。胴元バアルがこの噂を利用しないはずがなかった。


「さあ賭けた! 戦争がある、ない。どっちだ!」


「俺はお小遣いすべて戦争ありに賭ける」


「なしに銀貨5枚!」


「じゃあ、私はありに金貨1枚ね」


 艶かしい声で参加を告げるフード姿の女性が金貨を差し出す。6本の腕を持つ助手は、慣れた様子で手帳に書き込んだ。ベルゼビュート金貨1枚……と。






「民の間で戦争の噂が広まっています」


 明日は人族の砦を襲うという夜、リリスにプリンを食べさせながらルシファーが首をかしげた。


「何が問題だ?」


「戦争ではなく、報復ですよ。誤解は早めに訂正した方がよいでしょう」


「そうだな、その辺は任せる。リリス、食べ物で遊んじゃいけません」


 プリンを半分ほど食べたところで、お腹いっぱいになったのか。リリスは手でプリンを潰している。握った時の感触が楽しいようだ。すでにプリンは液体状になっていた。


「めっ?」


「そう、ダメ」


「ルー、あーぁ」


 口をあけろと握ったプリンを差し出すリリス。さすがにないと思ったアスタロトだが、ルシファーは気にした様子なくリリスの指から崩れたプリンを食べる。


「次に潰したら、もうプリンを上げないぞ」


 言い聞かせながら、残ったプリンをリリスの手から食べていく魔王。真っ白な髪にプリン塗れの手が絡みついても、くすくす笑いながら許していた。


「……羨ましくありませんが、尊敬はします」


 アスタロトが今まで押し付けられて育てたのは、基本的に自分のことを自分で出来る者ばかりだった。卵の頃は手がかかったが孵れば手がかからなかった神龍(シェンロン)や、食事や散歩だけで済んだ灰色魔狼(フェンリル)を思い出す。妖精族(ハイエルフ)の子も自分で食事や着替えができた。


 ここまで幼い子供の世話はしたことがない。ましてや人族はもっとも手がかかる種族で、成長が遅いくせに非力すぎて脆く壊しそうだった。


「ん? 尊敬?」


 不思議そうなルシファーの口元は、プリンを擦り付けるリリスのせいでべたべただ。同様に彼女もプリンで黒髪が頬に張り付いていた。


「リリス、こっち向いてごらん」


 さっき侍女が風呂に入れたばかりでは……そんなことを考えながら見ていたアスタロトの前で、ルシファーはリリスの頬についたプリンの欠片をぺろりと舐め取った。擽ったいリリスが、きゃっきゃと声を上げて笑う。


「これでよし。もう一回パパとお風呂しようか」


「あ、ぃ!」


 保育園で同年代の子供と遊び、普段からルシファーが話しかける。リリスの言葉に対する理解力は高かった。先日はドラゴンが使う言語をまぜて話していたくらいだ。多種族が通う保育園であるため、飛び交う数種類の言語をつまみ食いのように拾って覚えるらしい。


「リリスは賢いな」


 親バカここに極まれり。失礼なことを考えながら、アスタロトはタオルや着替えを用意して後を追った。

いつもお読みいただき、ありがとうございます(o´-ω-)o)ペコッ

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☆・゜:*(人´ω`*)。。☆

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